夏の面影

帆をあげた 船が過ぎたなら
またどこか 少し踊ろう
砂の上を転げて 崩れて
夜を待って 熱を冷まして

白い手に 手を重ねながら
ねぇ、どこか 遠くへ行こう
目の輝き 砂をまとったら
夜沿いに さぁ 面舵をとって

月の光りを捕まえて ゆっくりと雲間に滑り出す

青い海を渡ろう すべてを呑み込んでいこう
そこから全てが 始まるなら
青い海を渡ろう 誰も知らない夜の名を
月の西へと 帆をむけて

夏の面影に捕われて 目の醒める速さで恐くなって

青い海を渡ろう どこから崩れただろう
指笛ばかり影を残して
手をほどいてゆけば、夢の話なのならば
ふり向いて あと少し 微笑んで

さよならさ ふざけた この夏の雲が溶けて
すべてが呑み込まれたらいいのに
『白い爪先が綺麗でしょ、砂をあしらったみたいでしょう』
手を 重ねて、忘れて
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