8月にリリースしたニューシングル「Magical Feelin'」を引っ提げ、10月から12月にかけて自身最長規模の全国24カ所で開催した、夜の本気ダンスの『マジカル頭脳ツアー!!』。その東京公演がマイナビBLITZ赤坂で行なわれた。
オープニングからアップチューン「Crazy Dancer」を投下する夜ダンの4人。ツアーを回った成果なのか、そのパフォーマンスたるや堂々としたもので、浮き足立たずに適度な余裕を持ってオーディエンスをじわじわ盛り上げていく。オーディエンス側も「Crazy Dancer」のAメロにしてリアクションが揃っていたりと一体感がすごい。西田一紀(Gu)のギターソロでさらに熱を帯び、続く「Show down」もやっぱり音源リリース時とは雲泥の差。「for young」では米田貴紀(Vo&Gu)が“調子はどうですか、みなさん! そうそう、その感じで上に飛べる?”とスマートにエスコート。鈴鹿秋斗(Dr&Cho)もマイケル(Ba&Cho)も以前よりしなやかな演奏になった。分かりやすいところで言えば、「fuckin' so tired」「Dance in the rain」など多くの曲で、マイケルがピックではなく指弾きに変えたこと。2ndフルアルバム『INTELLIGENCE』を経て、この『マジカル頭脳ツアー!!』が新たな幕開けになっていきそうなワクワクがある。
とはいえ、鈴鹿の力入りまくりのハリキリドタバタMCは従来通りで、良い感じで場を和ませる。“東京のみんな、ただいまーー!! 俺ら地元は京都やけど、言ってみたかったー!”“今日はもうね、しこたま夜の本気ダンスだけの曲をやりに来ましたよ! ワンマンやから、そらそうやなぁ!?”といった具合に。都道府県の数を48個だと勘違いしていた鈴鹿に対し、“47個やけどな。他にどれ含んでんねん!”とマイケルの厳しいツッコミも飛ぶ。一方で“僕、D(ディー)のことをデーって言うんですね”とか“白髪を無断で抜いてくる人、あれはちょっとどないかなと思ってて。白髪のおじいさんに憧れてるので、できれば早く蓄えておきたいんですよ”とか、どこか噺家っぽく話す西田のマイペースなしゃべりも面白い。
鈴鹿が“HONKI DANCE TIME!”と叫んで口火を切った「Japanese Style」~「BIAS」のノンストップメドレー4曲を怒涛の如く駆け抜け、その後はほろ甘いムードのミッドナンバー「You & I」、よりアダルトさが深まった「Dance in the rain」と多彩に聴かせる中、マイナビBLITZ赤坂がすっかり似合うバンドになったことを実感させてくれる夜ダン。良い流れで「Music For Life」に入ると、鈴鹿のタム回しをはじめとする独特のテンポが新鮮で、楽曲の持つ悩ましい味わいも絶妙に染み出ていた。まるでツアーファイナルみたいな熱狂ぶりに、メンバーは思わず笑みをこぼす。
満を持しての「Magical Feelin'」は音源よりもライヴのほうが断然映えるのが分かった。イントロから加速し、ポップで軽やかなヴォーカルと力強いビートをもってサビに向けて盛り上がれば、歌詞の通り《駆け出したい》気分になっている。「Fun Fun Fun」の前には演奏に弾みを付けるコール&レスポンスもさりげなくあったり、終始無理にピークを作りにいかないライヴ運びが印象的。中でも「Feel so good」「WHERE?」では、バンドの地力をまざまざと思い知らされた。
アンコールはダーティーに爆音が轟く「KIKI」、カオティックに踊れる「TAKE MY HAND」を畳みかけた彼ら。これで終演と思いきや、最後に意外な展開が! ステージ前方へ出てきた鈴鹿が“1年の感謝を込めて一本締めしよう!”と観客に呼び掛けた矢先、米田が戻ってきてそれを遮るように“もう1曲だけやっていいですか?”とまさかの延長希望。本当に予定外だったらしく、驚きの大歓声で場内が沸き上がるも、鈴鹿はしばし呆然と立ち尽くしていた。急遽の「戦争」で過熱し、新旧楽曲を織り交ぜた東京公演は大団円。“次の音源、めちゃめちゃ楽しみにしといて!”と鈴鹿がファンを喜ばせ、今度こそ一本締めで幕を閉じた。さて、このあとどんな新曲が届くのか。ドキドキして待ちたい。
撮影:石崎祥子/取材:田山雄士
夜の本気ダンス
ヨルノホンキダンス:2008年に結成された、京都出身の4人組ダンスロックバンド。踊れて泣ける100パーセントのダンスロックとライヴパフォーマンスを武器に着実に支持を獲得し、全国のイベントやフェスに出演を果たす。満を持して、16年3月9日にアルバム『DANCEABLE』でGetting Better Recordsよりメジャーデビュー。同年9月をもってギターの町田建人が脱退し、10月に西田一紀が加入。