2年振りのアルバム『マリアンヌの革命』で、そのサイケデリアもニューウェイヴ・テイストもアップデートしたキノコホテル。ツアーセミファイナルのキネマ倶楽部はまるで彼女たちのためにあるように思えるほど架空のキャバレー、もしくは見世物小屋として最高のマリアージュだ。マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)のアンコールを含む3度のお召し替え、このハコならではのポーチからの登場、レッドカーテンの妖しさ、ゴージャスな照明などを全てがキノコホテルの世界観を演出。しかも、演奏そのものもシンプルでタイト。特にイザベル=ケメ鴨川(電気ギター)のフィードバックノイズやファズが、それこそストゥージズ顔負けのパンクのオリジンを醸し出すプレイは、巧拙を超えたすごみすら漂わせていた。
GSやガレージロックもいいが、序盤早々に深遠な女の狂気と気怠さを余すことなく伝えた新曲「遠雷」では、マリアンヌのパフォーマー、そして作家としての奥行きも実感。もちろん、電気オルガンに跨りエロティックに煽り、鍵盤の上に20センチのピンヒールで仁王立ちする逸脱気味のパフォーマンスも彼女の美学だと分かっていても、生で体験するとかなりハードコア。時折見せる素の側面がお茶目だったり、ジュリエッタ霧島(電気ベース)がタフな演奏とは裏腹に話すと超・お嬢さんキャラだったりするギャップも楽しい。
一見、アナクロでコスプレチックに思えるキノコホテルだが、軸にあるのは曲の良さやプレイセンス。それらを渾身の力で出し切った4人は美しかった。