伝えたいことがあるならはっきりと言葉にして伝えなきゃいけないという、当たり前なんだけど忘れがちと言うか、ついつい逃げ腰になりがちなことを、「変わらない空」を作りながら今一度噛みしめたせいなのか、伝えたいという彼らの想いは、ますます強いものになってきたようだ。
3rdシングル「変わらない空」のリリースツアーとして、ラックライフが東名阪で行ったワンマンツアー。その初日となる東京公演を観ながら、まず感じたのはそれだった。この日、彼らは2時間にわたって、歌を唄うことを止めた昔の仲間に捧げた新曲「メイシ」を含む新旧の全18曲を披露した。ダンサブルなサビのリズムが手拍子を誘った1曲目の「君のこと」から間髪入れずにロックンロールの「フールズ」になだれこみ、“お待たせしました。よろしくな!”とPON(Vo& Gu)が満員の客席に声をかけ、「シネマ」「sing man」と曲をガンガンとたたみかけていった序盤からバンドはがむしゃらな演奏で飛ばしていった。
結局、その勢いはトーンダウンすることなく、アンコールまで続いていったのだが、ラックライフのライヴではいつものこと...では済ますことができない気迫みたいなものを、この日感じたのは筆者だけだろうか? いや、それまで手拍子に加え、掲げた手を前後に振ったり、コール&レスポンスに応えたりしていた観客が終盤の「アイトユウ」「変わらない空」の2曲では、手を振ることも声を上げることも忘れ、じっくりと聴き入っていたんだから、この日は誰もががむしゃらな勢いに圧倒されていたにち違いない。
9カ月前に同じ会場で見たワンマンライヴはそのがむしゃらさが楽しかった。今回は、そのがむしゃらさに胸を打たれた。隣で観ていた女の子は「アイトユウ」で泣き出していたけれど、ギターをジャーン、ジャーンと鳴らしながらPONの歌だけで始まった「変わらない空」の、CDのバージョンよりもさらにエモーショナルな歌を聴いたら僕もやばかった。
ひょっとしたら、がむしゃらなだけではなく、しっとりとした曲は、よりしっとりと演奏したほうが、ラックライフが持っているポップな魅力や洗練は、ライヴでももっと伝わるのかもしれない。しかし、そういうある意味、器用なバンドだったら僕は彼らのことをこんなに好きになっていただろうか? 確かに、がむしゃらになりすぎるきらいはあるし、お世辞にもおしゃれとは言えないかもしれないけれど、人間臭くていいじゃないか。それに歌の魅力を活かしながら、メンバー――イコマ(Gu)、たく(Ba)、LOVE 大石(Dr)それぞれに個性を主張する演奏とともにCDとはまた違う魅力を楽しめるんだから、ラックライフのライヴに足を運ぶ意味は大いにある。
ファンに勇気を与える存在になりたいと思っている自分がそのファンから勇気にもらっていることに感謝したアンコールの「ハルカヒカリ」では、“力を貸してください”というPONの呼びかけに観客が拳を掲げた。そして“ライヴハウスはつながる場所”と言った後、最後を締め括った「その手とこの手」を聴きながら、誰もが掲げたその手がメンバーとつながったことを実感していたにちがいない。
伝えることにこれだけ真摯に、これだけがむしゃらになれるラックライフの想いはもっともっと多くの人に伝わっていいと思うし、伝わらなきゃおかしいだろう。