逃水

ケチャップの味の風
夕暮れるまちが好き
幹線を横切って踊ろう

待ってね
ただの一歩じゃどこへもゆけそうにない
だからもうちょっと
あとちょっとだけでいい
おかわりをちょうだい

そうしてぼくら お遊びを終えて
それそれぞれの帰路へ
互い違いになったボタン掛け直しながら
すこし顔忘れたころに、また

風呂上がりの脱衣所
おかえりの言葉の
あの温さにどことなく似てる

待ってね
ここで踏ん張ったとて跳べる保証もない
だけどもうちょっと
あとちょっとだけでいい
脆い期待をはらんで

もうすぐきみの代わりに春が来て
それそれぞれの岐路へ
柔い花の残り香 胸に沁みなおしたら
ありがとう なくさないよ

そうしてぼくら 長旅を終えて
それそれぞれ老いぼれ
くちびるあおって 言葉をお茶で流そう
なにひとつ 変わっちゃいないさ

ケチャップの味の風
夕暮れるまちが好き
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