こんな鈍臭い奴の手をまた君は握っている。
高橋優
こんな鈍臭い奴の手をまた君は握っている。
僕が曲を書くときに一番大事にしている気持ちって なんか…洋服屋さんで好みの服とか、良い色の靴とか 被ったことのない帽子を見つけた瞬間に生まれる 「何これ!」っていう感覚なんですよね。 キュンッ…!みたいな(笑)。 (歌ネット・高橋 優インタビューより) だから、聴いてくれたひとの心にも「キュンッ!」という気持ちがたくさん生まれてほしい。そう語ってくれたのは、2018年10月24日に6thアルバム『STARTING OVER』をリリースした“高橋 優”です。今日のうたコラムでは収録曲から、まさにわたしたちの日常に隠れている「キュンッ!」を教えてくれるような新曲「非凡の花束」をご紹介いたします。 つつがなく今日やるべきことをやって家に帰る 食事に誘われたらそこにもちゃんと顔を出す 全部終わったら遅い時は午前3時4時5時6時7時 あんまり寝れないまま明日も頑張らなきゃな 家に帰ったらひたすら眠るだけって歌が好きだけど いまから電源切って家でひたすら寝たらどうなるのかな たとえばこのまま部屋から出ないで今日を過ごしたら 誰か困るかな とか思いながらいつも支度してる 「非凡の花束」/高橋優 優しいピアノの音で幕を開け、肩肘張らない歌声が響く冒頭。まず描かれているのは、一見“平凡”に見える日常生活です。ここからは一人の人間の性格や生き方が伝わってきますよね。毎日、淡々と粛々と<今日やるべきことをやって>問題なく一日を終え、疲れていても人間関係を閉じず<食事に誘われたらそこにもちゃんと顔を出す>真面目さ。 頑張りすぎて、帰る時間が<午前3時4時5時6時7時>といくらでも遅くなってしまう不器用さもあります。だけど本当は<家に帰ったらひたすら眠るだけって歌が好き>で、たびたび“それができたらなぁ…”と想像を膨らませるのでしょう。ちなみに、登場する“歌”とは、浜田雅功(ダウンタウン)と小室哲哉による音楽ユニット“H Jungle with t”のこの曲でしょうか。 流れる景色を必ず毎晩みている 家に帰ったらひたすら眠るだけだから ほんのひとときでも自分がどれだけやったか 窓に映ってる素顔を誉めろ 「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」 この歌を聴いて主人公は<自分がどれだけやったか 窓に映ってる素顔を誉め>ながら日々、闘っているような気がします。だからこそ、本来なら「疲れた」とか「しんどい」とかネガティブな声が漏れそうなところ、そんな言葉さえ吐かないのです。そして最終的には“まぁ…今日も頑張るか”と<支度>をする<いつも>に行き着くのでしょう。 だから僕と会う時くらいメイク気にしなくていいよって言うと それは逆だよって言って少しムッとする君が可笑しくて 必死こいて汗かいてベソかいたことは1回も無いみたいに すまし顔の君の手をなんも言わないで握りしめる 「非凡の花束」/高橋優 さて、続く歌詞では<僕>と<君>が登場するのですが、先ほどの一見“平凡”に見える生活を送っているのはどちらなのでしょうか。<僕>が自身のことを綴ったとも、そばで見つめ続けている<君>のことを綴ったとも考えられますね。ただ、前者だとしたら<君>はどこか<僕>に似ていますし、後者だとしてもここまで<君>の生き方をわかっている<僕>もまた<君>に似たところがあるのでしょう。 そんな似たもの同士の<君>へ。どんな忙しくても<僕と会う時>こそ丁寧にメイクをしたいと思ってくれる<君>へ。<必死こいて汗かいてベソかいたことは1回も無いみたいみたいにすまし顔>だけど、実は影で<必死こいて汗かいてベソかい>て頑張っている<君>へ。<僕>は<なんも言わないで>手を握り締めて、この歌を捧げます。 子供が産まれたり 初めて笑ったり 歩きはじめたり 手を握りあったり 見飽きた景色の中に隠れてる特別な今日が満ち溢れてるよ 記念日じゃないけど 君に花束を いい匂いするでしょ いつもありがとう なんでもない日を 歩いてくれてる 君のなにもかも 愛してる 「君が頑張ってるところをずっと見てるよ」なんて 優しく言う輩にコロッと落ちていきもしないまま かたや前髪を切ったことにもろくに気づきやしない こんな鈍臭い奴の手をまた君は握っている 「非凡の花束」/高橋優 <僕と会う時くらい>…という歌詞から察するに、まだ<僕>と<君>は結婚しているわけでも、実際に<子供が産まれた>でもないのでしょう。でも<なんでもない日を 歩いてくれてる 君>が素敵な未来予想図を描かせてくれるのだと思います。逆に言えば、素敵な未来予想図を描ける<なんでもない日>はいつだって<特別な今日>なのです。 一方で「君が頑張ってるところをずっと見てるよ」なんて優しく言う輩にコロッと落ちていかずに<僕>の手を握っている<君>もまた、わざわざ口にしなくても自分のことをいつも見ていてくれる<僕>の“本当の優しさ”を知っています。そんなひとがそばにいてくれる<なんでもない日>はやはり<特別>なのではないでしょうか。つまりお互いに、二人でいれば<なんでもない日が 特別に変わる>のでしょう。 記念日じゃないけど 君に花束を いい匂いするでしょ いつもありがとう なんでもない日が 特別に変わる 君のなにもかも 愛してる 「非凡の花束」/高橋優 そして、花束から香る<いい匂い>は、たくさんの<ありがとう>と心からの<愛してる>の証です。一見“平凡”に見える日常生活でも、そのすべては<君>と生きていられる<特別>な日。二人なら<見飽きた景色の中に隠れてる>いろんな「キュンッ!」に出会える。きっとそんな一日を積み重ねていくごとに「非凡の花束」は大きくなり、香りを増し、心を彩ってゆくのです。 サビのラストで、高橋 優が思い切り放つ<愛してる>にも「キュンッ!」とする新曲「非凡の花束」を是非、あなたにとって一番大切なひとを思い浮かべながら聴いてみてください…! ◆紹介曲「非凡の花束」 作詞:高橋優 作曲:高橋優 ◆6th アルバム『STARTING OVER』 2018年10月24日発売 通常盤 WPCL-12940 ¥3,000(税抜) 期間生産限定盤 WPZL-31518/9 ¥5,500(税抜) 数量生産限定盤 WPCL-12941 ¥4,500(税抜) <収録曲> 1.美しい鳥 2.ストローマン 3.シンプル 4.虹 5.若気の至り 6.いいひと 7.aquarium 8.ありがとう 9.Harazie!! 10.ルポルタージュ 11.キャッチボール 12.ロードムービー 13.leftovers 14.非凡の花束 15.STARTING OVER 16.プライド