
―― アルバムの入り口を飾る「美貌録」は、石崎ひゅーいさんとの共作ですね。
すごくおもしろい制作でした。ひゅーい君とドラマで共演したときに、「一緒に作ろうよ」という話になり、ふたりで集まったんです。そうしたら、ひゅーい君がものすごく全力でやってくださって、すでにコード進行も決めてくださっていて。でも、「僕もちゃんと1から一緒に作りたい!」と思って、負けじと自分の知っているコードをギターで弾いて、「こういうコードはどうですか?」とひゅーい君に提案していきました。
メロディーも、僕は“りゅびちゃん”と呼ばれているんですが、まずはひゅーい君が歌い始めて、「次、ここはりゅびちゃん歌って」と僕が歌ってみて、お互いのメロディーを合体させながら、考えていきました。
―― 歌詞はどのように作っていきましたか?
最初からひゅーい君の色をたくさん入れ込んでいただいていて、そこが自分の描きたかったイメージとも重なっていました。たとえば、<抜けない棘や 消せない過去に>とか<僕は跡形もなく>とか、悲しい雰囲気も漂っているのに、失恋ソングではなく“純愛ソング”であるという部分。「これをもとに一度、僕も書いてみます」と、いろんなラリーを重ねた結果、僕らが大切にしたかったストーリーを書くことができました。
―― おふたりがもっとも大切にしたかったストーリーの、根っこにあるものは何でしたか?
あまり他のひとには見せない、「好き」という気持ちの裏側みたいなものです。“愛”というと、なんとなく華やかなイメージがあるじゃないですか。でも、「どうして、ひとはこんなに嫉妬してしまうんだろう」と自分で自分が怖くなるような、そういう部分が<これが愛だと言うなら 神様は狂っている>というフレーズなどに表れていると思います。そのなかで、<君を愛したいだけ>とまっすぐな思いも描けたんじゃないかなと思います。
―― <僕>が<君>を強く思う一方で、<まぶしい光の中に 君が溶けて行きそう>な儚さもあります。
このニュアンスを言葉でお伝えするのがすごく難しいなと思います。感覚的なものになってしまうのですが、闇のなかに光がふわーっとあるような。それが消えてしまいそうだけれど、ちゃんと握っていて、未来が潤んでいるような。そういうふたりだけの空気感を大事にしたかったんです。
そして、この歌にもアルバムテーマである“花”を散りばめているのですが、それが<例えば君が 咲かない花でも 蕾が開く その瞬間まで 人生という 水を注ぎ 君の光になりたい>というフレーズになりました。一見、“咲かない”ことはマイナスだけれど、それさえも包む大きな愛を表現できたらなと思って書きました。
―― その愛はみんなに見えるものではなく、<静かな庭で 根を絡ませて 誰にも気づかれず そっと育くんで>いくものなんですね。
そうなんです。ふたりしか知らないお庭があって、そこでしか生まれないものがある。そのいいものも悪いものも落とし込んだ感覚です。だから、あえて少し暴力的なワードも出し合いました。<僕の悪い口癖も 僕の臆病な愛も 永遠に焼き付けておくれ>みたいな。きっと、ひとには誰しも恋人にしか見せないような一面って生きていくなかであると思うんです。そういう部分をひゅーい君と一緒に歌にしたいなと思っていました。
―― そのお話を伺うと、改めて「美貌録」というタイトルがしっくりきますね。この瞬間のふたりの美しさを残したいという気持ちが“備忘録”という意味合いにもかかっていて。
これは、ひゅーい君にいちばん最初につけていただいた仮タイトルでした。ふたりで頑張って歌詞を考えて、完成させて。僕もタイトルをいろいろ考えたんです。たとえば“太陽に向かって咲く花”という造語で、「日追花(ひおいばな)」とか。でも、パッと読み方がわからないなと。チームで話し合った結果、ひゅーい君につけていただいた「美貌録」に決まりました。
―― そして、アルバムのラスト「We both think alike」は、作詞・作曲・アレンジ、すべてを宮世さんが手がけられている新曲です。
僕、これまでのアルバムに、いわゆるザ・ラブソングがないなと思いまして。斜め視点だったり、ふたりの恋を応援している側だったり、爽やかなダンスソングが多かったのですが、The 1975というバンドさんのライブを見て、「こういうラブソングって素敵だな。書いてみたいな」と刺激を受けたんです。それで、“お花”というテーマで等身大の世界観を作りました。小説を読んで、引き出しを増やしたり、父から話を聞いたりしながら制作しました。
―― お父さまからはどんな話を聞いたのですか?
父は尾崎豊さんが大好きなので、「ああいうふうに比喩表現を混ぜて書いたほうがいいよ」みたいなアドバイスをもらったり(笑)。あと、「お父さんとお母さん、恋愛しているときにどんなことがあった?」ということも訊きました。すると、初デートのときはいつも大雨だったそうなんです。「遊園地に行く予定だったのに、急にゲリラ豪雨が降ってきて、最悪だったけど今はいい思い出だ」って笑っていました。
―― なるほど。その情景が曲中の“雨音”に通じているのですね。
そうなんです。そこから<雨音さえも 2人を抱きしめていた>というフレーズが生まれました。あと、父と母を見ていると、正直いろんな困難があったと思うんです。仕事で大変な時期があったり、僕らが生まれたり、震災が起こったり。でも、父は、「自分の選んだ道だから、ツラかったことも含めて、今は幸せなんだ」と言っていて。だからこそ<感情の嵐も We both think alike 2人で選ぶ道さ>というサビにしたんです。
―― <咲き終えたとしても We both think alike 一緒さ。>というフレーズも、説得力があります。
父と母に、「死ぬのって怖い?」とも訊いてみたんです。すると、「年を重ねて、死ぬ実感が湧いてくるにつれ、怖くなくなってきたな。逆に、動けるうちに、まだ見たことのない景色を見に行きたいという思考になる」と言っていて。そういう死に対する考え方も、歌詞に反映しました。<散る日の悲しみも We both think alike 美しいと呼んでみようか>というフレーズもそうです。
―― ご両親の在り方からも大きな影響を受けた1曲だったんですね。
大事なベースになりました。この曲ができたのが今年の1月なのですが、昨年末に家族で山に行ったんです。そのとき、父に久しぶりに踏み込んだ質問ができたことは大きかったです。「ふたりとも、等身大の恋愛をしてきたんだな。すごくいいな」と思いました。あと、父と母は性格がものすごく似ているんです。そこがタイトルの「We both think alike」に繋がっています。
―― では、宮世さんが今作で、とくに「書けてよかった」と思うフレーズを教えてください。
今作には、いろんなジャンルの曲があるので、ひとつの歌詞というより、“それぞれ違う花を持っていて、異なるいいところがある”というテーマそのものを、大事にできてよかったです。まわりを見ていても、「みんなに合わせなきゃ」という気持ちの方が多いなと感じるのですが、いろんな“花=ひと”がいて、この世界は輝いているから、自分の色を見つけて、人生という旅に出てほしい。どの曲も、そういう思いで作りました。
―― 最後に、宮世さんにとって、歌詞とはどういう存在ですか?
歌詞は一生寄り添ってくれる、僕のからだの一部。歌詞のおかげで、今の自分が生きているところもあります。何か選択をするときに、一歩前に押してくれたり。新しい思考をくれたり。心臓や脳と同じくらい大事な器官のような感覚です。
