雪の南部坂

無念晴らすと 二年越し
待ちかねたぞよ 内蔵助
あいや 討ち入りなんぞ 夢ですと
立ち去る姿 憎らしや
蛇の目に雪降る 南部坂

瑶泉院さま、ご覧ください、先ほど大石様がそっと置いて行かれたる書状、
連判状がございました。
おぉ…大石内蔵助、吉田忠左衛門、原惣右衛門、片岡源五右衛門、
間瀬久太夫、小野寺十内、
大石主税、磯貝十郎左衛門、堀部弥兵衛、近松勘六、富森助右衛門、
潮田又之丞、堀部安兵衛
それら四十七名が討ち入ると…

身すぎ世すぎの 暮らしにも
耐えてたこころ その誉れ
そう 欺きとおす 苦しさを
背負わせたままを 許されよ
しぐれに変わるか 南部坂

女間者の目を悟り、内蔵助は心にもなきことを…。
そうとも知らず浅はかな口を極めてしもうた。
つらかったであろう…悔しかったであろう…
内蔵助、許してたもれ…。
瑶泉院さま、大石様の使いの寺坂吉右衛門が参りました。
おお、して首尾はいかがなるや?
はい、昨夜寅の上刻、大石内蔵助さま初め四十七人の者で、
吉良上野介さまのお屋敷に打ちいり、見事本懐を遂げてござりまする。
殿…お聞きになりましたか しかとお聞きになりましたか…

過ぎた栄華は 夢の夢
いつでも覚悟 死出の旅
あゝ 妻子(つまこ)を捨てて 忠義だて
武士たる者の 憐みに
祈りを捧げん 南部坂
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