―― 人生でいちばん最初に、音楽に心動かされた記憶というと何が浮かびますか?
母と母の姉が嵐さんの大ファンで、僕が幼稚園の頃、ライブに連れて行ってもらったんです。そのときに“音楽に感動する”という初めての経験をしました。「Happiness」とか「One Love」など、本当に名曲ばかりで、それで僕も好きになって、嵐さんのグッズを買ったりもしていました。「音楽って楽しいものなんだ!」と最初に教えてくれたのは、嵐さんだと思います。
―― 宮世さんは、小学5年生でスカウトされたそうですが、ご自身のなかでとくに興味を持った表現方法などはありましたか?
当時は目の前のことを全力でやるばかりだったので、自分がそのときに何をやりたいかなどを考える余裕がありませんでした。まず、何も基礎がない状態だったので、いろいろなものを身につけなければいけなくて、小学生の頃は、仙台から往復2時間かけてレッスンに通う日々で、友だちと遊ぶ時間もほとんどなかったんです。しばらくは、事務所からいただいたお仕事を、自分なりに表現することに徹していました。
―― では、活動のなかで、「0から1を生み出したい」という思いはいつ頃から湧いてきたのでしょう。
自分の人生の分岐点が、2019年頃で、本格的に俳優活動を始めてからだと思います。いい意味で、プレッシャーをしっかり感じるようになって。だからこそ、自分の芯を持って、折れないようにしないといけない。そう考えたとき、自分自身で味を出していきたいなと考えるようになっていきました。
―― そして、いろんな変遷を経て、2024年にアーティストとして活動をスタートされました。やはり“音楽”という存在は宮世さんにとって大きかったですか?
ものすごく大きくて、曲を聴いていない日はないくらいです。それに、音楽に興味がない方も、僕のことを知らない方も、もし買い物中にお店で宮世琉弥の曲が流れていたら、出会うことができて、さらに世界中に届くと考えたら、それってすごいことだなと思うんです。僕自身、音楽に助けられた身なので、今度は宮世琉弥というアーティストが誰かにとっての救いになれたらいいなという思いで活動を始めました。
―― 歌詞に自分の言葉を綴ることの怖さはありませんでしたか?
最初はプレッシャーでした。作詞には正解がないですし。小さい頃から僕は、どんな曲でもまず歌詞を聴いていたんです。その曲のストーリーを楽しんだり、描かれている感情に共感したり、助けられたり。何より歌詞に惹かれていたんです。そんな大事な存在だったからこそ、自分が書くとなると余計に難しかったです。
でも今は、「絶対に僕ひとりの力で歌詞を完成させなければいけない」とは思わなくなりました。迷ったときは、チームで話し合うことができますし、意見やアドバイスをいただくこともできます。そのおかげで、満足のいく歌詞を書くことができています。関わってくださっているみなさんの力をお借りして、自分の思いを届け続けたいです。
―― すでに役者・宮世琉弥としてのイメージも大きくなってきているタイミングだからこそ、“何を書くか”という面も難しそうな気がします。
俳優としてのキャラクター像や、その時々で演じている役とのバランスもあると思っています。“何を書くか”という面でいうと、今作『Illusion』の8曲目「Voice」は震災のことを綴ったのですが、実はこの曲ができる前から、何度も同じテーマで書こうとしてきたんです。東日本大震災を宮城で経験した僕だからこそ、伝えられることがあると思いました。
リアルを落とし込みすぎると、どうしても表現が重くなりすぎてしまいますし、いちばん届けたいメッセージが見えてこなくなってしまうんです。とはいえ、自分は常に「お客さんに元気になってほしい」という思いも強いので、その塩梅が難しくて、ずっと試行錯誤していました。
―― ご自身が目にしたものをしっかり残したい気持ちと、前向きなメッセージを伝えたい気持ちと。
風化させたくない気持ちも強いです。震災から15年が経ち、僕の曲を聴いてくれるひとのなかには、震災を経験してない若い方々がこれからどんどん増えていくと思うんです。だからこそ、残していきたいです。誰かにとって、震災というものを知るきっかけのひとつが“宮世琉弥”になってくれたら。今作の「Voice」が入り口になってくれたら。そういう思いによって、やっと迷わず歌詞を書くことができました。
―― 今まで何度も震災というテーマで書こうとしたものの、うまく形にならなかったなか、どのように「Voice」を作り上げることができたのですか?
今回も、震災のことを書くか悩んでいました。自分のメモには、すでにたくさんフレーズが溜まっていたのですが、まだ出せないかもしれないなと。そんなとき、この音源と出会えて、描きたかったイメージがハマったんです。それで、「この歌詞は僕に書かせてください」とスタッフさんに言いました。スケジュールも結構ギリギリでしたが、書きたいことは決まっていたので、かなり短い期間で書くことができました。
―― 歌詞が曲を引き寄せたのかもしれませんね。
そういう感覚でした。曲を聴いたら、ライブの映像まで、自分の頭のなかですべて浮かんできたんです。叫ぶシーンだったり、みんなで拳を挙げているシーンだったり。この曲は“一体感”というものも目指したかったので、ピッタリな楽曲だなと。やっと歌詞にすることができてよかったです。
―― どのフレーズが、いちばんの核になりましたか?
Aメロです。まず、1番の<壊れた時計が あの瞬間を刻んで 僕らを追いかけて>というフレーズは、僕が通っていた小学校を描きました。震災のとき、津波にのまれてしまったんです。でも、校舎も時計もちゃんと残っていて。そして、時計は地震の起きた時間で止まっているんです。その光景が衝撃的だったのを今でも覚えています。学校が取り壊されずにあって、あの場所へもう一度、行けたから書くことができた大事なフレーズです。
そして、1番の<名前を失くした景色に 僕らは 何も言えなくて>に呼応している、2番の<ひび割れた大地の真ん中で 歌う、名前のついた花>というフレーズ。ここはかなり自分自身のなかにある映像です。僕の家は震災で全壊して、まっさらになって、ひび割れて、危険区域になっていたんです。でも、そういう場所で生まれた僕が、今はこうして歌わせてもらっている。その希望を<歌う、名前のついた花>と例えました。
聴いてくれたみなさんには、それぞれ自分の人生を照らし合わせてもらえたらいいなと思っています。僕にとっては、震災を描いた歌詞ですが、ひとりひとりに大変なことはある。たとえば、「仕事でものすごく疲れているけれど、そういうなかでも私は頑張って立っている」という気持ちを重ねてもらってもいいですし。いろいろな捉え方で捉えてもらえたら、より嬉しいです。
―― 「Voice」にも<名前のついた花>というフレーズがありますが、今作の新曲で宮世さんが手がけた歌詞には、必ずと言っていいほど<花>というワードが入っていますね。
おっしゃるとおりです。今作『Illusion』は“お花”をテーマにしたので、僕の作詞曲には花を散りばめることを意識しました。僕はお花が大好きで、プライベートでも毎週、いろんなお花を買いに行って活けていたり、花の名前や由来に興味があってよく調べます。ひとつひとつ、色も咲く時期も、期間も違うんです。たとえば、3日で枯れてしまうお花もあるけれど、その儚さも美しい。それは人間も一緒で、それぞれの心にいろんな花があるからおもしろいんだなと思ったんです。僕の音楽チームを想像してみても、異なる花たちが“花束”のようにひとつになるから輝く。そんなイメージが広がったので、今作は“お花”が大事なポイントになっています。