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  • 井上苑子
    過去があって、今がある。
    過去があって、今がある。

    井上苑子

    過去があって、今がある。

     2023年3月31日に“井上苑子”がEP『23.3.31』をリリースしました。2022年2月に単発ドラマとして放送された前作の見逃し配信では異例の200万回超えの再生数を記録した作品。「ABEMA」・「ABCテレビ」連動スペシャルドラマ『今夜、わたしはカラダで恋をする。』そのSeason2の第1話と第3話の主題歌の書き下ろしを担当し、2023年2月25日に先行配信したシングル「かさぶた」を含めた全4曲が収録されたEPとなっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“井上苑子”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作『23.3.31』にたどり着くまでの心の軌跡のお話です。自分の長所にも短所にも向き合って、もっと自分を知って。そうやって出来上がった今の井上苑子の言葉を、歌詞と併せて受け取ってください。 生活の一部を切り取った歌が好きで 誰もが想像できる歌詞が好き。 頭を捻って難しい言葉を並べても 私らしくなくて嘘になる。 そんな“らしさ”に すぐに評価をつける世の中には見向きもせず 今は自分の道をただまっすぐ歩いている途中。   私にはいくつかのトラウマがあって まだ青臭いニキビ面のころ言われた言葉がいちばん大きいものになった。 今思えばあの頃はとてつもなく敏感だったから、とにかく全部に反論をして“天邪鬼だね”って言われた(今も変わっていないところもあるけど)。 反論するときの言葉は多分、支離滅裂で説得力に欠ける言葉だったが、その行動だけで自分を守っていた。 私が放ったガタガタで切るにも切れないような刃は、磨きがかかって洗練された強烈な刃に変わって自分に返ってきて、それが今でも跡に残っている。 ブーメランってやつ。 自分の行いの結果である。   そもそもの性格的にはとてもポジティブなタイプなのにネガティブになってしまっていた思春期だったが、 その頃は根拠のない自信もあって、 自分なら大丈夫だと自己暗示したり、 人に頼ったりもして、なんとかやっていたし 楽しかったことも沢山あった。   だから、そのときのことを悔やんでいないし、 私がああでなければ、今がないから。 今周りにいる大切な人に出会えてないと思うと そのときの私を否定しないし、なんなら愛おしくさえ思う。   酷かったなぁと思う自分の細々とした性格に気づいた先で、どんな言葉や行動をとってみるか。 それが大事だと思った。   自分の長所ってなんだろう。 どうしたらそこを強みにして戦えるのか。 弱点ももちろん考えた。自分と向き合った。自分を知った。 そんなことを日々気にしていたら ポジティブな今の私が出来上がった。   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   「23.3.31」は今の私を詰め込んでいます。 恋の曲ばかりですが、 考え方が変わると、もちろん書く曲も変わっていくと思います。 昔の自分を掘り起こして書いた箇所も、 今の自分と向き合って出てきた言葉もあります。 今は今の私。 過去があって、今がある。 きっとこの先、また新たに目標ができて、 “なりたい自分”に向かって変わっていくと思うので 「23.3.31」で 今の井上苑子を感じていただきたいです。 <井上苑子> ◆EP『23.3.31』 2023年3月31日発売 <収録曲> 1 かさぶた 2 陽だまり 3 シアワセ 4 となりあい  

    2023/04/25

  • パン野実々美
    私になるってなんだろう?
    私になるってなんだろう?

    パン野実々美

    私になるってなんだろう?

     2023年4月26日に“パン野実々美”が配信シングル「私になれ」をリリース!高校卒業後、アーティストとして新たな第一歩を踏み出す、2023年第一弾楽曲。10代ならではの青春の瑞々しさと熱量を秘めたバンドサウンドで、新たな挑戦を迎える自身とあなたの背中を押す楽曲に仕上がっております。共に数々のアーティストや作品を手掛ける人気ボカロ Pである“buzzG× ナノウ”の豪華タッグによる楽曲提供!    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“パン野実々美”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「 私になれ 」にまつわるお話です。歌活動を始めてから、今にいたるまで軌跡と気持ちの変化を明かしてくださいました。今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください…! 高校を卒業してから1ヶ月半くらいが経った。 卒業したことにまだまだ全然実感が湧かないし、今でも心は高校生のまま。 校則に縛られてた生活が終わり、制服を着ることもなくなって、ずっと憧れてた東京での一人暮らしを始めた。生まれて初めて環境が変わり、こんなにも外の世界は広いのかと実感した。   歌活動を始めたのは、コロナ禍でやることもなく手持ち無沙汰だった高校1年生の春休みだった。最初は暇つぶし程度に思っていたが、歌を聴いてくれる人が日に日に増え、だんだん活動に対して本気で向き合うようになっていった。 そんな日々を経て、卒業という大きな節目を控えた時期にスタートしたのがこの楽曲「私になれ」の制作だった。   私になるってなんだろう? 私がなりたい私ってなんだろう?   誰かと比べ続けて仕舞い込んだ 心からの歓び もう一度、あなたにあげる   という歌詞は、密かに抱いてた劣等感で、心から歌うことを楽しめてなかった活動初期の時から、ありのままの自分で良いんだって気づいて振り切ることが出来るようになった今への変化を表している。   あの頃の自分を超えるまで   という歌詞は、理想を夢みてばかりだった子供の頃の私とはお別れをして、その夢を追いかける私になりたいという想いが詰まっている。   小さい頃からずっと歌うことが好きだった。 将来の夢について聞かれると、なんの疑いもなく胸を張って「絶対歌手になる」と答えていた。 何も知らなかった子供の頃の私と今、初めて外の世界に出た私。   これから知ること、出会う人、見る光景、 すべてがこれからの私を作っているのだと日々感じる。   今はまだ、なりたい私を探す旅がはじまったばかりかもしれない。 でも、ここからが私の人生の本当のスタートだと思っている。 この楽曲と共に、新しい「パン野実々美」としての第1歩を踏み出していきたい。   <パン野実々美> ◆紹介曲「 私になれ 」 2023年4月26日リリース 作詞:buzzG 作曲:buzzG 編曲:ナノウ ◆配信サービス一覧 ※4/26(水)0:00~アクセス可能となります。 https://PannoMimimi.lnk.to/watashininare ◆MUSIC VIDEO ※4/26(水)21:00~プレミア公開 

