いつも凝った演出でオーディエンスを楽しませてくれる、やなぎなぎ。彼女は昨年から“色”をテーマにしたコンセプチュアルなライヴ『color palette』を始めている。今年のカラーは“Silver”と“Gold”。やなぎにとって今回が初の2デイズとなり、1日目は“Silver”、2日目の1回目(追加公演)は“Silver+Gold”、2回目ファイナルは“Gold”と名付けられていた。
場所は円形劇場として重厚な雰囲気の漂う東京グローブ座。深紅の幕とシャンデリア、ステージ中央にはソファが置かれている。1曲目は気持ちを高揚させる最新シングル「春擬き」で元気に始まるが、 ライヴ冒頭のMCで、やなぎは会場と色のイメージに合わせて、“ちょっと大人っぽいライヴを目指してやっていこうと思います”と告げる。その言葉を裏付けるように、バックはバイオリン、ビオラ、チェロのカルテットに、ピアノ、パーカッションという編成。そのため、いつもと違ったアレンジで楽曲を表現していく。特に3曲目に演奏された「インテンション・プロペラント」の変化には驚いた。原曲はやなぎ自身がインタビューで“結構ノイズが混じった音源を多く使っている楽曲で、バチバチッて音が入っていたり”と語っていたように、機械的で硬質な音のイメージが強い曲だ。しかし、今回は自由に宙を駆け回るようなバイオリンの音が曲を引っ張り、エモーショナルなピアノも加わって、やなぎのヴォーカルはさらにパワフルに響いてきた。
ライヴ中盤は最新アルバム『ポリオミノ』に収録されている幻想的な「Esse」や、絵本のナレーションのような「unjour」など静かに聴き入る楽曲がたっぷり用意。やなぎなぎの曲が持つ繊細さをじっくり堪能することができた。そして、内面にぐっと迫る「鱗翅目標本」では、神谷洵平のパーカッションが奏でるさまざまな音色が、切ないやなぎの歌を彩る。
いつも以上にしっとりした楽曲がセットリストに組まれていたが、ラストスパートはもちろん「星々の渡り鳥」などアップテンポなナンバーで盛り上げる。軽快な「link」では《電源が落ちても つながっている》という詞を《ライヴが終わってしまっても つながっている》と変えて、オーディエンスとの絆を確かめ合った。
やなぎなぎのアーティストとしての魅力を、通常の ライヴと違った切り口で見せてくれるコンセプチュアル ライヴ『color palette』。次はどんな色で染め上げていくか、これからの展開にも期待が高まった。