浪花なごり月

老舗の味は 若旦那さんの
包丁さばきに まかせます
気ままな男が 背中を向ける
空に浪花の なごり月
うけたお情け 返せぬままに
旅をえらんだ 罰あたり

アホやなぁ俺は……おかみさん、お達者で……

船乗りこみの ざわめきよそに
包丁研いでた 野暮なやつ
板場はいくさ場 そう言い聞かす
白い前掛 堅結び
おかみさんだけ わかってくれた
男一途の 胸の底

道頓堀から眺めるお月さんも、これが見納めや
俺にとっては、ほんまのなごり月やなぁ……

一からひとり 出直し修行
包丁一本 抱いた旅
涙にうるんで あと追うような
月が誰かの 目に見えた
太左衛門橋 着流し雪駄
おもいふりきり 消える影
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