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考え込むけれど、どこかあっけらかんとしている。

―― 個人的には7曲目の「満腹」がとくに好きです。“満腹になりたい”なのか、“満腹がわからない”なのか、“満腹なのに”なのか、どういう気持ちがいちばん強い曲ですか?

“満腹なのに”ですね。これはデビューしてからの思いを書いています。十分すぎる環境に恵まれていて、幸せなんですよ。正直、満腹って気持ち悪くて、腹八分がいちばん幸せじゃないですか。それなのに<もう1口ください>と思ってしまう自分がいるんです。すごくいろんなことが変わっているのに、<僕だけ残ってる>と考えてしまったり、何も変わらないと思ってしまったり。

―― <でも分からないから もう1口ください>というのは、何が“わからない”のでしょうか。

何を求めているのか、何が足りないのか、わからないんです。どうして満腹なのに、こんなに恵まれているのに、まだ何かを欲しがっているのかもわかりません。ただ、「何か、何か」と思って、食べてしまう感覚です。

―― この歌では“変化”に対する葛藤も感じます。「何か、何か」と思って食べてしまうのは、“変わりたいから”だと思いますが、一方で<変わんないように そっと>と変化を拒んでいる面もありますよね。

私は新たなことに挑戦するのが苦手で、変化も好きではないんですよ。でも、デビューして、ものすごく環境が変わって。そのなかで自分だけがまったく変わっていなくて。友だちからも、「ふみのはずっとそのままだよね」と言われるし、インタビューなどで「何か変わりましたか?」と訊かれても、「何も変わらないんだよな…」という気持ちになっていました。

今考えると、それは自分の軸があるということだし、いいことでもあると思います。ただ、この曲を書いたときは、「変わりたい」というより「なんで私は変わらないんだろう?」と考え込んでいました。デビューしたタイミングが、ちょうど高校を卒業する時期で。まわりは大学生になって、どんどん変わっていくから、自分との違いも感じていたんです。とはいえ、やっぱり変わりたくない気持ちもあって。そういう自分のなかの矛盾する気持ちが、そのままこの曲に出ていますね。

―― ふみのさんの“変わらない部分”とは、何だと思いますか?

考え込むけれど、どこかあっけらかんとしている。それは「18」の時期にはなかった部分だと思いますが、いちばん悩んだ時期を抜けてからは、常に飄々としているところが変わらない気がします。だから、たとえば、「満腹」を書いたあとすぐ、自信に満ちている「ロックスター」を書けたりする。それは私の考え込むところと、あっけらかんとしているところの両方が軸にあるからこそかもしれません。

―― たくさんの変わりゆくものがあるなかで、<無くならないもの 1つ知ってる>というのは、どんなものをイメージされたのでしょうか。

<1つ>と歌いながらも、ひとつではない気がします。自分が思っている曖昧なものだったり、この歌のなかの<貴方>との関係だったり、私のなかで「絶対になくならない」と確信しているものが、いくつかあるんですよね。

―― この歌のなかの<貴方>は、ふみのさんにとってどんな存在ですか?

助けてくれるのに、そのひとのことを信じきれないというか、優しさを素直に受け取れないことってあるじゃないですか。「頑張って」と言われても、「いや頑張ってるし」と思ってしまうような。優しさがまぶしくて、欲しいのに「要らない」と言ってしまうような。でも、「その優しさをまっすぐに受け取ることができたら、貴方を信じることができたら、どんなにいいだろう」と思う。そういう優しさをくれるひとが、<貴方>ですね。

―― では、アルバム収録曲のなかで、とくに「これは書けてよかった」と思うフレーズを教えてください。

「東京」の<それぞれがそれぞれなわけで 難しいことはない 比べずに褒められる そんな人になりたい>ですね。このワンフレーズは途中で足したのですが、入れてよかったなと思います。この歌はドラマ『Tokyo middle 30』の主題歌で、“誰にでも当てはまる曲”というところを意識して書きました。ただ、楽曲の制作途中で「もっとふみのが見えたほうがいい」と言ってもらって。“東京と私”を考えてみたとき、この歌詞が出てきました。

「ロックスター」の<こんなことも続けば 評価されないと不安になるよ>も好きですね。みんなも同じように感じていてほしいなとも思います。

あと、「満腹」の<できるのなら いずれ終わりゆく 全てにただ明日を>も気に入っています。実は、この曲を書いていた頃に、おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってしまって。ひとが急にいなくなるわけじゃないですか。先ほどもお話したように、私は変化や終わりがすごくイヤで。だから、「みんなに当たり前に来るはずの明日をあげたい。そうすれば変化なんてなくていいのに」という気持ちを書いたんですよね。

―― ご自身の描く主人公には、何か共通する特徴や性質はあると思いますか?

