
―― 人生でいちばん音楽に心を動かされた記憶というと、何が浮かびますか?
ディズニー・チャンネルが原点だと思います。ディズニー・チャンネルで放送されていた海外ドラマや映画はほぼすべて観ていました。ギターを始めたきっかけでもあって。小学2年生の頃、ディズニー・チャンネルでドラマ『オースティン&アリー』を観て、その主人公がギターを弾いている姿に影響を受けたんです。そこからギターに目覚め、いろんな曲のカバーをするようになり、「将来は歌うひとになりたい」と思うようになっていきましたね。
―― 思春期に日記やポエムなどは書かれていましたか?
私は日記が続かなくて。すごく印象的な出来事があったときだけ書いています。たとえば、悩みがあって悲しいときとか。遠くに誰かが行ってしまったときとか。
―― まさに今作の11曲目「東京」に綴られている<悲しい時だけ書いてきた僕の日記帳>ですね。
本当に歌詞のとおり。いつも悲しいときだけ、そのときの感情を書き留めてきた気がします。作詞作曲というと程遠いですが、ギターを持ち初めてすぐの頃、お父さんの誕生日に歌を作ったことはありました。ホームビデオに記録されているかどうかというレベルのものなんですけれど。
―― 「将来は歌うひとになりたい」と思う一方で、オリジナルの歌詞などは作っていましたか?
ちゃんと曲という形にしたのは、今作の1曲目でアルバムのリード曲「18」が最初なのですが、小学生の頃から “歌詞ノート”みたいなものは作っていました。いつか歌詞に使う用のメモというか。今思うと、それが日記に近かったのかもしれません。その日にあったこととか、「今日は何も起こらなかった」とかも書いていて。あと、会話も記録していましたね。「〇〇がこんなことを言っていた、それに対して私はこう思った」みたいな。
その歌詞ノートは今でもずっと書き続けています。ちゃんと曲になることを意識して、歌詞ノートを書くようになったのは最近なのですが、とにかくたくさんメモを溜めていますね。そして、「このフレーズを使って歌詞を書きたい」というところから、曲のイメージを広げていくことが多いです。
―― 歌詞ノートにはどんな感情が多く書かれていますか。
どちらかというと、負の感情ですね。言えなかったことを書き溜めていくというか。あと、嬉しいことは意外と気づけないというのもあると思います。どうしても負の感情のほうが印象強く残ってしまうんですよね。
―― 歌詞面で影響を受けたアーティストというといかがですか?
私は歌詞が大好きで、いろんな方から影響を受けているのですが、とくにback numberの清水依与吏さんですね。やっぱり表現がとても綺麗ですよね。思いつきそうで誰も思いつかなかった比喩がたくさんあるじゃないですか。曲を出されるたびに、「すごい!」と思います。
―― ふみのさんは今年の1月にデビューされたばかりですが、ご自身で作詞・作曲されたオリジナル曲がもう10曲あるというのは、曲づくりのスピードが早いですよね。
ずーっと書き続けていますね。でも、スピード自体は曲によります。わりと書き直したくなってしまうタイプでもあって。何度も何度も書き直しているうちに、時間が経ってしまう場合もありますし。逆に「18」とかは形になるまでが早かったです。30分~1時間くらいで出来上がっていました。
―― 曲づくりはどのように進めていくことが多いのでしょうか。
まずはギターをジャカジャカ弾いて、コードを決めるところからです。そして、メロと歌詞は同時に入れます。先ほどお話した歌詞ノートのストックから、「こんなテーマで歌いたい」ということが見えてきて。いったんメモしていた言葉を歌ってみて、そこからどんどん歌詞の形を変えていくんです。綺麗にハマるフレーズができたら、次に進む。そうやって粘土をこねるみたいに、少しずつ進めて、完成まで持っていきますね。
―― ご自身のなかで、歌詞面の“ふみのらしさ”を掴むことができたタイミングはありましたか?
デビュー前に、何か月かスタジオに通い続け、ずっと曲づくりをしていた時期があって。一度、まったく歌詞が書けなくなったんです。私は1曲のなかにひとつはパンチラインがないと、納得できないんですけど、そういう歌詞が書けないというか。何が私らしい歌詞なのか、何が正解なのかもわかりませんでした。
でも、そのときに、「『ホットライン』の<君が赤をとるなら青をとるし 地獄に行くなら仕方ないけど ついていくよ なんかそんな感じ>みたいな歌詞がすごくいいよ。それがふみのの表現だと思うよ」と言っていただいたんですよね。その部分を褒めていただいたとき、「これでいいんだな」という確信を持てた気がします。
―― 歌詞面のふみのさんらしさとは、どういうものだと思いますか?
<できれば>とか<仕方ないけど>とか、余計な言葉を入れてしまうところが、私らしいなと思いますね。そのひと言によってニュアンスが変わってしまうんですけど。
―― そういう言葉を入れたくなるのはなぜでしょう。
多分、曖昧にしたいんです。確信を持たせることが好きではなくて。言い切ってしまうと、その言葉から逃げられないように感じてしまいます。私はかなり優柔不断なので、「こっちだ」と言えない。「なんとなくこっちで」とか、「あなたが決めてください」とか言いたいんですよね。
―― たしかに、そのふみのさんらしさはとくに今作の4曲目「どっちがいい?」に表れているように感じます。「あなたが決めてくれたことが、私にとっての正解です」と言いたくなることってありますよね。
本当にそうなんです。いつもそうです。自分が「どっちがいい?」という質問に答えて、決めたほうに行くとするじゃないですか。そうすると、「もうひとつのほうがよかったかなぁ。無理に合わせてくれていたらイヤだなぁ…」みたいなことをずっと考えてしまいます。だから、決めてほしいんですよね。「私は100%、あなたが選んだほうをいいって心から思えるから!」って(笑)。
私と同じくらい優柔不断な友だちがいて、「どっちがいい?」はその子といたときの実体験から生まれた歌なんです。原宿に着いたら、まずご飯を食べに行くか、いったんクレープを挟むかで迷うわけです。向こうは絶対に決めません。もう何年も一緒にいる幼なじみなんですけど、「どっちがいい?」という質問に答えてくれたことがなくて(笑)。
でも、私も決めたくない。だからお互いに探り探り、30分くらい喋って、ようやくクレープ屋さんに行くことを決めました。だけど、原宿ってめちゃくちゃクレープ屋さんが多いじゃないですか。しかもどこも並んでいる。すると、今度はどのお店にするかまた30分くらいウロウロして。さらに、お店を決めてからも、どのクレープにするかで迷って。そんな時間を過ごした実体験から、「どっちがいい?」という曲になっています。
―― ふみのさんは歌声も特徴的です。たとえば、「18」の繊細な声と、「どっちがいい?」の明るく楽しそうな声と、「ロックスター」の強気な声と、まったく違う表情を見せていますよね。ご自身の歌声の特徴を言語化すると、どんなものだと思いますか?
透明感という意味合いではなく、色がついてないという意味での“透明”だなとずっと思っています。だからこそいろんな色になることができるけれど、何色でもないことに悩んでいる時期もありました。
―― 曲によって声のスイッチを使い分けるような感覚なのでしょうか。
歌のなかの人物になりきるのが好きで、学生時代にSNSに投稿していたようなカバー曲の演奏では、演技をしているような感覚もありますね。自分の歌詞に書いているのは、基本的に私自身のことなので、“その頃の自分を演じる”みたいな感じです。たとえば「18」だったら、18歳の自分を声に憑依させる。今改めて、いろんな曲のカバーをやってきてよかったなと思いますね。