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LIVE REPORT

エレファントカシマシ ライヴレポート

【エレファントカシマシ ライヴレポート】 『新春ライブ 2019』 2019年1月16日 at 日本武道館

2019年01月16日
@日本武道館

定刻18時半にスパッと始まったエレファントカシマシの『新春ライブ 2019』東京編初日。デビュー30周年のアニバーサリーを終えての年明け日本武道館ワンマン、どんなステージを観せてくれるのかとわくわくする中、「脱コミュニケーション」の第一声で早くもやられてしまう。予想もしない1曲目を、宮本浩次(Vo&Gu)の咆哮を、ファンの多くが立ち尽くし受け止める。そして、歓喜のどよめきを引き連れたまま「Wake Up」へ。宮本、石森敏行(Gu)、高緑成治(Ba)、冨永義之(Dr)、サポートにヒラマミキオ(Gu)、村山☆潤(Key)を加えた布陣による地鳴りのようなイントロのビート。それに合わせて照明が鮮やかに輝き出すと、客席のボルテージもグングン上がり、宮本は“エビバデ! ここからもう一度スタートだ。行くぜー!”と満員の日本武道館へ呼びかけた。

「新しい季節へキミと」はストリングス隊も加わり、曲によって総勢10人の編成で見せていく。清々しい演奏に乗せてさわやかな青い光が辺りをやさしく包んでいたかと思えば、初期のロックチューン「星の砂」のブレイク部分ではお尻を突き出して“ブーッ!”とおどける宮本。日本武道館の西へ東へ動き回りながら、観客に感謝も忘れない。いつもの“ワン、ツー、スリー、フォー”からどっしり聴かせた「悲しみの果て」、宮本がアコギを奏でて流浪の空気を漂わせた「ワインディングロード」。序盤にして、この新春公演へ向けて仕上げてきたことが存分に伝わる。

金原千恵子(Violin)と笠原あやの(Cello)を迎え、時にしっとりと、時に狂おしく響かせた「リッスントゥザミュージック」も素晴らしかった。さらに「昔の侍」へと続き、中盤は伸びや深みを増す宮本の歌声に感じ入るばかり。冨永のマーチっぽいドラムも冴える壮麗なミディアムナンバー「大地のシンフォニー」など、このあたりの名曲だっていつか『NHK紅白歌合戦』で歌われてほしい。ここまで健全に、丹念に、しかも定期的に、日本武道館というステージで歌を届けられるロックバンドは、いったい今の日本にどのくらいいるのだろう。

エレカシには別れや旅立ちを歌った楽曲がそもそも多いけれど、この日は特に希望と不安が入り混じるようなトーンを飾らずに放っていた気がする。そこはかとない哀愁を感じさせたり、聴き手に過去の記憶を思い出させたり、その中でメンバー4人の信頼関係もうかがえたり。宮本がタンバリンを振って始まった「too fine life」では、石森のストロークに一段と熱が入る。石森にもたれかかって引き摺り回すなど、宮本も興奮を隠しきれない様子で《この先何がおこるやら 悪いようにはならないさ》と歌う。

宮本が“男椅子”に腰掛けて「珍奇男」になると、場内からひと際大きい歓声が沸く。危ういオーラがムンムンなのに洗練されているような、陽気でいて不気味なような、この説明し難い魅惑の怪曲を、エレカシファンは待ち望んでやまない。ぶち上がったロックンロール熱のまま、「今をかきならせ」も高らかに続けられた。まだ見ぬ何かを追い求める不屈の精神を持って。そのエネルギーは31年目のバンドとは思えないほどに瑞々しい。

石森、高緑、冨永が一旦ステージから降り、キーボードを基調としたバージョンで届けた「風に吹かれて」。よりシンプルなアレンジの中、ハンドマイクでの宮本の歌唱はやはり特別な余韻を残し、オーディエンスの心をジワっと揺さ振ってくる。一方でメンバーが戻ってきて「桜の花、舞い上がる道を」が轟けば、《明日輝くために》《信じて転がるエブリデイ》といった歌に演奏に、いつものように奮い立たされる自分に気付く。天井の日の丸が燦々と輝いている。「笑顔の未来へ」「ズレてる方がいい」とヒートアップしていき、「俺たちの明日」では宮本と客席のみならず、ストリングス隊までが拳を突き上げた。

まさかの「マボロシ」を柔らかに奏で出すなど、超レア曲も多かったこの日。極め付きは鳥のさえずりがけたたましい「朝」~不協和音とともに降臨する「悪魔メフィスト」。鬼気迫る形相でリズムをめちゃくちゃに崩しながら叫ぶ宮本、禍々しさ満点の暴れ狂うバンドサウンド、降り注ぐフラッシュにもうヒリヒリしてしまって、いろいろと感情が追い付かない。ひっくり返るようなエレカシらしい落差を見せ付け、第一部が終了した。

第二部は去年のテレビ演奏で各局をざわつかせた「Easy Go」で幕開け。激烈ファストチューンでの宮本の生き様を感じる絶唱、バンドの猪突猛進ぶり、いつ聴いても胸が熱くなって仕方ない。同曲においても、彼らは《俺は何度でも立ち上がるぜ》と新しい始まりを歌っている。デビュー曲「デーデ」にごくナチュラルにつなげられる凄み、光の柱が舞い降りた「かけだす男」(この日は照明演出が抜群でした!)で際立つならず者の孤高さ、随所で大切に歌われてきた最新アルバム『Wake Up』からの「旅立ちの朝」。エレファントカシマシをたっぷり表現してみせたところで、宮本が自慢のメンバーをさらりと紹介した。

“みんなありがとう。すごく盛り上がって、熱い新春ライヴになりました。武道館サンキュー!”。3時間弱ほぼ歌いっぱなしで、MCはそれくらい。このあとも自分を超えようとする「風」、クライマックスに相応しい手拍子が沸き起こった「so many people」、お馴染みの大ジャンプで骨太にかました「ファイティングマン」。アンコールは代表曲「今宵の月のように」、さらにメンバーがその場でコソッと話し合って急遽追加された驚きの「ゴクロウサン」と、最後までどうにもこうにも楽しい、30曲超えの圧倒的なパフォーマンスだった。2019年もドーンといけそうです!

宮本のソロプロジェクトを経て、ますますパワーアップしたエレカシが観られることを楽しみに待ちたい。

取材:田山雄士