戦場想へば

筑波おろしに 潮来は暮れて
波に凍るか 川千鳥
小舟つないで 渚に立てば
枯れた真菰が
枯れた真菰が 風に鳴る

『思えば、あの首途の暁、
雄々しくも輝かしい弟を乗せた小舟は、
私達感激の涙のうちに、
遠く遠くこの大利根を下っていった。
あれからもう三年……
弟は支那の前線を活躍している。
そうだ、きょうも銃剣高くかざして
東洋平和の理想に
一歩一歩近づいたに違いない。
弟よ!しっかりしておくれ、
頑張っておくれ………』

寝ても覚めても 思いはつのる
通う血じゃもの 仲じゃもの
寒さ偲んで 見上げる空に
何を語るか
何を語るか 利根の月

戦場思えば 吹雪も風も
なんで辛かろ 血が燃える
氷砕いて 大利根越えて
あすも銃後の
あすも銃後の 人柱

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