後半のMCで、SNSでツアーグッズを発表した際、そこに載っているラバーバンドの価格が間違っていることを指摘されて訂正したことを話していたmajiko。しかし、集まったファンは大概この件を知っているようであったことが、いかにもSNS時代のアーティストとファンとのコミュニケーションといった感じでほっこりしてしまった。そこから《ちょっと待って 笑っちゃうよパラノイア 今だけはしばし 思い出さないでいて》で始まる「パラノイア」へつなげる辺り、この娘、エンターテイナーとしての才能も十二分だ。
オルタナ系、ノイズ系のギターロックに始まって、ループミュージック風の4つ打ちダンスチューンを披露したと思えば、ジャジーなナンバーやカントリー調のサウンドを聴かせたり、ハードロック、R&B、ファンク、ソウル、さらにはラテンの要素も取り入れたりと、最初から最後までありとあらゆるジャンルを縦横無尽かつ奔放に着こなした印象のライヴであった。言うまでもないことかもしれないが、こうして多ジャンルかつノンジャンルな楽曲で攻めることができるのは、彼女のセンスもさることながら、その歌唱力によるところが大きい。生のステージではそれを駄目押しされたような感じだ。彼女の声質は良い意味で癖がないので、どんな楽曲とも相性が良いし、声量があるから派手なサウンドにも引けを取らない。この日のライヴを観て、メロディーへの言葉の乗り方がいいことに加えて、滑舌がいい部分もシンガーソングライターとして最大のアドバンテージではないかと思った。歌詞がよく聴き取れるのである。
この日は何曲かでステージ後ろのスクリーンにアニメーションとともに歌詞が映されていたのだけれども、その演出はそんなmajikoの言葉の伝播力といったものを後押ししているかのようだった。
アンコールでmajiko本人の口から、8月からギターとピアノによるアコースティックセットでのツアーを行なうことが発表された。この日も観せてくれたヴォイスパフォーマンスは、ネイキッドなサウンドでさらに本領発揮となる予感がする。
撮影:Viola Kam (V'z Twinkle)/取材:帆苅智之
majiko
マジコ:母親がヴォーカリスト/ヴォーカルトレーナーということもあり、幼少の頃からロック、ソウル、ジャズ、時には民俗音楽も流れる音楽の絶えない環境で育つ。2010年6月、"まじ娘"名義で動画共有サイトに自身の歌を初投稿。15年発売の1st アルバム『Contrast』を皮切りに、シングル「mirror」、2ndアルバム『Magic』をリリースし、16年には渋谷 WWW にてワンマンライヴを開催。17年2月にアーティスト名を "majiko"へと変更し、ミニアルバム『CLOUD 7』でメジャーデビューを果たした。19年6月19日にはレーベル移籍後初のアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』を発表。