    2023/04/24

  • 琴音
    実はつい最近まで聞かれると悩んでしまう質問がありました。
    実はつい最近まで聞かれると悩んでしまう質問がありました。

    琴音

    実はつい最近まで聞かれると悩んでしまう質問がありました。

     2023年4月19日に“琴音”がEP盤『君にEP』をリリースしました。前作ミニアルバム『君は生きてますか』以来約1年7か月ぶりとなるこのEPには、「君に」のほかに未発表の新曲2曲、今年1月に公開されたアニメ映画『金の国 水の国』の劇中歌として話題になった「Brand New World」「優しい予感」「Love Birds」3曲の全6曲が収録されます。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“琴音”による歌詞エッセイをお届け。今回は【前編】です。綴っていただいたのは、今作のタイトル曲「 君に 」にまつわるお話です。つい最近まで聞かれると悩んでしまう質問があったという彼女。その悩みを和らげることになったとある気づきとは…。今回は音声版もございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください…! 皆さんいかがお過ごしでしょうか。 この度、久しぶりに歌ネットさんで歌詞エッセイを書かせていただくことになりました。 実は私のブログ(すみっこ目せん)開設のきっかけにもなっている歌詞エッセイ、一方的に恩義を感じたりしております。 この頃は書いたものを音読するという新しい試みも始まったとのこと。 気の赴くままに書き連ねている身としては何だか小っ恥ずかしいところもありますが、何卒お付き合いいただければ幸いです。 琴音です。     さてそんな私ですが、先日4月19日に『君にEP』をリリースいたしました。   私自身言われるまで気づかなかったのですが、実に約1年7ヶ月ぶりのリリースとなるそう。   前作ミニアルバム『君は生きてますか』の時は19歳だった私も、いつの間にか21歳になっておりました。   思っていた以上の時間経過に驚きますが、その分多くの経験とただならぬ思いの詰まった作品に仕上がっています。   特に表題にもなっている「君に」という楽曲。   リリースが決まってからは色々な場でお話しさせていただく機会があり、話すことも何となく定まってきました。   資生堂アネッサのCMに使用されており、CMサイズとフルサイズの2パターンを録音している、なんて秘話めいた要素も今では言い慣れたものです。   ですが、実はつい最近まで聞かれると悩んでしまう質問がありました。   「特に気に入っている歌詞はどこですか?」という質問です。   もっと言えばこの曲に関わらず、提供いただいた曲について話す時は割と悩みがちです。   サラッと聞かれる質問なのですが、どうも引っかかってしまい無難に答えられません。   歌詞から思い起こされる情景もありますし、何ならレコーディングの際は一言一句歌い方やイメージを固めて臨むほどなのですが、いざ特にどこがと歌詞に言及されると呆けてしまいます。   提供曲である以上、歌詞の真意までは知れないにせよ、毎度その質問を投げられると自分の中になにも思い入れがないようで、(あんなに考えていたはずなのに…)と虚しくなっておりました。   そんな中とある取材を機に、「君に」の詞曲を担当された澤田かおりさんとの会話を思い出しました。   澤田さんご本人とは一度だけ直接お会いできる機会があったのですが、その時は曲の話よりほぼ雑談をしていました。   私からは専門学校を卒業し、志のあった友人達が次々と音楽家とは違う道に進んでいったこと。 今では連絡を取れる友人もごくわずかになってしまったことなどを話しました。   澤田さんは頷きながら、自分もそんな時があった、自分も音楽から離れていった人たちを悪く思っていたけど、大人になったら少しずつ考えが変わっていったと応えてくださいました。   些細な会話の中からも大人として経験を積まれた前向きさや優しさが垣間見え、澤田さんだからこそあの歌詞が書けたのだと感じました。   それらを思い出した時、私は誰かにこの曲を届ける側なのだと思っていた自身の間違いに気づきました。   思えば歌詞を書く作業は無の状態から言葉を紡いでおり、その根底には自身の体感した要素が根付いているのです。   ならば歌詞を見れば思い当たる節がある、までの私では真の意味で届ける側になることはできないのです。   その時から私は、この曲を通して教えてもらっている、という気持ちでいようと思い直しました。   自分から周りに向けて歌いつつ、自分自身もこの曲に教えられ、少しずつ大人になっていく。   そう考えると、冒頭の悩みも少し癒されました。   この話、エッセイを書き始めるつい1週間ほど前からのことです。   制作が終わってからも曲に対する気づきは得られるようです。   さて積もる話もございますが、最後に少し「君に」Music Videoのお話を。   そもそも私の楽曲は物語風MVが少なく、個人的には待望の作品でした。   更に贅沢にも菊池日菜子さんを始めとする役者の方々に出演していただき、その演技力を間近に体感することができました。   一方で歌唱パート撮影はというと、太陽光が大変強い上、花粉が飛びまくり潮風が四方から吹き荒れと、暗所大好きな花粉症ロングヘアには過酷な時間が流れました。   本編MVをご覧いただく際は役者さん方の演技力に感嘆しつつ、環境への恨めしさをひた隠す私も楽しんでいただければと思います。   いかがでしたでしょうか。 何かと思い出深いこの楽曲。 まだ聴いていないという方は是非、もう聴いたという方も是非、沢山聴いていただければ幸いです。     っはい! ということで今回はこの辺で終わります。 またどこかでお会いしましょう。 ご清覧ありがとうございました!   <琴音> ◆紹介曲「 君に 」 作詞:澤田かおり 作曲:澤田かおり  ◆『君にEP』 2023年4月19日発売 配信サービス一覧: https://jvcmusic.lnk.to/kimini_ep   <収録曲> 1. 君に 2. ライト 3. 波と海 4. 優しい予感 5. Brand New World 6. Love Birds

    2023/04/21

  • 日食なつこ
    夕闇絵画
    夕闇絵画

    日食なつこ

    夕闇絵画

     2023年4月5日に“日食なつこが”ミニアルバム『はなよど』をリリース。今作には、必ずしも明るく華やかではない、彼女らしい“春”を描いた7曲が収録されております。ストレートな思いや音があふれた、物悲しくも柔らかいコンセプチュアルな作品に。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“日食なつこ”による歌詞エッセイをお届け。今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 夕闇絵画 」にまつわるお話です。 思い出すのはまず、灰色。 空も街も地面もセメントを塗り込めたようなグレイ一色。   冬の終わりにしては珍しく高温多湿な気候の日で、スタジオを出た夕方のおもて通りは今にも雨に降られそうに暗く、家路を急ぐ小学生やスーツ姿の大人たちが忙しなく行き交っていて、そこにあなたは溶け込んでいた。   まわりの喧騒をよそにコンクリートの路上にそのまま腰を下ろして、重たげな曇り空をおだやかな顔で見上げながら、落ちてくる雨粒に向かってのんびりした動作で手のひらを差し出していた。濡れることはお構いなしで、誰かとその時間を共有するわけでもなく、少し楽しげな表情まで浮かべて、全ての風景の隅っこで、ひとり。   あなたの日常を垣間見たような気がした。あるいは触れてはいけない他人の秘密を偶然暴いてしまった時のような、そんな一種の後ろめたささえも覚え、私は気づかれていないことを祈りながらそっと目を背けかけた。   同時に、誰に向けたわけでもないにしてはひどく優しすぎるその表情は、常日頃この人が世界を見るときに浮かべるそれなのだろうと理解もした。   退屈な灰色の空、さして美しくもない街の片隅にすら、この人の目は何かを見出していて、それが音となり、絵となり文字となり常にほとばしっていて、だからこんなさもない道端においてでもこれほど満たされた表情で在れるのだ、と。   その視線の奥にある思想を覗き見たくなった。雨粒に手を伸ばした心情について、その口から子細を伺い知りたくなった。なのに声をかけることはこれ以上なく無粋な行いに思えた。それほどにあなたの成す空間は周囲の慌ただしさから完璧に隔絶され、そして完成されていた。   それはさながら、夕闇の街角に置き忘れられた1枚の絵画。 結局目を離すことのできなかったその横顔は、今も褪せないまま記憶に強く焼き付いている。   なんともなしにあなたは世界に存在しているだけなのかもしれない。 でも、その風景に立ち入ることが許される者はきっと限られている。 そして私は、そちら側ではない。   機材を車に積み終えた仲間たちに声をかけられ、あなたはふいに自我を取り戻して立ち上がり、やはりゆったりした挙動と穏やかな笑みを伴ったままで「では」と言って去っていった。   三叉路の向こうに消える背中。ぬるく湿った弱い風。夕刻を告げるサイレンの残響。「では」のその次はあるのだろうか? 後に残るは、只々メランコリックな、グレイオレンジ。   覚えておきたい景色は多くはない。少なくとも、あなたが誰にも知られず道端に座して雨粒を受け止めていたあの瞬間を超える絶景なんて、そうそうありはしないのだ。   <日食なつこ> ◆紹介曲「 夕闇絵画 」 作詞:日食なつこ 作曲:日食なつこ ◆ミニアルバム『はなよど』 2023年4月5日発売   <収録曲> 01. やえ 02. ダム底の春 03. 夕闇絵画 04. 幽霊ヶ丘 05. diagonal 06. ライオンヘッド 07. 蜃気楼ガール

