ヒステリックパニックが11月28日、恵比寿LIQUIDROOMにて『どくどくツアー』の東京公演を開催した。Tack朗(Gu)のギターが下ろし立てのおニューだったり、やっち(Dr)のドラムが初めてフルセットになっていたりと、とも(Vo)がMCで“いつもの5倍くらい気合い入ってます!”と笑わせていたが、それは嘘、偽りのないところだったのだろう。何でも音響スタッフ、照明スタッフも、彼らを熟知している人たちを総動員したそうで、確かに出音も良ければ、ライティングもバシッと決まっていたように思う。
“スマホのスピーカーでは満足できなくて、体調を損なうような爆音を浴びに来ている人たち”。ともがこの日集まった観客たちをそう呼びながら、彼ら彼女らに向かって“ライブハウスに来ない奴は、この楽しみを知らないわけじゃん?”と言っていたのがとても印象的だった。その通りだと思う。スマホより遥か以前から、音楽は必ずしも生で観聴きする必要がなくなっているのかもしれない。しかし、生のステージを観る価値、ライヴで聴く意味というのは間違いなく存在する。ド頭の「絶対×絶命」から重低音が全身にビリビリとくる。音は空気を震わす波であることが物理的に感じられ、その音波が鼓膜のみならず、皮膚までも震わすことが実感できる。これぞライヴハウスの醍醐味だ。
また、途中3拍子にリズムが変わる「Venom Shock」など、緩急でダイナムズムを生み出すミクスチャーならではのサウンドも、聴くというよりも浴びるといった表現のほうがぴったりくる。これもまた小さなデバイスでは絶対に味わえるものではない。ラップ、デス声、ハイトーンと、ヒスパニにしかあり得ない多彩なヴォイスパフォーマンスは、なおさらのことである。そして、何よりも大事なことは、そうしたバンドが送り出す“念”や“想”をフロアーに集まった全員で瞬時に共有できることであろう。ヘドバン、モッシュ、ダイブ、サークルはライヴハウスならではの交歓。そして、「ガチ恋ダークネス」での両手でハートを作るポーズを全員でやれるのはワンマンライヴであればこそだ。オープニングSEに合わせて全員で“遊ぼーぜ!”と叫び、そこに出現させたものはユートピアだったのだ。
撮影:タマイシンゴ/取材:帆苅智之
ヒステリックパニック
ヒステリックパニック:超絶ハイトーンのTack朗×凶悪スクリームのとも×極上コーラスの$EIGOのトリプルヴォーカルが織りなす唯一無二のハーモニーは中毒性抜群。ラウド、エモ、ハードコア、メタル、J-POPと、ジャンルの垣根を気軽に飛び超えながら音を紡ぐ、通称“ヒスパニ”が新たに生み出す、これが最新式のエクストリームなJ-POP。2015年4月にシングル「うそつき。」でメジャーデビューを果たした。