私…あんまり人を信用していないんですよ。

―― アルバムタイトルの「KASUMISOU」は『自分以外の他の何かと一緒になることによって輝きを増すもの、何にでも染まれるけど、自分自身をちゃんと持っているもの』の象徴だそうですね。

今回のアルバムでは、提供曲のセルフカバーをたくさん出したいと思ったんですね。あとは、すでにリリースしてある曲がサンリオピューロランドさんだったり、いろんなタイアップがついている曲が多かったので、なんかこう…自分ひとりでは生まれなかった音楽がいくつもあるなぁと思ったんです。それを表す言葉を探していて。そうしたら、ちょうど部屋に飾っていたカスミソウが目に入りまして「これしかない!」と。

―― そういえば華子さんはカスミソウに限らず、具体的な花の名前や“花”というワードがタイトルに入っている楽曲が多いですよね。お花がお好きなんですか?

そうですね!いつも身近にお花があるんです。今思うと、カスミソウが一番好きなのかもって思うけど、ガーベラも好きだし。あとナガミヒナゲシという花が好きですね。オレンジ色のポピーみたいな花で、春になるといろんなところで咲いていてめっちゃ可愛いんですよ。わりとマイナーな花みたいなんですけど(笑)。他にも好きな花はたくさんあります。

―― では、ここからはアルバム収録曲について。1曲目「鞄の中のやきもち」は<あなたに会えない一日が もっとあなたを好きにさせる そんな魔法は私だけだったみたい>という冒頭から心がえぐられますね。華子さんならその“魔法”が自分だけだったと気づいたとき、それでも一緒にいたいと思う派ですか?

いや、まず私の場合は、自分のことを相手が好きじゃなくなった時点で、おそらく別れます。そこで自分も冷めちゃうかも。結構、歌詞の主人公と私自身の性格は違う場合が多いんですよ。実は、相手側の男性の気持ちを想像して、それを主人公の気持ちとして歌っていることも多かったりして。

―― ご自身はサッパリしているんですね!歌詞にあるような<今の私に似合う服は もうこの場所には無いよね 分かっていても あなたの事 脱ぎ捨てることなんて出来るわけなくて>ということもなく。

うん、しがみついたりしない。曲の中ではこんなにしがみついているのに(笑)。というか、私のことをすごく好きになってくれた相手が、だんだん気持ちが薄れていって別れる、という形の失恋自体が、あまり経験ないかもしれないです。まず私からすごく好きになることが多いんです。でも、それが逆転して、徐々に相手の気持ちが大きくなってくると自分の気持ちが冷めてしまって、さようならする…(笑)。そういうのを繰り返している気がします。

photo_01です。

―― えー!そんな恋愛は奥華子楽曲の歌詞には描かれていません(笑)。

そうなんです、描けないですよ…(笑)。結局、自分が想っていたいんですよね。好きでありたい。追いかけていたい。だから好きになられちゃうと、気持ちが冷めちゃうというか。なんか…常にドキドキしていたいんですよ。10代か!って感じなんですけど。先ほど言ったように、そういう意味でも成長してないんですよねぇ。

―― また、華子さんの楽曲は、失恋ソングでも“感謝”を感じることが多く、相手への負の感情が綴られることは少ないですよね。

うんうん。ツラかったこととか、大変だったことって、のちに何かしら自分のためになるからなぁ。時間が経たないとそうは思えないですけど。だから、どんな最低な恋でも“しなければよかった”とは思わないですね。何事も過去があったから、今がある。あの失恋があったから、次の出逢いがあるって感じるんです。それは相手に対しても思います。相手のどんな経験もすべて今に繋がっているから、受け入れたいんですよね。

―― 2曲目「ホントはね」は、両想いソングなのにどこかちょっと切なさが漂っている気がします。多分、それは“あなたがいてくれるから幸せ”ではなくて<あなたがいないと 困ってしまうよ>という不在を想像しているからなんでしょうね。

あー、たしかに!まず私は歌詞に“否定形”を使うことがすごく多いかもしれないです。「いない」「会えない」「言えない」「叶わない」。このアルバム曲じゃないんですけど、ある曲でもずっと“~しない”ばっかり使っていることにあとから気づいたこともありました。今回だと3曲目の「逢えなくても」とかまさにそうですよね。

―― 先ほど、曲は「幸せなときってなかなか作れない」とおっしゃっていましたが、たとえばご自身の恋愛がうまくいっているときでも、日常の中に失恋要素を探したりするのでしょうか?

…しますね。というか、今まで手放しで「幸せ!」とか思ったことがないです。それもどうかと思うんですけど(笑)。だけどやっぱりどこかで「でもいつかは終わるんだろうな」とか思うし。自分自身の心に対しても思うし。いずれ変わっていくものだって。

―― そうですよね。華子さんは好きになられたら冷めてしまうし…。

そうそう。気持ちって変わるものだなってすごく思う。でもだからこそ、今を大事にしたいというところにたどり着くんですけどね。だからあんまり約束とかしたくない。私生活でも「ずっと一緒にいよう」とか「絶対」とか言いたくない。なんか私…あんまり人を信用していないんですよ。あー、どんどん本音が(笑)。でもホント一人でいいんですよね。信じられる人は一人いればそれでいいと思ってるところがあるし、その一人に出会うために生きてるのかなって。

―― 人を信用していないという点でいうと、9曲目「素顔」の<「好きだ」と思ってしまうと 相手はそうじゃないんだと知った時に 救われない気持ちになるから 好きなんて思わないようにします>とか結構“期待しないのが一番”という本音が表れていますね。

そのとおりです。そういう自分自身に向けて<そんな私を誰が好きになってくれるでしょうか>って歌っているんですよね。人は傷ついても傷ついても、それでも人を好きになる。だからこそ美しいんだ。そうわかっちゃいるんだけどね…というリアルな葛藤をこの曲に詰め込みましたね。

―― お話を伺ったら<なんでこんなに悲しくなる程 面倒臭く生きることしかできないんだろう>というフレーズが、いっそう説得力を増しました。

私も改めて実感しています(笑)。やっぱり年を重ねれば重ねるほど、いろんなことを言われたり、まぁ生きづらいんですよ。それを気にしている自分も嫌だし。気にしてないフリをするのも面倒臭い。そういうことが日常には山ほどありますね。本当に「素顔」は私自身の気持ちの“素顔”が最も表れていると思います。

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