    2023/04/20

  • 藤川千愛
    ロギア系は手ごわい
    ロギア系は手ごわい

    藤川千愛

    ロギア系は手ごわい

     2023年4月12日に“藤川千愛”がミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』をリリースしました。今作には、4月スタートのTVアニメ『マイホームヒーロー』オープニングテーマの「愛の歌」の他、全7曲が収録。初回限定盤には1月7日に行われたワンマンライブの映像が収録されたBlu-rayが付属され、12曲のライブ映像を堪能することができます。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“藤川千愛”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 君の匂いは鎮静剤 」にまつわるお話です。彼女がとある匂いを嗅ぐと思い出してしまう忌々しい記憶とは…。みなさんにとってトクベツな匂いってありますか? ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 『チッ』… 思わず舌打ちが出てしまった。音にならず誰も気が付かなかったのがせめてもの救いだ。あたしは誰かのささやかな幸せを邪魔する嫌な奴に成り下がらなかったことに少しだけ安堵した。   新幹線が駅を出ると間もなく、通路を挟んだ隣の乗客が燻製卵を食べ出したのだ。もちろん、駅弁やおつまみは旅の醍醐味である。それを否定するつもりは微塵もない。かく言うあたしだって誘惑に負けて、良心の咎めなど蹴飛ばし、ある時は551のぶたまん、ある時はくくるのたこ焼きで、東海道新幹線内半径5メートルの匂いテロリストになった過去があることは否定しない。   実を言うと、私には苦手な匂いがあるのだ。 その匂いを嗅ぐと条件反射的に身構えたり、突如として落胆したり、あるいは今回のようにちょっとした悪態をついてしまうのだ。理由もはっきりしていて、その匂いを嗅ぐと思い出したくもない忌々しい記憶が蘇るからだ。   これをプルースト現象というらしい。特定の匂いを嗅ぐと、その当時の記憶やエピソード、感情が鮮明に思い出される現象のことをそう呼ぶそうだ。フランスの文豪、マルセル・プルーストが書いた『失われた時を求めて』という作品で、主人公が紅茶にマドレーヌを浸したときの匂いで、幼いころの母との記憶が蘇ったことからそう呼ばれているらしい。   私のまわりだと、音楽を聴いてその当時の記憶が蘇る経験をしている人はそこそこいるのだが、それが匂いになると珍しがられたりもする。   制服が可愛いという理由で選んだ高校は、自宅からは結構な距離があり、私は3年間、自転車を必死に漕いで通学した。必死だなんて大げさに書いたのには理由がある。とある区間で、私は息を止めて、それこそ人目もはばからずに、全身全霊の立ち漕ぎで走り抜けなくてはならなかったのです。この区間限定だったらボルトとだって良い勝負ができた気がする。そのくらい急がなくてはいけない理由があったのです。今更だけど、あたしの高校時代の成績が芳しくなかったのは、きっと朝からここでエネルギーを使いすぎていたのが原因だったんじゃないだろうか。そうに違いない。   漫画や映画では、凶暴な犬を飼っているお宅の前を通るときに、犬に見つからないようにこっそり、あるいは急いで通り抜けるが、結局は犬に吠えられたり、噛まれたりってシーンがあるけど、あたしは毎朝がこんな具合で戦いだったのです。しかも、あたしの敵は凶暴な犬ではなく…、匂い。さながらワンピースで言うならば、動物系(ゾオン)ではなく自然系(ロギア)だったから、それはそれは厄介なのです。   都会では考えられないけれど、当時の田舎は、家の敷地でゴミを燃やすことが黙認されており、なんならそれが当たり前ってくらい日常で、あたしの鬼門ともいうべきある区間のあるご家庭では、ビックダディもびっくり! あんたん家いったい何人家族なの?! って言いたくなるほど大量のごみを毎朝毎朝、ちょうど私の通学時間に燃やし続けたのです。   時空が歪んでいたのか春も夏も秋も冬も風向きはちっとも変わらず、モクモクとした煙が毎朝毎朝あたしを包み込んだのです。ZAGZAG(中国地方を中心に店舗を展開するドラッグストア)で買ったお気に入りのシャンプーの香りも、ZAGZAGで買ったやさしい柔軟剤の香りも、この区間を通り過ぎた後には、燻されたスモーキーな香りにとって代わられました。   たかが匂いかもしれないが、年頃の女子高生にとっては大問題で、七夕の短冊に『あの家の目覚まし時計がすべて壊れますように』と書きそうになったくらいです。 今でもあのお宅は大量のごみを燃やしているのだろうか…。あたしのような燻された女子高生がもう増えていないことを祈ります。     そんな理由で、燻された匂いを嗅ぐと、今でも3年間の忌々しい記憶が鮮明に蘇ってくる。どうか賢明なるファンの皆様、あたしを見かけたら、近くで燻たまや燻製チーズ、いぶりがっこを食べるのは控えてください。   もちろん、悪い記憶だけでなく、犬の肉球の匂いや、ミモザの花の香りなどで、ポジティブな記憶が呼び覚まされることも頻繁にあります(この話はまたいつかどこかで)。そんなこともあり、香りに敏感?なあたしは、いつか香りにまつわる楽曲を作ろうと思っていました。   そうして生まれたのが「君の匂いは鎮静剤」という楽曲です。現在進行形の恋をしているあなたに聴いてもらいたい曲です。   <藤川千愛> ◆紹介曲「 君の匂いは鎮静剤 」 作詞:藤川千愛 作曲:近藤世真(Elements Garden) ◆ミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』 2023年4月12日発売   <収録曲> 1. 愛の歌 2. 君の匂いは鎮静剤 3. リゲル 4. ちゃんとした人不適合者 5. 面倒な女 6. スローモーション 7. なにも忘れるわけじゃない  

    2023/04/19

  • Lilubay
    私だけ剥がれたままのマニキュア。
    私だけ剥がれたままのマニキュア。

    Lilubay

    私だけ剥がれたままのマニキュア。

     2023年3月1日に“Lilubay”が2nd EP『Home away from home』をリリースしました。本作品は旧バンド名addからLilubayに改名してバンドとして新たな一歩を踏み出し、その方向性を示した全5曲が収録。作詞はVoタグチハナ、作曲は西村コン、タグチハナが担当し、全曲セルフプロデュースでの制作となっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Lilubay”のタグチハナによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 mani・cure 」にまつわるお話。容姿にこそ表れる心模様。あなたの爪は今、どんな状態ですか…? 今回も音声版がございます。ぜひ本人による朗読でもエッセイをお楽しみください。 ギターを弾くと、右手の人差し指と親指だけどんどん剥がれていくマニキュア(かといって定期的に通う自信がないのでできないジェルネイル)。   最近はもう、ちょっとくらい剥がれていても気にならなくなってきてしまった。   思わぬタイミングで他人様の目の前に手を伸ばさなければいけなくなった時初めて、あぁなんでこんな…!ちゃんとしておけばよかった…!と、深い後悔と苛立ち。 私の怠惰によって勝手に失望されている可哀想な爪。   恋をするとうってかわって、細かい全てが気になったりもする。髪の毛もメイクもネイルも、恋の重量に比例して気合が入る。いつどこでばったりと会ってもいいようにと一縷の望みのためにも全力をだす。そんな時期もある。   そういう細かいところに、内側の波って現れる。   失恋して、何かを変えたい、進みたいと思っていても、後ろ髪を引かれて動けない…そんな経験をしたことがある人も少なくないはず。   進んだら本当にこの恋が終わってしまうのだ、と怖くなるあの気持ち。   心のどこかで、まだ、もしかしたら、とうじうじやってる時間って本当にダサいなぁって、わかっちゃいるけれどやめられない。   携帯をひらけばすぐ見えちゃう時代になっても、他人の気持ちはわからない。 誰にも気付かれないように抗いたい。   変わっていく街と離れていく心、 私だけ剥がれたままのマニキュア。 もうちょっとだけ、このままで。 <Lilubay・タグチハナ> ◆紹介曲「 mani・cure 」 作詞:タグチハナ 作曲:西村コン・タグチハナ ◆2nd EP『Home away from home』 2023年3月1日発売   <収録曲> 1. mani・cure 2. Home away from home 3. わがままな私と、子どもみたいな君 4. Knock 5. rainy day

