バンド形式としては1年振りとなるワンマンとなったこの日。青いライトが差すステージに登場し、「wonderland」を歌い出すうらら(Vo)の左手は、高く突き上げられている。その表情は本当に楽しそうで、嬉しそうだ。“今、みんなに聴いてもらいたいんだ”という想いであふれている表情と歌声はフロアーの温度を上げる。その横で会場全体を見渡す上口浩平(Gu)は唇をギュッと結びながら、頭を上下に振り、静かにテンションマックスの様子。
「Boys & Girls」では大合唱が起こり、序盤から全員が“この日を待っていた”という空気で包まれている。うららは一気に上がった場内のテンションを感じたのか“落ち着いていきましょう”と言いつつ、“みなさんを観ていると自分を抑えるのが大変です!”と嬉しそうに話し、次々とアルバム『Clear』から楽曲を披露。芯がありながらも、やさしい歌声を決して邪魔することなく、でも激しくギターを歪ませる上口も曲が進むごとに身体の動きが大きくなる。ドラマチックな演奏を聴かせ、うららに今の心境を訊かれると、MCでは“今の気持ちは言葉にするよりも、これから曲で表現したい”と宣言。その後、たまにたどたどしくなるMCに対し、鋭利かつ遠慮のないツッコミを入れるうららのコンビも健在だ。楽曲とふたりのキャラのギャップもまたSalleyの魅力なのだろう。
終盤には「冬が来る」「赤い靴」と、彼らを代表する名曲が連続で投下される。圧倒的な楽曲の良さが目立つこれらの曲を“聴かせる”だけでなく、しっかりとライヴの盛り上げるキー曲として作用させるようになったのも、彼らがライヴを大切にし、さまざまなアーティストと対バンすることで刺激を受け、成長した結果だろう。努力と向上心は必ず結果を生む。
作り込まれた音源や心に染み入る歌声から、音源至上主義のアーティストのイメージを持たれがちなSalleyだが、彼らのライヴに行くといつも思うことがある。それはSalleyは間違いなく、ライヴでその本質を開花させているということ。良質な音楽を本人たちが楽しみ、フロアーを煽り、ひとつになる。そして、一瞬にしてホームのような温かい雰囲気で全員を包み込むのだ。しかし、ただみんなで一緒に歌い、楽しく時間を過ごす温かい空間だけでなく、力強く、時に曲の圧倒的な世界観でもって聴き手を突き放す時も存在する。でも、だからこそ、まだ聴いていたい、この空間にいたいと思うのだ。
ライヴの最後にうららは“もっと、もっとライヴをしていきたいと思っています!”と声高に宣言していた。きっとこれからはさらに彼らのライヴが各地で楽しめるはずだ。そのふたりの輝く姿を、ぜひ体感してもらいたい。
撮影:當摩果奈絵/取材:吉田可奈
Salley
サリー:2012年に結成。キュートで奔放なキャラクターが魅力のヴォーカルうららと、抜群の楽曲センスを持つ上口浩平からなるポップスユニット。13年5月にシングル「赤い靴」でデビュー。14年4月に1stアルバム『フューシャ』、15年7月には2ndアルバム『エメラルド』をリリース。ラジオ日本のレギュラー番組『Salley’s Studio.』が好評放送中!