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独占インタビュー

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猫は、読めないところがたまらないですね。

―― アルバムジャケットの黒猫は、1曲目の「黒猫のタンバリン」に由来しているのですか?

それもちょっとありますけど、うちに今、猫が3匹いて。アルバムタイトルを『日常Days』にしようと思ったとき、それなら自分の日常のスナップ写真みたいなものがいいなと。それで、自分の部屋を撮ったときに映った子ですね。

―― 和義さんの楽曲には、「黒猫のタンバリン」以外にも曲のなかによく猫が出てきますよね。

そうそう、すぐに出てきちゃうんですよ。猫はいいですよねぇ。

―― 和義さんにとって、猫ってどういう存在ですか?

家族とはいえ、常に仲がいいわけではないから、仲介役になっている感じも、いいクッションになっているところもある。好き勝手にやっているようで、こっちに悩みがあったりすると、普段は寄ってこない子が急に膝に乗ってきたり。じっと見つめられると、いろいろ見透かされている気もするし。「こいつすごいな」と思うときもあれば、「ただのバカなのかな」とも思うときもある(笑)。そういう読めないところがたまらないですね。

―― 「黒猫のタンバリン」に登場する黒猫も、どこか読めなさがありますね。見透かしているというか、示唆的というか。この子は野良猫のイメージですか?

そうですね。ふらーっと歩いているような野良猫をイメージしました。よく「黒猫が横切ると不吉だ」と言いますよね。あと、ヨーロッパのほうだと、保護猫でいちばん最後まで残っちゃうのは黒猫らしくて。でも、黒猫って単純にシャープでカッコいいし。猫のなかでもいちばん悟っていそうな気がするし。だから、歌詞を書くときも、黒猫が先導してユートピアに連れて行ってくれるみたいなイメージがありました。

―― この歌に描かれている景色や、黒猫からの警告はどのように見えてきたのでしょうか。

東京科学大学の教授で、政治学者の中島岳志さんという方がいて。俺はそのひとの本も好きなんですけど、ラジオで話されていたことからインスピレーションを受けました。

実際に昔、パノプティコンという円形の刑務所があって。360度、牢屋になっていて個々に閉じ込められている。そして、真ん中には円柱型の監視塔がある。それが真ん中にひとつあるだけで、監視塔のなかにひとがいようがいまいが、「見張られている」と思って、囚人はみんな悪さをしなくなるんですって。

その話がおもしろいなと思って、<見てごらんあのお城 あの中は空っぽだよ だけどみんな 見張られているようで 従順な召使い>みたいなフレーズを書きました。現代に置き換えると、監視カメラやアルゴリズムも“円柱型の監視塔”のような役割をしているんだろうなと。

あと、この歌は映画『薔薇の鎖』の主題歌でもあって。“正しいと思っていたものに裏切られて逃げるふたり”という物語にも通ずるところがあるなと思ったんですよね。そして、そういういろんな<泥舟>から連れ出してくれる黒猫、という漠然としたイメージから歌詞を書いていきました。

―― <それがいいならお好きにどうぞ 泥舟は沈み始めてる 黒猫はしなやかに踊る>というラストまで、終始黒猫が飄々としているのも印象的です。ご自身としては、どういうニュアンスで歌いましたか?

警告と救い、両方ですかね。自分のなかでは、鎖を引きちぎったひとたちの足には、まだ鎖がついているイメージで。それを引きずりながら、みんな黒猫についていく。鎖がジャラジャラ鳴って、タンバリンのように聴こえてくる。黒猫はしなやかに踊りながら先頭を歩いていく、みたいな。それがどこに向かっているのかはわからないけれど、なんとなくそんな絵が浮かんでいました。

―― 個人的には、4曲目「ワルツ」がとくに好きです。今作は生のストリングスを取り入れた楽曲が多いですが、美しさが際立っている1曲ですね。どのように作り始めたのでしょうか。

完全に曲が先にできていて、「ストリングスアレンジが似合うだろうな」と思ったんですよね。で、「鏡よ鏡」で高野勲君にストリングス編曲をやってもらったときに、めちゃくちゃよかったから、今作ではたくさん手がけてもらって。そのうちの1曲が「ワルツ」でした。

仮タイトルとして、なんとなく曲の三拍子感から「ワルツ」と書いていて。そうしたらディレクターから、「ワルツって仮タイトルだけれど、そのまま使ってみてもいいんじゃないですか?」と言ってもらったので、「じゃあ、ワルツというお題のもとに歌詞を書いてみよう」と、タイトルから歌詞を書き始めていったんです。

―― まさに歌詞のとおり、<一番最初のページに 書いてある題名には ワルツという文字が見える 何のことかな>という状況だったのですね。

そうなんですよ。ワルツの曲調で、不穏な雰囲気もある曲なので、そこからまず「ピエロとかが出てくる感じかなぁ」と思い浮かびました。さらに、「ピエロをやっているひとって、普段は何をしているんだろう」と考えていって。昼は背広を着て、電車に乗って通勤して、普通に会社で働いているひとが、夜になったら着替えて化粧をして、街に出てパントマイムとかをしているのかもしれない。そんなイメージが膨らんでいきましたね。

そして、そのひとには、抱えているいろんなものがあって、どこかの街角で道化師としてパントマイムをすることで、浄化されていくというか。ワルツを踊ると救われていくひとたちがいる。その場所ではいつもワルツが流れている。書いていくうちに、そういうイメージが見えてきた感覚でした。

―― すると、歌詞内に何度か登場する<寂しがり屋>というのは、同一人物というより、この世界に生きている“誰か”で、いろんなひとたちにスポットライトを当てるような感覚なのでしょうか。

はい。だから最初は、1番、2番、3番でわかりやすく違う登場人物にしようと思っていました。でも、構成的に尺が足りなくなって(笑)、<寂しがり屋がまた1人>という表現にしたんです。そして、その光景を眺めている自分もいる、みたいな歌です。

あと、この歌はもう<寂しがり屋がまた1人>というワンフレーズが、あのメロディにしっくりきたので、そこから一気に書いたような感覚もあります。最初の1行さえ書ければ、うまくいくことが多いです。

―― 逆算して書くというより、最初の1行からひと筆書きなのですね。

いったんそうやって書き切ってしまうほうがいいですね。最終的にもわりと、“てにをは”を変えるくらいですし。自分で最後のオチもわからないまま書いていくんですよ。で、終盤のほうで、「どうだったっけ?」と歌を振り返ってみると、「ああ、あやとりしてる」と思って。じゃあ、それを川に流そうかなと(笑)。いつもそんな感じで、たまに最初から描きたい絵があることもありますが、大体は書きながらすべて見えてきます。

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斉藤和義
23rd Original Album『日常Days』
2026年9月9日発売
SPEEDSTAR RECORDS
ジャケット画像1です。

初回限定盤
(2CD+書籍「和とロック」写真集+全曲弾き語り用コード譜)
VIZL-3060 ¥6,600 (税込)

通常盤 (CD)
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VICTOR ONLINE STORE限定商品
収録内容