    2023/04/18

  • idom
    ここに僕の好きなモノと、全力の愛情を注ぎ込んだ。
    ここに僕の好きなモノと、全力の愛情を注ぎ込んだ。

    idom

    ここに僕の好きなモノと、全力の愛情を注ぎ込んだ。

     2023年4月12日に“idom”が2nd EP『EDEN』をリリース!よりidomらしさにこだわって制作したという今作。リード曲「EDEN」は、楽曲制作風景がidomのTikTokで公開されており、ChillでエモいけどノれるChill Houseな楽曲に仕上がっております。他にも様々な魅力を詰め込んだ2nd EP。idomの新たな魅力を感じさせてくれること間違いなし!    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“idom”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。自分自身を振り返り、自身にとってのクリエイティブについて考えた先で、生まれた今作『EDEN』。全4曲それぞれのテーマと、信じたい大切なモノとは…。ぜひ今作と併せて、エッセイをお楽しみください。 いつからだろう。 今日の曜日を忘れてしまうようになったのは。   いつからだろう。 世間の流れについていけなくなったのは。   いつからだろう。 創ることが楽しくて眠れなくなったのは。   気づけば四半世紀を生きていて。 季節は巡り、身を置く環境も目まぐるしく変化した。 音楽を始めてから約3年。この生活に慣れたのかと言われるとそうでもない。未だに自分の居場所が分からなくなることもある。だから少し自分自身を振り返ってみた。   飽き性な僕は、いつも難しくて目新しいモノを好んだ。 「これ面白そうだな」 沢山のそれを突き詰めて、集めた人間が僕だ。 とことんワガママで、妥協ができない。 迎合することに最後まで抵抗しようとするので、天邪鬼だなんて言われることも多い。 扱いにくい人間かもしれない。 けれど、それが僕だ。   自分自身を曲げて成し遂げたことに対して後悔することは幾度とあったが、自分らしくあることを貫いて失敗したことに対して後悔したことはない。それを押し通す事に責任や肉体的苦痛は伴えども、それすらも喜びと思えるのが僕にとってのクリエイティブだ。   そんな僕が、自分らしく居られる場所を作る事にした。 場所の名前は「EDEN」 ここに僕の好きなモノと、全力の愛情を注ぎ込んだ。   1.EDEN《純愛》 2.Memories《別離》 3.Control《自尊》 4.Loop《日常》   今回のEPに収録している全4曲のそれぞれのテーマは異なるが、共通しているのは自分の大切なモノを信じるということだ。   「EDEN」では混じり気のない純粋な愛を信じ、 「Memories」では大切な人との思い出を信じ、 「Control」では自分の才能と欲求を信じ、 「Loop」では当たり前の日々の大切さを信じる。   自分自身を見つめ直し、信念を確固たるものとしようする姿は、今の僕自身を反映しようとした結果だ。 作詞・作曲・映像編集・アニメーション制作・ジャケット構想など、リリースにおける様々なクリエイティブをディレクションすることも、時間を忘れて没頭した。自分の信念と真っ直ぐに向き合うことは楽しくて仕方がない。   今作「EDEN」は僕にとって、創作の理想郷へと一歩近づくための作品となった。 こんなほんの少しワガママな僕の世界が沢山の人に愛されたなら、僕はきっとこれからも自分を信じられる気がしている。   idom ◆2nd EP『EDEN』 2023年4月12日発売 初回生産限定盤 SECL-2855~2856 ¥1,800(税込) 通常盤 SECL-2857 ¥1,400(税込)   <収録曲> 1.EDEN 2.Memories 3.Control 4.Loop 5.GLOW -English ver.- 

    2023/04/17

  • ゴホウビ
    恥ずかしいって、幸せな瞬間の伏線なのでは?
    恥ずかしいって、幸せな瞬間の伏線なのでは?

    ゴホウビ

    恥ずかしいって、幸せな瞬間の伏線なのでは?

     男女混声豆腐メンタル4人組バンド“ゴホウビ”が、2023年4月14日にデジタルシングル「一糸まとわぬアイを見せてよ」をリリースしました。同曲はカンテレ 木曜深夜ローカル連ドラ『全ラ飯』オープニング曲。“ひれ伏せ常識世間体よ”がテーマとなっており、ゴホウビらしい楽しく明るいナンバーに仕上がっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“ゴホウビ”のスージーによる歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け!今回が最終回です。綴っていただいたのは新曲「 一糸まとわぬアイを見せてよ 」にまつわるお話。ドラマ『全ラ飯』の台本を読み、改めて“恥”と向き合ってみたとき、感じたことは…。ぜひ今作の歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 恥ずかしいって、幸せな瞬間の伏線なのでは?   4月13日から始まった関西テレビの木曜深夜ドラマ『全ラ飯』のオープニング曲を担当させていただくことになり、楽曲を書き下ろすにあたって台本を読ませてもらったとき、そう思ったんです。   恥って聞くと、とにかくわたしにとっては嫌な思い出ばかり。小さいところでいうと漢字の読み間違え(イヤ勉強せい)、大学生時代、レストランでホール担当のバイトをしていた時には最初に持って行く水をお客様の前で初日に連続3回こぼすなど。特に失敗に付随する恥のエピソードは数えたらキリがありません。   恥をかいた記憶は脳から抹消してしまおう。いつしか、恥をかきそうなところは極力避けて日々を過ごすようになっていました。   自分のコンプレックスに関わることなら尚更。人に秘密にしていることを晒して恥をかくくらいなら、人前では大人しくしていよう。そう思うのが一般的だと思います。時に恥は心に深い傷をつけてしまうくらい、取り扱いにくい感情だと思うのです。   このドラマに出てくる主人公たちも、それぞれ秘密を抱えて生きています。一見とてもコミカルな作品ですが、物語が進んでいくうちにその秘密の核に迫っていくのです。   自分自身振り返ってみると、心が揺れるとき、身体中の毛穴が細胞がブワァッと開くとき、「恥ずかしい」が関係していることが多々。でも大体その感情が湧いた瞬間にその物事を拒絶。向き合うなんてしなかった。   あのときもし「恥」の向こう側に踏み入れていたら、もっと面白いことが待っていたかもしれない。穏やかに生きていたら訪れないような未来が待っていたかもしれない。自分の知らない自分を知ることができるチャンスだったかもしれない。人目なんて気にせずに、思い切って飛び込んでみればよかったかな。過ぎたから言えることでしょうが、そう思ったんです。   「恥ずかしい」ことは決して悪いことではないのかも。   そう考えると、未来に対して少し気持ちが楽になることができました。     今回はゴホウビの新作「一糸まとわぬアイを見せてよ」のコラムなんですが、とにかく頭空っぽにして、心裸にして聞くのが一番“感じる”曲になっていると思います。   “殻を破る”をテーマにメンバーそれぞれプレイしたり、ドラマ『全ラ飯』のオープニングということでとにかくポップとキャッチーとスパイシーがアクセル全開なので、そちらも物語ともに是非注目してみてください!   3ヶ月連続で、コラムを担当させていただくなんて初体験でした。   拙い文章だったと思いますが楽しんでもらえたでしょうか。。   UtaNetコラム担当者様、お世話になりました。 またよかったら書かせてください!   ゴホウビの音楽もあなたの日々のささやかな彩りのひとつになりますように。 いつかライブでお会いできますように。   ありがとうございました。ゴホウビのvo.&key.スージーでした!   <ゴホウビ・スージー> ◆紹介曲「 一糸まとわぬアイを見せてよ 」 作詞:スージー・むんちゃ・405 作曲:スージー

