ステージの全体を覆っている大きな紗幕に“THANK YOU BLUE”という文字が浮かび上がり、「GRY」からライヴはスタート。いくつものモニター画面、歌詞の言葉が映し出される向こう側で身体を優雅に揺らしながら歌うDAOKOの姿を観ていると、不思議な異世界にでも迷い込んだ気がしてくる...。その後も紗幕越しのパフォーマンスが繰り広げられ、楽曲と映像が絶妙にリンクした世界が広がり続けるさまを、フロアーを埋め尽くした観客たちが固唾を呑んで噛み締めていた。
ついに紗幕が切って落とされ、露わになったステージから最初に届けられた「水星」。ふたりの女性ダンサーとともに踊りながら歌ったこの曲を皮切りに、DAOKOの魅力が一層多彩に開花していった。たくさんのレーザービームが飛び交うサイバーな空間の中でエネルギッシュに踊りながら披露された「ダイスキ with TeddyLoid」、熱いビートと繰り返される印象的なメロディーに誘われて、観客も身体を揺らしながら耳を傾けていた「ShibuyaK」など、ライヴで聴くと一際気持ち良い曲を連発。そして、「ステップアップLOVE」のイントロが流れ、スペシャルゲストの岡村靖幸が登場すると大きな歓声が上がった。抱き合った後にDAOKOが岡村を突き飛ばすという、この曲のMVを再現するかのような場面も飛び出し、ものすごい盛り上がりとなった。
本編は「打上花火」で締め括られ、激しい手拍子に応えて行なわれたアンコール。ステージに再登場したDAOKOは、“来てくれてありがとうございます。私はMCが得意ではないので手紙を書いてきました”と言い、気持ちを綴った手紙を取り出して読み上げた。“美しいと思うもの、自分の感性を信じることは、みなさんを信じることなんだと分かりました”という言葉が、観客の心を動かしているのを感じた。
4月10日に恵比寿LIQUIDROOMで初の自主企画イベント『チャームポイント』を開催することを発表したあと、“いいと思うものを手繰り寄せて、オリジナルになっていく年にしたいと思います。ひとりだと弱くて絶望したりもするけど、こうしてみんなに会えて、心から感動してます。生きてて良かった。ここにいるひとりひとりのおかげです。こんな私ですが、これからもよろしくお願いします”というメッセージを観客に送り、「ワンルーム・シーサイド・ステップ」と「拝啓グッバイさようなら」を披露して迎えた終演。“また会える時まで! バイバイ!”と言い、ステージから去ったDAOKOを大きな拍手が見送った。昨年は彼女にとって大躍進の日々となったが、彼女の表現衝動はますます高まっている気配だ。2018年も素晴らしい活躍を見せてくれるだろう。
撮影:Ryuichi Taniura/取材:田中 大
DAOKO
ダヲコ:1997年生まれ、東京都出身。ラップシンガー。15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、12 年に1stアルバム『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』を発売。17年4月より公開されたTVアニメ『神撃のバハムートVIRGIN SOUL』のエンディングテーマを担当し、8月公開の映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌「打上花火」では 米津玄師が作詞・作曲・プロデュース、さらに10月発売の4thシングル「ステップアップLOVE」は作曲・編曲・プロデュースを岡村靖幸が手掛けるなど注目を集めた。そして、12月には待望のフルアルバム『THANK YOU BLUE』をリリースした。