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LIVE REPORT

Plastic Tree

『Plastic Tree 秋ツアー2016 「Black Silent/White Noise」』

2016年10月10日
@東京国際フォーラムホールA

ニューシングル「サイレントノイズ」を引っ提げ、全国7カ所で行われた秋ツアーのファイナル。照明や映像を効果的に使ったステージングには兼ねてより定評のあるPlastic Treeだが、この日のライヴはこれまでで最大にその実力が発揮されたクオリティーの高いものとなった。会場が大きくなればそれに比例して、ライティングが作り出す空間のスケールはより大きなものとなるが、オーディエンスはその圧倒的な世界に包括されている存在。もはや観客は、目の前のステージを観ている“鑑賞者”という立ち位置ではなく、光と音が織りなすPlastic Treeの世界を全身で体験している、ある意味トリップの真っ只中。昔からよく“映画は総合芸術である”と言われるが、Plastic Treeのライヴも然り。音と言葉、そして光があり、形があり、動きがある。さらにライヴならではのエネルギーや瞬発力が加わり、唯一無二な世界観が生み出される。以前インタビューで“音だけ届けるなら配信でいい”と、CDのアートワークにこだわる理由を語った彼らだが、その美意識が細部まで張り巡らされ、あらゆるエレメントでそれが表現された空間と時間、それが今のPlastic Treeのライヴである。

特に、この日のライヴはそんな構築美が素晴らしく、例えば「メルト」ではゴス/スチームパンクな風景を展開し、「ピアノブラック」ではめまいを覚えるほど刺激的なサウンドスケープで異世界へといざなう。中盤では「時間坂」「サナトリウム」など叙情的でノスタルジックなミディアムや、「シンクロ」「メランコリック」などロックバンドらしいカタルシスのある激しい楽曲もはさみ、ラストは「静かの海」。プラネタリウムを彷彿させるぼんやり光る街並みの映像と、会場全体をたゆたう緑色のレーザー光線の波。緩やかな一体感に包まれながらライヴ本編は幕を閉じた。

アンコールは本編から一転して、リラックスムード。ゆるいトークあり、缶ビールを開ける音にリバーブをかける一発芸ありと、メンバーたちもとても楽しそう。鳴り止まない拍手に応え、予定外の「Ghost」を急きょ演奏するサプライズにはオーディエンスも大喜びだった。MCで“これからもちゃんと枯れない木でいます”とバンド名にからめた決意表明もあり、来年のメジャーデビュー20周年に向けて、ますます期待が高まった。