    2023/04/14

  • 日食なつこ
    ダム底の春
    ダム底の春

    日食なつこ

    ダム底の春

     2023年4月5日に“日食なつこが”ミニアルバム『はなよど』をリリース。今作には、必ずしも明るく華やかではない、彼女らしい“春”を描いた7曲が収録されております。ストレートな思いや音があふれた、物悲しくも柔らかいコンセプチュアルな作品に。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“日食なつこ”による歌詞エッセイをお届け。今回は第2弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 ダム底の春 feat.Sobs 」にまつわるお話です。 人に花を贈るのにハマっていた時期があった。 飲食物や雑貨の贈り物も選ぶのはもちろん楽しいけれど、花は人のために選ぶという気持ちが特別に強くこもる気がする。自分自身のために花を買う習慣がない、ということもあるのかもしれない。   用がなくても花屋の前を通りがかるとちょっと立ち寄って、この花とこの花が並んでる、じゃああの人に贈るイメージで、こんな雰囲気で、ここをこうして…なんてブーケ作りの構想を繰り広げ出すこともある。   はなから買う気が無いので店側からしたらとんだ迷惑な冷やかし客だし、いきなり妄想の対象に据えられる相手もそうと知ればさぞ気色悪かろう、ということは一応きちんと自覚しているつもりなのでひとつご容赦いただきたい。   これはただの自己満足なイメージ遊び。ここから何か面白い曲や企画を思いついたりするかも…なんてことまで考えていたりもして、本当に自分のため。ひとしきり妄想を散らかしたら、あとは満足げな薄ら笑いを浮かべ店を立ち去るのである。 こうして書いてみると改めて誰も得をしない謎行為であることが分かる。気をつけたい。   でもあの時は、ちゃんと贈りたい相手がいた。 実際このあと会いに行って、おめでとう、いつもありがとう、よかったらこれ、という言葉と共に花束を手渡そうと、現実的な計画を立てた元で、あの日私は花屋に立っていた。   祝い事だった。だから華やかで元気のあるブーケにしようと、バケツから花を抜いては挿し、手持ちの花と組み合わせては戻し、長いこと頭を捻ってそれを作った。ラッピングもきちんとしてもらった。正直、かなり高かった。でもよかった。予算を大きく上回った割にはすぐ枯れて捨てられる運命にある消えモノでも、相手のことを考えれば価値は余りあった。   春の嵐が吹き荒れるひどい天気だった。 車が目的地に着こうかという頃になり、ふと窓の外に異様な明るさを見留めて、私は助手席側のウィンドウから横目で外を見やった。 花だ。花が行列になっていた。大きな花、高そうな花、立派な飾り付きの花…。 片田舎のがらんと開けた僻地に突然それは現れた。その場所にはおよそ不釣り合いな色彩感で、豪奢なスタンド花の数々が、それを受け取る主がいる家屋の入り口へと見事な列を成していた。 みんな考えることは同じだった。私が慕う相手は、私以外からも慕われる存在だったのだ。   助手席に目をやる。あれほど気持ちと時間をかけて作った花束が、泣きたいほど粗末なものに見えた。殴りつけるような風雨。整地されたてで遠目からでも分かるくらいぬかるんでいる駐車場。迷いは1秒にも満たなかったかもしれない。出しかけたウィンカーを戻し、アクセルを踏み直す。巨大な花たちが残像の塊となって後ろへ流れる。花を贈りたかった相手、そして大勢からそれをまさに今祝われている最中であろうその場所を、私は一直線に通り過ぎた。   薄暗い車内で、助手席に寝かせた花束だけが場違いの明るさで主張をし続けていた。 弔わないと。このまま持ち帰ったらあの駐車場の泥みたく、きっとひどくぬかるんで傷になる。 山奥へと車を走らせた。どうしようか、何をしたいのか、考えもついていなかった。 不意に晴れ間が現れ、にわかに射した陽光で雨に濡れた山の草花がはち切れそうなくらい輝いていて、足の踏み場もないくらい、そこは春だった。   車を停める。花束を掴んで外に出る。眼前には、新鮮な雨水で満たされた無人のダムが広がっている。渡せなかった花も、存在させられなかった愛も、ひといきに飲み込んでくれそうな美しいグリーンブルーだった。   <日食なつこ> ◆紹介曲「 ダム底の春 feat.Sobs 」 作詞:日食なつこ 作曲:日食なつこ ◆ミニアルバム『はなよど』 2023年4月5日発売   <収録曲> 01. やえ 02. ダム底の春 03. 夕闇絵画 04. 幽霊ヶ丘 05. diagonal 06. ライオンヘッド 07. 蜃気楼ガール

    2023/04/13

  • 藤川千愛
    もうひとつの愛の歌
    もうひとつの愛の歌

    藤川千愛

    もうひとつの愛の歌

     2023年4月12日に“藤川千愛”がミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』をリリースしました。今作には、4月スタートのTVアニメ『マイホームヒーロー』オープニングテーマの「愛の歌」の他、全7曲が収録。初回限定盤には1月7日に行われたワンマンライブの映像が収録されたBlu-rayが付属され、12曲のライブ映像を堪能することができます。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“藤川千愛”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、収録曲「 愛の歌 」にまつわるお話です。彼女が友人との会話のなかで触れた、ひとつの”愛”とは…。みなさんは<愛してる>って何だと思いますか? 友人と喫茶店で待ち合わせをしていると、先に来ていた友人がひどく落ち込んでいる様子だったので理由を聞いてみた。すると友人は膝の上で気持ちよさそうに寝ている仔犬を撫でながら『人間と犬とじゃ、時間の流れ方が違うっていうのは知ってるよね?』と逆に私に質問してきた。   人間と犬とで時間の流れが違うことを真剣に考えたことはなかったけれど、友人の口調から察するに、愛犬家の間では常識なのかもしれない。私はもしもこの喫茶店の誰かに、友人の問いと同じ温度感の質問をするならば、『コーヒーを飲むと眠気が覚めるのは知ってるよね?』がちょうどぴったりの塩梅じゃないかと想像してみた。   友人は、私が質問にYESかNOかを答える前に、『犬っていうのは、もちろん小型犬と大型犬じゃ異なるけど、おおよそ生まれてからの2年で、人間で言うと24歳になるんだ。それって信じられる? 人間のたった1ケ月がワンちゃんにとっての1年になるんだよ。その後は加齢のスピードも幾分かゆるまるんだけど、それでも人間の3ケ月がワンちゃんの1年になり、つまりはワンちゃんは1年に4歳も歳を取ってしまうの。だから、いまは仔犬でもあっという間に私の年齢を追い抜き、先に召されちゃうわけ…、このひどい現実を受け入れるなんて私にはとうてい出来なくて…』そう早口でまくし立てると一層落ち込んで見せた。   ご主人様のそんな悩みは露知らず、仔犬は相変わらず友人の膝の上で気持ちよさそうに寝ている。友人は仔犬の柔らかそうな後頭部から尻尾の先までを繰り返し繰り返しねっとりと撫でた。   愛が友人を変えたのだろうか。つい最近まで、まだ起きてもいないことを憂うなんて時間の無駄だと言っていたのに、随分と変わったものだねと…言いかけたけれど、軽口を許すような雰囲気でもなく、ちょっと意地悪な冗談は音になることなくコーヒーで胃袋へと流し還された。   気のせいかもしれないけれど、その日の帰り道はいつもよりたくさんの犬とすれ違った。皆一様に幸せそうだ。傍らのご主人様たちは友人と同じように、犬と人間の時間の流れの違いに悩まされたりしているのだろうか? 犬とすれ違うたびにそんなことを考え、いつか、愛する人を奪われることを想像した時の痛みを歌にしてみようと思った。愛するが故に痛いだなんて、厄介にもほどがあるけど。ねえ、愛してるって何だろう?   <藤川千愛> ◆紹介曲「 愛の歌 」 作詞:藤川千愛 作曲:藤永龍太郎(Elements Garden) ◆ミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』 2023年4月12日発売   <収録曲> 1. 愛の歌 2. 君の匂いは鎮静剤 3. リゲル 4. ちゃんとした人不適合者 5. 面倒な女 6. スローモーション 7. なにも忘れるわけじゃない  

