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LIVE REPORT

9mm Parabellum Bullet

【9mm Parabellum Bullet】『9mm Parabellum Bullet “TOUR OF BABEL”』2017年6月11日 at 神奈川県民ホール 大ホール

2017年06月11日
@神奈川県民ホール 大ホール

『BABEL』というアルバムの本当のすごさを感じた! そんなふうに胸を打たれた観客が、この日はほとんどだったのではないか。長年の9mmファンこそ素直に込み上げてしまうような、ツアー初日にして素晴らしいステージとなった。

滝 善充(Gu/左腕の不調でライヴは休養中)がイメージしたダークで幻想的な世界観をベースに、菅原卓郎(Vo&Gu)が自身の抱える感情を織り交ぜ、中村和彦(Ba)とかみじょうちひろ(Dr)を含むメンバー全員でバンドに訪れた逆境を跳ね返してできた『BABEL』。この9mm最高傑作はライヴで体感して初めて完成するのだと、本編の途中で気が付いた。

「I.C.R.A」の《愛し合え》、「Story of Glory」の《おれたちは今夜無敵なんだ》が爆音で押し寄せる。受け取ったオーディエンスが高らかに拳を突き上げて歓喜する。例えばそんな交歓を目にするうち、あまりの生々しい迫力ゆえ、ファンタジーよりもリアリティーが勝ってくるのだった。「ガラスの街のアリス」で浮かび上がる脆い社会にしても、現実と重ねられるどころか、現実をそのまま映しているように聴こえる。もちろん、原発のことを歌った「眠り姫」もまた然り。

バンドのドキュメントとして観ても圧倒的で、その生き様が胸に迫るばかり。菅原、中村、かみじょうが舞台前方に並び、サポートギタリストを務めるHEREの武田将幸とfolcaの為川裕也が後方に立つ布陣で、見事に『BABEL』を、9mm Parabellum Bulletを体現してみせた。弾丸の如きスピードチューン「火の鳥」などは特に、文字通り何回でも生まれ変わる不死鳥の姿そのものと言える、音塊が誇りを伴って訴えかけてくるような、命を燃やし尽くすような演奏だったと思う。彼ら結成の地、横浜で味わえたというのも感慨深い。

“アルバム自体作れんのかっていう状況でも、『BABEL』のような完成度の高い作品ができて、すごく誇りに思ってます。みんなのおかげで俺たちはバンドを続けられました。本当にありがとうございます! みんなもそれぞれ立ち向かわなきゃいけないことがあるだろうけど、そんな時に力を与えてくれるアルバムになったらいいなと思ってます”――菅原は雄弁にそう語る。

また、“ありがとう横浜! 俺もすげえ楽しいです。いきなり俺もって言ったのは、みんなの顔が楽しそうに見えたからですけど(笑)”と、ファンとの信頼関係を実感させるシーンも。客席からも喜びの声は途切れない。ここに集まった人たちは全員、9mm Parabellum Bulletが、彼らの楽曲が大好きでたまらないのだ。温かみにあふれる場内。ロックバンドっていいなと、シンプルに思える瞬間がたくさんあった。

『BABEL』の真価を示しつつ、最後まで硬軟自在のパフォーマンスを展開した9mm。不撓不屈の精神、結束、感謝など、今の彼らを支えるものがクリアーに見えるライヴだった。『TOUR OF BABEL』はきっと、9mmが9mmでいるために大切なツアーになる。

撮影:橋本 塁(SOUND SHOOTER)、西槇太一/取材:田山雄士

9mm Parabellum Bullet

キューミリ パラベラム バレット:2004年3月横浜にて結成。 2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースし、07年にDebut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。09年9月9日に初の日本武道館公演を開催し、結成10周年を迎えた14年には日本武道館2Days公演を成功させた。パンク・メタル・エモ・ハードコア・J-POPなどあらゆるジャンルを飲み込んだ独特な音楽性とライヴパフォーマンスで日本ロックシーンの支持を得る。

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