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LIVE REPORT

Brian the Sun

『Brian the Sun TOUR 2016 "HEROES"』

2016年06月18日
@渋谷CLUB QUATTRO

6月1日にリリースしたメジャーデビューシングル「HEROES」を引っ提げ、北は札幌から南は鹿児島まで、全国18カ所を回るツアー。ちょうどその折り返しとなる東京公演が、メジャーデビューを発表した3月の新代田FEVER公演の時と印象が違っていたのは、この6月にメジャーデビューしたことも関係あるのかもしれない。いわゆる歌モノのギターロックバンドではあるが、そのシーンの特徴のひとつであるナイーブさとは一線を画する骨っぽさが、大阪の4人組、Brian the Sunの魅力であることが改めて分かる熱演だった。

1曲目の「同じ夢」からいきなり白山治輝(Ba)のストラップが切れるというハプニングが起こったものの、そこは結成から9年のキャリアを持つバンド。一度始めた演奏はそう簡単には止まらない、と言わんばかりにメンバーは顔色ひとつ変えずに演奏を続けていった。ワンマンだから時間はたっぷりある。それにもかかわらず、時折MCを挟む以外はほとんど曲間を空けず、たたみかけるように全22曲(アンコール含)を2時間にわたって披露。随所で聴かせるフュージョンっぽいフレーズが印象的な小川真司のギターをはじめ、グルービーなフレーズを奏でる白山のベース、フィルを多めに入れながら的確なプレイで演奏を支える田中駿汰のドラム、ビターな味わいもある森 良太(Vo&Gu)の歌を際立たせながら、それぞれに個性を主張するダイナミックなアンサンブルは、やはりライヴで見てこそ。

中盤「はちみつ」と「Laika and Hz and contrast,」の2曲で森がピアノを弾きながらしっとりと歌い上げたあと、コール&レスポンスで、それまでバンドの熱演に歓声や拍手で応えていたファンとの一体感を一層高めると、バンドは再び演奏のテンポを上げる。終盤、「早鐘」から「Sister」に間髪入れずにつなげる時、森はそれまでギターについていたカポを外して投げ捨てたが、普通ならカポを外すために曲間を空けるはず。あえてそうしなかったところに、この日のライヴに込めたメンバーたちの思いを読み取ってみたい。

“メジャーデビューってどういうことかよく分かってなかったけど、メジャーデビューして良かったです”と、思っていることをストレートに語っているだけにもかかわらず、どこか斜に構えているようになってしまうところもこのバンドの(と言うか、森の)魅力だ。メジャーデビューの喜びを美辞麗句など並べず、むしろそっけない言葉で語ったところに真実味が感じられる。

“いい曲をいっぱい書ける環境をもらってるから、いい曲をいっぱい書いていきたい。うそをつかずにやっていきたい”と語った森は、“この間、「HEROES」を歌いながら、何かに噛みつきたくてしかたなかった頃の感覚を思い出した”と言った。

その言葉を、筆者はインディーズ時代よりも多くのリスナーに向かいながら、森が言う”いい曲を作りつづける”という闘志にあふれた新たな声明と受け止めた。そして、アンコールではファンのリクエストに応えた「藍色に。」と、即興で決めた2曲を演奏してダメ押しで盛り上げると、バンドの地力を見せつけたのだった。