    2023/04/12

  • Kitri
    そっと隣り合うココロネ、いつか重ねたいココロネ。
    そっと隣り合うココロネ、いつか重ねたいココロネ。

    Kitri

    そっと隣り合うココロネ、いつか重ねたいココロネ。

     2023年4月10日に“Kitri”が新曲「ココロネ」をデジタルリリースしました。TVアニメ『事情を知らない転校生がグイグイくる。』エンディングテーマとして書き下ろされた楽曲。このアニメは、転校生の高田くんとクラスの皆から「死神」と呼ばれているクラスメイトの西村さんとの心温まる物語。そんなアニメをKitriの音楽が彩ります。    さて、今日のうたコラムでは“Kitri”による歌詞エッセイをお届け! HinaとMonaにそれぞれ新曲「 ココロネ 」にまつわるお話を綴っていただきました。さらに今回は音声版もございます。おふたりの朗読でもエッセイをお楽しみください…! 大切に綴られた言葉を受け取り、温度感や表情を交わす。それを自分の言葉にしていく作業。Monaが1番を、私が2番の歌詞を担う時、一人で書く時とはまた違った緊張感がある。   「これはどういう意味?」と聞くのは簡単であるが、私はMonaに歌詞の解釈を問うことを敢えてしない。自らが感じたものや受け取ったメッセージによって2番を作っていく方が意外な展開が見つかる気がするし、何より面白いからだ。   そんな面白さを感じながら作ったのが、新曲「ココロネ」である。疾走感のあるメロディーや鼓動の高鳴りを感じさせるアレンジで、新たなKitriの音楽を表現できたのではないだろうか。   TVアニメ『事情を知らない転校生がグイグイくる。』のエンディングテーマとして書き下ろしたものであり、原作の漫画を熟読した後にまずメロディが誕生した。 久々に二人で手分けをして歌詞を書くことになり、Monaが書いた1番の歌詞を読み込むところから私の作詞が始まった。   二人で半分ずつ歌詞を書くというのは、手紙を書く行為にも似ている。 もらった言葉に返事を書く。1番の登場人物や情景につづきの話をプレゼントする。1番の意図や想いを考えた上で、自分が伝えたいことを文字に込める。そうやって私が書いたものを、またMonaが受け取り、形や色味を整えていく。 二人の気持ちを分け合ってできた歌は、どことなくいびつで、それでいて美しいものだ。   春風が吹く季節に、私たちの手元から羽ばたいていくこの曲。手紙のように想いを込めた大切なこの歌が、多くの方のココロネに届きますように。   <Hina> 私はこれまでの日々を、「ココロ」とともに過ごしてきた。 ココロは正直厄介で、気まぐれで、気難しい存在だ。幼い時から片時も離れず過ごしてきたというのに、ココロの中が何によってできているのか、今日はどんなココロの変化を見せるのか、予想することも見ることもできない。そして日々起こるあれやこれやに振り回される。ちょっとしたことで嬉しくなったり、悲しくなったり、何かを諦めたり。   人のココロはもっと分からない。 「嬉しそうでよかった」 「でも本当に喜んでいるのだろうか」 「本当は悲しんでいるのではないだろうか」 表情や言葉に惑わされながら、都合よく喜んでみたり、勝手に不安を感じたり、堂々巡りを繰り返す。   いっそ、人と人の本心がはっきりと分かる世界だったら良いのに、と考えたこともあるけれど、それはそれで違うんだろう。分からないからこそ知りたくなり、歩み寄りたくなる。難しいからこそ、誰かと気持ちを分かち合えた時の喜びを感じられる。   ココロは開いたり、許したり、合わせたり、一生かけても使いきれないほどの使い道がある。そして、いろんなものでコーティングされたココロの奥深くに、きっとその人の素顔が隠されている。それを「ココロネ」と呼んでみよう。   そっと隣り合うココロネ いつか重ねたいココロネ   <Mona> ◆紹介曲「 ココロネ 」 作詞:Mona・Hina 作曲:Mona

    2023/04/11

  • idom
    軍曹は僕にとって親友だった。
    軍曹は僕にとって親友だった。

    idom

    軍曹は僕にとって親友だった。

     2023年4月12日に“idom”が2nd EP『EDEN』をリリース!よりidomらしさにこだわって制作したという今作。リード曲「EDEN」は、楽曲制作風景がidomのTikTokで公開されており、ChillでエモいけどノれるChill Houseな楽曲に仕上がっております。他にも様々な魅力を詰め込んだ2nd EP。idomの新たな魅力を感じさせてくれること間違いなし!    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“idom”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 Memories 」にまつわるお話。家族との別れ、恋人との別れ、友との別れ…。今、大切な誰かとの別れの痛みのなかにいるあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。 3年前。 春の訪れに皆が胸を膨らませる頃。パンデミックという未曾有の危機が僕たちを襲っていた。誰もが先の見えない不安の中、新たな生き方を模索した時期だろう。   僕はというと、大学卒業後イタリアでやりたかったデザインの仕事がパンデミックの影響で就けなくなり、「イタリアに行けるようになるまでの間の仕事探さないとな…」なんて思いながらも、意外にも呑気に過ごしていた。もちろん不安も抱えていたけれど、きっとなんとかなるだろうと、軽く考えるようにしていた。   そんな僕の家から歩いて5分ほどのところに「軍曹」と呼んでいる友人が住んでいた。何故あだ名が軍曹なのかはさておき。彼は春から建築の大学院に行くことに。他の仲間たちは大学卒業後に町から離れ、残ったのは職探し中の僕と大学院に行く彼だけ。日中行く場所のない僕は暇さえさえあれば彼の家に転がり込んでいた。「仕事がないなら大学院で一緒に遊ぼうぜ」なんていってくる彼は、居心地の良い奴だった。   どこに行くにも一緒で、ラーメンを食べるためだけに片道2時間ドライブしたり、一晩中一緒にテレビゲームをしたり、旅行したり…。それからデザインと建築の夢も沢山語り合った。   何でもない日々も彼といると楽しかった。これから先続く人生でも、きっと同じように2人でバカするんだろうなと思っていた。 軍曹は僕にとって親友だった。     よく雨の降る日だった。 桜木に残っていた花びらは殆ど道に落ちていた。 そんな日の夜、一本の電話が鳴った。 仲の良い大学時代の友人からだ。   「軍曹が死んだらしい」   電話越しの友人の震える声が、窓の外の雨音をかき消すように響いた。僕は電話を静かに切って、その言葉を嘘だと確かめるために、傘もささずに玄関を飛び出し、彼の家へと向かった。出るはずのない電話をかけながら土砂降りの夜道を全力で走った。     その日から何もかもが変わってしまった。 職探しなんてものは辞めてしまったし、胸の痛みを紛らわすために、なんとなく空元気でやった事のない音楽を始めてみた。 軍曹が病に倒れたあの日、いつものように家に転がり込んで、異変に気づけていたらと後悔も沢山した。   何日か経って彼が住んでいた家が取り壊されるかもしれないと聞いて、僕はその場所に何とか住まわせてもらう事にした。彼との思い出が詰まった場所が無くなることが怖かったのだと思う。   心の中ではあの日の雨が降り続いていて、忘れたくない彼との愛すべき日々さえ、忘れられたらどれほど楽だろうかと思うこともあった。   そして現在。 あれから3年が経ち、あの頃思い描いていた未来とは随分違う日々を歩んでいる。 今でも彼に対する親友としての愛情は変わらない。 僕の原動力であり、僕が進むべき道を彼が示してくれていると信じている。 きっとこの先も彼は僕にとって1番の親友で、彼との思い出がこれからも僕を支えてくれると思う。 前に進み続ける事を彼が望んでいると僕は知っている。   誰にでも大切な人との別れは訪れうる。 それは家族との別れかもしれないし、恋人との別れかもしれないし、友との別れかもしれない。 大切な人との別れはどんなものでも辛く悲しい。その痛みを乗り越えることは容易ではない。 そんな時この曲が、前を向こうとする誰かの心を少しでも支えられたら嬉しい。   僕たちは今日も歩き続けてる。 愛しい思い出たちを胸に抱きながら。   idom ◆紹介曲「 Memories 」 作詞:idom 作曲:idom ◆2nd EP『EDEN』 2023年4月12日発売 初回生産限定盤 SECL-2855~2856 ¥1,800(税込) 通常盤 SECL-2857 ¥1,400(税込)   <収録曲> 1.EDEN 2.Memories 3.Control 4.Loop 5.GLOW -English ver.- 

