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LIVE REPORT

星野 源

『星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート/弾き語りDay」』『星野 源 横浜アリーナ2Days「ツービート/バンドDay」』

2014年12月16日
@横浜アリーナ

復活を告げた2014年2月の武道館公演から10カ月。ツアーを経て初の横浜アリーナ...しかも2デイズに渡って、2014年の最後に弾き語りという自身の“原点”と、バンドによって磨き上げられた“現在”をひとまとめに見せ付けた。

“弾き語りDay”と掲げられた初日、ステージの赤いカーテンやシャンデリアが落ち着いた大人の雰囲気を漂わせていた。そこにミニスカサンタふたりにアテンドされて星野源が登場。広いステージにひとりで立ち、ギターを爪弾き始めると、ひとりひとりに語りかけるように歌い始める。すると、“このまま(みんなが)座ってると、横浜アリーナっぽくないので”と観客を立たせ、“アリーナー!!”と叫び、会場から沸いた歓声に“満足!”と再び着席させる。そして、手拍子の練習をさせたかと思えば“次の曲はそういう曲じゃない”と言ったり、そのお茶目でコミカル、そしてマイペースさに自然と惹き込まれていく。

“ちょっと寂しくなってきたので、友達を呼んでいいですか?”とペトロールズの長岡亮介をステージに呼び込み、ふたりでアコギを陽気に弾ませた「穴を掘る」で手拍子を煽った星野。ご機嫌なセッションに、星野の歌声と長岡のコーラスもよく響き渡る。そして、「地獄でなぜ悪い」では“イントロをふたりで表現しています!”と必死にアコギを掻き鳴らす。ゆるりとした空気感まで息がぴったりなふたりに思わず口元が緩んでしまった。

その後、客席の真ん中に設置されたステージを見て“そっちに行くから”と言ってステージを後にすると、“一流ミュージシャンからのメッセージ”という映像が! レイザーラモンRG扮する佐野元春、清水ミチコが桃井かおり、森山良子、井上陽水などに扮して「くせのうた」を歌い、会場を笑いに包み込む。そして、再び登場した星野がセグウェイを華麗に乗りこなしてセンターステージまで移動する姿はとてもシュールで笑いが起きる。そんなセンターステージでは観客を目の前に「スカート」で口笛を響かせたり、細野晴臣の「冬越え」やナンバーガールの「透明少女」のカバーを披露したのだった。

メインステージに戻ると、星野は頭にタオルを巻いた作務衣姿で登場。奥田民生の真似をしながら「さすらい」を歌い始めると怒号が響き、なんと本物の奥田民夫が登場! ふたりで再び「さすらい」、続いて「MOTHER」という夢の共演を果たしたのだった。それだけではない。このコラボのために星野が書き下ろした「愛のせい」というこの日ならではの豪華すぎるセッションも披露。奥田が去った後、“スペシャルだったね”と高校時代は奥田の楽曲に救われた思い出があると感慨深く語った星野が印象深い。

そして、長岡とふたりで「桜の森」をセッションした後は、“休みたいと思った時に頭に流れてくる曲”と「ワークソング」をこの日集まった観客に捧げた。この日の感謝を述べて本編最後の「ばらばら」が穏やかな雰囲気で始まったかと思いきや、間違えてやり直し。そんなトラブルでも朗らかな空気を作り上げてしまうところも彼らしく、弾き語りの哀愁もありながら終始会場を笑顔で包み込んでいた。

アンコールではステージを覆っていたカーテンが開き、目が眩むような照明に包まれて白いスーツでハンドマイクを持った星野とバンドセットが現れる。先ほどまで度々出演していた長岡に加え、この曲のためだけに小林 創(Piano)、ピエール中野(Dr)、ハマ・オカモト(Ba)というスペシャルバンドと、鮮やかなステージを魅せる。曲間では“踊れ~!”と叫び、会場をこの日一番の驚きと歓喜の渦に巻き込んだ。“弾き語りライヴというのは嘘でした!”“本当だけど”と会場を見渡して無邪気な笑顔を見せる星野。サプライズ尽くしのライヴで、“あ~、幸せですね”と言葉を漏らすと、ひとりになったステージで再びアコギを担ぎ、この日最後の「Stranger」を歌い上げる。本公演には“歌を歌い始めた頃と今をつなげる”という裏テーマがあったという。弾き語りということで素朴な歌詞だけではなく、ギターの弦が軋む音、息継ぎから、彼の体温さえも伝わってきたディープな時間だった。

“バンドDay”となる2日目は黒のスーツでキメて、本日もミニスカサンタと登場。そして、バンドセットを主軸にストリングスやホーンなども聴かせる。前日より華やかで奥行きのある情景の広がりに一気にヒートアップした観客は手を振り上げ、手拍子を響かせた。“俺の身体的サプライズがあって”と挨拶もそこそこに、7曲目の「Night Troop」まで披露すると、“(ステージに)出てきた瞬間にめっちゃうんこしたくなって...”と先ほどの“身体的サプライズ”を発表(笑)。会場はどよめきながらも星野を見送り、残されたバンドメンバーが必死にMCと即興のセッションでつなげる。そんな中、星野がソロソロと戻ってくると、“オニのように出た!”と会場に報告し、“本来の俺!”と気合いを入れると、観客の笑い声、予想外のトラブルを振り払い、しっとりと「くせのうた」を響かせた。

中盤では本日もセグウェイでセンターステージへ移動。ひとりで会場の真ん中に立ち、“狭い空間で楽曲を作り始めた頃からの念が14年くらいかけてみんなに届いたと思いたい”と「老夫婦」を弾き語り。そして、彼にとって大切な曲であるナンバーガールの「透明少女」のカバーの後は、“今日は思う存分、俺を味わって”と前日に奥田民夫とのセッションのために書き下ろした新曲をひとりで披露。もう聴ける機会はそうそうない楽曲を噛み締めるように聴き入っていた観客を見渡して、深々とお辞儀をしてセンターステージを後にした星野の姿も印象的だった。

星野がメインステージに戻ってきた「レコードノイズ」では、会場がミラーボールで照らされる。終始一体感と盛り上がりを見せ続ける会場に、“みんなひとりなのにこうやって集まってることがすごい”と集まった約1万1,000人ひとりひとりに対して語りかける星野。その後、会場全体を使って全員で作り出したウェーブで圧巻の光景を生むと、“今で身体動かしたと思うのでぜひ踊ってください”とストリングスが際立つ「桜の森」へ。星空のような豆球が光り輝く中、ダンサブルなサウンドが客を踊らせるのだった。

感動の本編ラストの後は、アンコールに応えてロングヘアにサングラスという布施明のモノマネ、“ニセ明”で御出まし。“どうも~ニセ明です!”と「君は薔薇より美しい」で絶好調なロングトーンを炸裂させる。ユニークな演出で楽しませた後はバンドメンバーのみでの「Crazy Crazy」。割れんばかりの手拍手に包まれた会場に銀テープが舞うなど、煌びやかな一瞬一瞬から目が離せない。“ありがとー! 星野源でした!”と最後は出演者全員で手をつないで挨拶。2日に渡ってエンターテインメントでエネルギッシュなライヴを見せたが、この日のちょうど2年前、2012年12月17日は星野が病に倒れ手術を受けた日ということで、本人だけではなくさまざまな思いを馳せていた人も多かったはず。必死に駆け抜けてきた2014年を華麗に締め括った贅沢すぎる2日間は、余すことなく彼が体現されており、胸いっぱいに満たされただけではなく、さらなる期待を抱かせてくれた。