曖昧なものを欲しがっていますね。あと、寂しがり屋な感じがします。いつでもどこでも誰かを求めている。実際、誰かとの会話などをきっかけに歌詞を作ることが多くて、ひとりでは曲が生まれないんですよね。

―― 歌詞を書くとき、何を大切にしていますか?

歌詞が綺麗になりすぎないように意識しています。たとえば、赤裸々な実体験を入れたり、言いたくないような泥臭い本音を素直に入れたり。

あと、1曲のなかで成長や変化を表現することも好きです。たとえば「うたかた」なら、<君がいれば完璧でしょう>が<君といれば完璧でしょう>とたった一文字変えるだけで、伝わるものが変わりますよね。

「1番はこうだったサビが、最後にはこんなふうに変わるんだ」みたいな歌詞を書かれるアーティストさんが好きで、「やられた!」と思うことが多いので、そこは私もこだわって書いています。

―― これから挑戦してみたい歌詞はありますか?

もっとラブソングを書きたいです。最近、とくにaikoさんの曲をよく聴いていて。aikoさんの描くラブソングって、視点や描写がどこか独特で、引き込まれるんですよね。私はまだ恋愛を描いた歌が少ないので、これからどんどん書いていきたいと思っています。

―― ありがとうございました。最後に、ふみのさんにとって歌詞とはどんな存在ですか?

自分そのものかもしれません。自分を知るきっかけになることも多いです。たとえば「18」を書いたことで、「当時の私はこんなことを思っていたんだ。ここに気づけなかったから悩んだのか」ということがわかる。他のアーティストさんの歌詞を聴いて、「ここはすごく共感できる。でも、ここはわからないから、私が思うことをメモしよう」と、新たに自分の考えが生まれることもあります。やっぱり歌詞が好きですね。

―― このアルバムを作り終えてみて、新たに知った自分はありますか?

前々からわかっていた気はしますが、「私って曖昧なやつだなぁ」と改めて思いました(笑)。

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ふみの

BMSG×ちゃんみなが手がけたガールズグループオーディション「No No Girls」に参加し、約7,000人の応募者の中から最終選考まで進出したファイナリスト10名の一人。静謐な弾き語りから躍動感あふれるバンドサウンドまで、自由自在にその世界観を展開するシンガーソングライター。2026年1月11日、活動名を“ふみの”とし、ちゃんみなが主宰するセルフプロデュース型レーベル「NO LABEL ARTISTS」の第一弾アーティストとしてデビュー。

デビュー曲「favorite song」はBillboard JAPAN “JAPAN Hot 100”で9位を記録し、MVは公開20時間で100万回再生を突破するなど大きな注目を集めた。その後、自身初の作詞・作曲による「ホットライン」、ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』主題歌「よくあるはなし」をリリース。さらに4thシングル「東京」はドラマ『Tokyo middle 30』の主題歌に抜擢され、デビューからわずか半年で2作連続の連続ドラマ主題歌を担当するなど、異例のスピードで活躍の場を広げている。

そして2026年9月14日、デビューから1年経たずして待望の1stアルバム『僕のすべてを知ってるような君だから』をリリース。デビュー曲「favorite song」からこれまでの既発曲、さらには新曲まで全11曲が収録されている。
また同月9月には、アルバムと同タイトルを冠した自身初の東名阪Zeppワンマンライブツアーも開催。
繊細さと力強さを併せ持つ唯一無二の歌声と、自身の言葉で紡がれる等身大の表現で多くの共感を集め、次世代を担うシンガーソングライターとして存在感を高めている。