    2023/04/10

  • Lilubay
    あなたの未来はわたしの未来でもある。
    あなたの未来はわたしの未来でもある。

    Lilubay

    あなたの未来はわたしの未来でもある。

     2023年3月1日に“Lilubay”が2nd EP『Home away from home』をリリースしました。本作品は旧バンド名addからLilubayに改名してバンドとして新たな一歩を踏み出し、その方向性を示した全5曲が収録。作詞はVoタグチハナ、作曲は西村コン、タグチハナが担当し、全曲セルフプロデュースでの制作となっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Lilubay”のタグチハナによる歌詞エッセイをお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 Knock 」にまつわるお話。大切なひとが泣いているとき、孤独でいるとき、みなさんならどんな景色を見せたいですか…? 今回も音声版がございます。本人による朗読でもエッセイをお楽しみください。   きっと誰もが持っている、孤独でどうしようもない夜。 大切な人が自分を見失ってしまいそうなそのときに、もしそばにいられるのなら見せたいのはどんな景色だろう?   深夜の高速道路をかっ飛ばし、大好きなあの歌を歌いながら、月明かりの遊園地、星屑たちのサーカスを横目に夜空へと続く汽車に飛び乗って…… そんな誰も知らない空想のような、束の間の逃避行のような特別な時間と光景を、私は想った。       ここ数年なかなか思うように離れた人たちと会うことができなかった期間でも、この小さな携帯電話を通して世界は存在していた。   思い思いの言葉を綴り、発信し、それは生存確認のように思えた。 みんなが試行錯誤してアイデアを生み、見えない明日を模索する中で、私は無力さを感じずにはいられなかった。   大切な人を抱きしめることもできないのに、一体何ができるというのだろう? それは私にとって何よりも重要なことなのに…     そんな気持ちの中で、ゆっくりと書き進めた詩が「Knock」     時間をかけて言葉にしていくうち、頭で考える理屈より先に まず空想の中でも行動してみようと思った。恐れも迷いも望みも、一旦素直に感じてみる。 そこからいつも歌は生まれているんだと気づいた。     メールやテレビ電話では伝えられないものがある。 ただ音楽なら、とても個人的な感情をも景色にできるのではないか? そしてその景色は、多くの言葉を要さずとも伝わるあの手の温もりのような存在になり得るんじゃないか。   私はこれまで会ったことのない人の音楽で何度もその温もりを感じ包まれてきたし、歌を紡ぐ友人たちの音楽はまるで手紙のように近く近く感じられるのだ。   “ユア・フューチャー・イズ・マイ・フューチャー” ______あなたの未来はわたしの未来でもある______     現実と夢想の入り混じる音楽の世界を通して、私はただ心を抱きしめ合いたい。   < Lilubay・タグチハナ> ◆紹介曲「 Knock 」 作詞:タグチハナ 作曲:タグチハナ ◆2nd EP『Home away from home』 2023年3月1日発売   <収録曲> 1. mani・cure 2. Home away from home 3. わがままな私と、子どもみたいな君 4. Knock 5. rainy day

    2023/04/07

  • 日食なつこ
    やえ
    やえ

    日食なつこ

    やえ

     2023年4月5日に“日食なつこが”ミニアルバム『はなよど』をリリースしました。今作には、必ずしも明るく華やかではない、彼女らしい“春”を描いた7曲が収録されております。ストレートな思いや音があふれた、物悲しくも柔らかいコンセプチュアルな作品に。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“日食なつこ”による歌詞エッセイをお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 やえ 」にまつわるお話です。 花見の季節は毎年ふつうに寒い。   桜の木の下でシートを広げ、春の装いで飲めや歌えや、なんて絵に描いたような理想の宴には桜の開花時期の気温からすれば正直まだ気の早い話で。しかも花見というのはたいていが巨木の下で催されるものだから、花や枝や葉にすっかり遮られてまだ弱々しい春の日差しなどはまるで人間に届いてこない。   うすっぺらいお花見シートにひとたび腰を下ろせばその真下の硬く冷たく湿った土にみるみる体温を奪われ、気まぐれに吹きつける春一番に鳥肌を立たせられて、ひざ掛けや温かい飲み物で必死に暖をとりながら、それでもここまで来たんだからとみんな半ば意地になって声を上げ楽しんでいる…。   花見と聞けば、そんな記憶ばかりが思い起こされる。   だから桜を見る時は、通りすがりざまふと目についたなんてことのない桜の木のそばで足を止め、眺めるともなくしばし惚けて立ち尽くすぐらいで私には事足りる。   間近で見ると桜の幹は長年風にさらされた岩肌のように出っぱったり剥がれたりいきなりあらぬ方向へ湾曲していたり、葉は葉で錆びたノコギリのようにぎざぎざ尖っていたり、あの淡くやわらかい花弁とその遺伝子を同じくする植物であることがにわかに信じがたくなるような頑強さでそれは目の前にそびえている。   その姿には、春の盛りに向けて養分を蓄え眠りつづける花弁を、開花の瞬間まで外界のあらゆるものから護るべく立ちはだかる守護者、あるいは母体、そういった存在としての揺るぎない頑なさがあるようにも見て取れる。   …そんなところまで思い至ったあたりでふと、自分の身体が暮れ始めた街の夜気ですっかり冷え切っていることに気がついた。   ほんの数分だったのか、ずいぶん長いことそこに留まっていたのか、笑ってしまうほどに呆気なく、人は桜の花が醸す情景に促されて雄弁にものを考えてしまう。この肌寒さがなければきっと際限なくそこに立ち尽くしただろう。   だから桜の季節は、これくらいの寒さでちょうどいいのだ。咲き溢れる淡い情景にいつまでも留まりたいと焦がれても決してその時間のすべてには寄り添いきれず、もどかしい気持ちで背を向けるくらいで、きっとちょうどいい。   そして寒さが邪魔をしなくなる季節の頃には花は散り果て、若々しい緑に染まった葉桜を見上げながら、ずっと追いつけない速度で足早に巡る桜の花に、だからこそ人は惹かれつづけるのだ。   目の前の大通りをトラックが走り去る。巻き上げられたダストの向こうに、早咲きの八重桜がぼんやりと滲んで揺れている。   さ、そろそろここを離れて地下鉄の駅へと潜ろう。待ち合わせの時刻にはまだ余裕があるけれど、駅前の雑踏に待ち人の影を探す時間も存外悪くはない。   言葉や距離が温まりきる前にいつも背中を向けてしまうあの人も、きっとそれくらいで私には一番ちょうどいいという、そういうことなんだ、きっと。 < 日食なつこ> ◆紹介曲「 やえ 」 作詞:日食なつこ 作曲:日食なつこ ◆ミニアルバム『はなよど』 2023年4月5日発売 <収録曲> 01. やえ 02. ダム底の春 03. 夕闇絵画 04. 幽霊ヶ丘 05. diagonal 06. ライオンヘッド 07. 蜃気楼ガール

