コブクロの小渕さんが「歌詞はバーベキューと一緒だよ」って。

―― 新曲「素晴らしき嘘」のなかで、いちばんお気に入りのフレーズというと?

気に入っているというか、ここまで書かなくていいかなって最後まで迷って悩んだのが<この世界を敵に回してもいい 誰も奪えない>というフレーズなんですね。実際、この世界に<敵>なんているかな? とも思ったし。別に<大切な想いは今も あなたと僕の中にある>で終わっても、この歌詞って成立するし。最後に二人の世界にフォーカスさせた目線を、また世界まで広げなくても良いかもしれない、とすごく葛藤していたところなので…。

―― その上で、それでも入れた価値や意味があるのですね。

そうなんです。活動再開のときにリリースした前作の「HELP」という曲は、どちらかというと内向きなんですけど、この「素晴らしき嘘」では外向きなバンドのメッセージを放ちたいなと思って。このフレーズは、今のバンドの姿でもあると思っています。世界を敵に回しても、俺らは俺らだよという軸がある。そういう自分たちのテリトリーを必死に守るため、4人でスクラムを組んだまま、外へ向かってゆく感じがあるんです。そういう意図もあるので、思い入れが強いフレーズですね。

―― 隆太さんは、10年以上活動してきたなかでご自身の歌詞面の変化って、ありますか?

歌詞かぁ…。コブクロの小渕さんって、僕とすごく仲良くしていてくれて、活動休止中の本当に苦しかったときも何度も支えてくれた憧れの先輩なんですけど、その小渕さんが「歌詞はバーベキューと一緒だよ」って言っていたんですよね。

―― バーベキュー?

ん?ってなるじゃないですか。歌詞がバーベキュー?って。でもそれは「俺らがやっているのは、バーベキューの火を起こすのにどれだけ苦労したかを書くことじゃなく、そこは全部捨てちゃうもの。そこを語るだけのものは歌詞じゃない。やっぱり美味しいお肉をゆっくりと食べてもらうことが、歌詞を書くこと、音楽を作ることだから」って意味だったんですよ。

僕はその言葉を聞くまで、不満とか本音とかひとに言えない想いを歌詞にぶつけるのがスタートだったこともあり、わりと苦しい経験をそのまま書いてきたんですね。だけど、ただ苦しいからできたものじゃなくて、その美味しい部分をちゃんと言葉にすることが音楽なんだと教えてもらったときに、ズーンッ!って響きまくって。たしかにそうだなって僕も思ったんです。それで書いたのが前作の「HELP」なんですけど、声が出なくなった自分の苦しさだけを書くんじゃなくて、病気になったとか、失敗をしたとか、何か同じように苦しんでいるひとたちの力になるように、という想いで歌詞を作りました。そう考えることができるようになったのは、大きな変化ですね。

―― きっとそれは隆太さんが今、歌詞を書くときに大切にしていることのひとつでもありますよね。

本当にそうですね。ひとと会話するときと一緒だなとも思います。苦しいことがあっても、悲しいことがあっても、それをそのまま伝えちゃうとやっぱり…。一方的ですよね。だから歌詞は、自分の経験をもとには書くけれど、聴いてくれるひとへのプレゼントであるべきものだと思うので、ちゃんと美味しい部分を贈るようにする。受け売りですけど“バーベキュー”をしていただけるような歌詞を書くことを大切にしていきたいですね。

―― 歌詞を書くときに、好きでよく使う言葉や、使わないように意識している言葉はありますか?

えー、難しいなぁ。…ないです(笑)。逆に、制限をしないというおもしろさのほうが気になっているかな。たとえば昔は<夢>とか<希望>とかってあんまり使いたくないなと思っていたんですよ。でも今は、短歌みたいに考えているところもあって。冒頭がプラスな言葉だとしたら、終盤にマイナスな言葉を入れることでおもしろい作品になるというか。だから<夢>のような、ありきたりな言葉ほど裏切ったときの深みがあると思うんです。どの言葉にもそういう力があるので、使わないように意識はしないなぁ。他のアーティストさんはどういう言葉を使わないワードとしてあげられるんですか?

―― 理由はみなさん異なりますが、よくあがるのは<愛している>ですね。

あー、たしかにな。僕も愛している気持ちを表現するのに<愛している>とは使わないか。まぁものすごくストレートでプラスな言葉じゃないですか。だからこそ、ものすごくマイナスな言葉を合わせたときにはパワーがありそうですよね。極端な話<愛している 殺したい>とか<愛している 泣かしたい>とか。くっつけたらいろんな可能性がありそうでおもしろいなと思います。

―― 隆太さんご自身にとって、歌詞を書くこととはどんなことだと思いますか?

うーん。誰かに力を送ろうとか、励まそうとか思いながらも、実はいちばん自分が励まされるもの。歌うことで僕自身に言い聞かせていたりもするから。あと、ひとの力になれたときって、自分の存在意義を感じたりもするじゃないですか。そういう意味でも、歌詞は自分にとってすごく力になるものですね。

―― ありがとうございました!では最後に、これから挑戦してみたい歌詞はありますか?

ちょうど今書いている歌詞ではあるんですけど、エロイ歌詞(笑)。Twitterにも書いたんですけど、メンバーの阪井がそういう曲を作ってきまして。あんな風貌して、僕に「耳元で吐息交じりに…」とか、すごくロマンチックなことを要求してくるのでややこしい。モヤモヤしながら書いています(笑)。でももう僕もいいおっさんなので、ここからは自分の新たな引き出しとして、若さじゃ出せない色気も出していかないとなとは思っています(笑)。

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flumpool
NEW SINGLE 『素晴らしき嘘』
2020年2月26日発売
A-Sketch
初回限定盤
AZZS-101 ¥2,300(税抜)

通常盤
AZCS-2079 ¥1,300(税抜)

収録内容
直筆色紙プレゼント

山村隆太の好きなフレーズ
毎回、インタビューをするアーティストの方に書いてもらっているサイン色紙。今回、flumpool 山村隆太さんの好意で、歌ネットから1名の方に直筆のサイン色紙をプレゼント致します。
※プレゼントの応募受付は、終了致しました。たくさんのご応募ありがとうございました!
flumpool(フランプール)

山村隆太(Vo.)、阪井一生(Gt.)、尼川元気(Ba.)、小倉誠司(Dr.)による4人組バンド。2008年10月1日にデビューDOWNLOADシングル「花になれ」をリリース。同曲がau「LISMO!」CMソングに抜擢され、10日間で100万DLを突破するなど大きな話題となり、デビュータイミングにその名を全国に響き渡らせた。2017年末、山村隆太が“歌唱時機能性発声障害”であることが判明し、治療に専念するため、12月5日より活動休止。

2019年、バンド結成日である1月13日に、大阪・天王寺公園にてゲリラライブを実施、活動再開を発表。2月からはファンクラブツアーを開催、5月からは22都市24公演の全国ホールツアーを開催。同月には活動再開後初のシングルとなる「HELP」を発売。9月には同ツアーのスぺシャル公演として初の香港単独公演も行い、大盛況のうちに全公演を終了。そして、2020年2月にシングル「素晴らしき嘘」をリリース。春には4年ぶりのアルバム『Real』をリリースし、デビュー以来10度目となる全国ツアーを行う。flumpoolの新たな挑戦の一歩にご注目を!