    2023/04/06

  • 上野大樹
    上野大樹は絶対に売れたいし、みんなに最高!と思ってもらいたい。
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    上野大樹

    上野大樹は絶対に売れたいし、みんなに最高!と思ってもらいたい。

     2023年4月5日に“上野大樹”がメジャーデビューアルバム『新緑』をリリースしました。春を彩る出会いと別れをテーマに作られた今作。タイトル曲「新緑」を含む6曲と、Disc2には代表曲「ラブソング」「NAVY」などインディーズ時代の集大成とも言えるインディーズベスト8曲を合わせた全14曲の2枚組アルバムとなっております。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“上野大樹”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回です。綴っていただいたのは、今作に収録されている各新曲にまつわるお話。楽曲誕生のきっかけや、歌詞に込めた想い、そしてこれからの意志…。ぜひ『新緑』と併せてエッセイをお楽しみください! 新緑 【新緑とは一般的に4~5月頃の若葉の緑色や、木々が芽吹く“現象”そのものを指した言葉である】   ────────────────────────   メジャーデビューアルバム『新緑』は新曲6曲とインディーズ時代のベスト8曲の全14曲入りアルバムという、この時代にはとても珍しく豪華なALを作らせて貰った。しかもデビュー作品でだ。   「上野大樹というアーティストをより広める為に沢山の幅広いリスナーと出会える1枚にしたい」   そんな想いを込めてバラエティに富んだALが出来上がった。 だけど確実に自分の血が流れている、自分の一部のような作品に仕上がった。     あまり真面目に紹介してもつまらないので、ラジオや雑誌などで話したこととは違う目線で、各曲の思いの丈を綴ろうと思う。   ────────────────────────   ・M-1 夏風を待って   みんなの中で風ってどういうものだろうか。僕は、流れが変わる瞬間やその流れに乗る瞬間をイメージする。そんなメジャーデビュー作品の1曲目。僕は今、確実に流れに乗っているのだ。   洋楽を聴いていてふと(僕も本来持つ自分の譜割を最大限に活かし、且つ誰もその通り歌えないグルーヴの曲を書きたい!)と思って書き始めた。 破裂音や濁音、自分の舌足らずになる瞬間、それらを全て音ハメしながら気持ち良いところを探した記憶がある。   個人的には、<君の短い髪の毛が>という歌詞が好き。長い髪の毛でも、ショートカット、でもなく短い髪の毛。とても動物的で、神秘的で、丁度良い場所をくすぐられる!   ・M-2 新緑   生かされている僕ら。メジャーデビューという華やかなスタートに似つかわしくない言葉やもどかしさが詰まっている楽曲。   日々を眺めて育ってく 一緒に変わっていくんだと 明け方 街は眩しくて 身体は少しだけ重かった   僕らの日常はきっと何か足りないくらいが丁度良い。うまくいかないくらいが良い。 人に優しく出来るバランス、人の優しさに気付けるバランス、驕ることのないバランス。 その絶妙なバランスで僕らはきっと明日に向かって一歩踏み出すし、誰かと手と手を取り、それを素晴らしいと思える。不安な僕と、不安なみんなに贈る、僕なりのメジャーデビュー曲です。   これから一緒に変わっていきましょう。   ・M-3 ランタナ   よく通る路地裏にひっそりと佇む中華料理屋「らんたな」からこのランタナという言葉に出会い生まれた曲。スカートとPUNPEE-ODDTAXIの『THE FIRST TAKE』をみて、(そうそう!僕もこういう曲やりたいんだよ!!)なんて思って書き始めた。   この曲はレコーディングでどれだけ小さな声で歌えるか、にトライした。初めての試み。 気怠さや、ビートに乗らない独り言というか、心境が声になっているくらいのニュアンスを目指した。   思い出の一挙手一投足 風で揺れる水面に映り込む 君の悲しい顔をいつまで経っても ずっと眺めてる    水面越しにしか視ることのできないそんな状況。状況は違えどきっとみんなにもそんな日々や思い出があったのではないかと想像する。風に揺れる水面だからこそ本質はきっと見えていなくて、彼と彼女の間には想像以上の溝がある。人間って後から気づくんですよね。あのときちゃんと向き合っていればー!って。そんなあなたの主題歌です。   ・M-4 予感   アコギジャカジャカでストリングス壮大でドラムドコドコでかっこいい曲!!!! 難しいことは考えずにこのかっこよさと泥臭さに耳うずめて大声で泣きながら聴いて欲しいです。   僕らの一番美しかった時代を謳っています。予感、っていつからかわからなくなるんです。 賢くなると逆算したり、根拠を求めたり、臆病になったり。 悩んで選んで間違ったり正しかったり、自分を犠牲にして飛び込めることって素晴らしいんです。   これは紛れもなく僕の歌です。インディーズ時代から何度も悩み選んできた、いやもっともっと前もずっとそうしていた、僕らの歌です。 だからこそ何も考えずに馬鹿になって聴いて泣いてください!   ・M-5 遠い国   僕の中では珍しく書いた時の記憶がない曲。 それくらい素直にまっすぐ書けました。でもその割に色々な可能性を秘めている詞。   自分でも誇らしくなります、この曲。 だから敢えて何も言いません。みんな解釈を当てはめてみてください!   ・M-6 ざわめき   僕の備忘録です。アーティストでも何でもない人間の詞です。願いでもあり希望でもあり願望でもある。ずっとこれが続きますようにって。自分でも自分が変わることが怖いんです。きっとみんなそう。でも守るべきものは本質だけで、僕らは変わっていくことでその本質を守ることにつながる。   上野大樹は絶対に売れたいし、みんなに最高!と思ってもらいたい。 時代にそぐわなくてもみんながライバルで、常に闘争心に燃えている。 このざわめきはまだまだ続きます。   ────────────────────────   ここまで読んでくれた皆様、本当にありがとうございます。 メジャーデビューの発表がすこし早かったせいか、みんなとその日に向かっているような気持ちです。だけどここは始まりの扉を開ける瞬間に過ぎないので。   ここからは一味違う新しい空気を吸いながら今まで以上に胸を張り、努力をして、僕の信じる音楽を全うします。しかしそれに驕らずしっかりと名前を広め掲げてみせます。   またとないこんな機会にコラムを書かせて頂き僕自身も楽しく、また身も引き締まりました。 欲を言うなら、文章を書くこと大好きだからこれからもお仕事として続くといいな。   僕には音楽だけじゃなくやりたいこと関わりたい人が沢山います。 きっとみんなも、年齢や性別は違えどあるよね。 僕の活動がすこしでも力や励みになるよう、作品以外の上野大樹はいつまでも変わらず等身大の上野大樹でいようと思いますので、またこれからも親しみを持って応援してください!   喜びの春が今年もやってくる!!! <上野大樹> ◆メジャーデビューアルバム『新緑』 2023年4月5日発売   <収録曲> CD/Disc1 1. 夏風を待って 2. 新緑 3. ランタナ 4. 予感 5. 遠い国 6. ざわめき   CD/Disc2 1. ラブソング 2. て 3. おぼせ 4. 波に木 5. NAVY 6. 面影 7. 東京 8. 愛のまま  

    2023/04/05

  • 門脇更紗
    負けず嫌いの私を奮い立たせるのは、いつも君。
    負けず嫌いの私を奮い立たせるのは、いつも君。

    門脇更紗

    負けず嫌いの私を奮い立たせるのは、いつも君。

     2023年4月5日に“門脇更紗”が配信シングル「君がいるから」をリリース。今作は女子ゴルフを題材としたTVアニメ『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』Season 2のエンディング主題歌です。アニメのシナリオを読んで主人公ふたりの関係性にインスパイアされた門脇更紗が、詞・曲を書き下ろし、サウンドプロデューサー・佐伯youthKがアレンジを担当したミディアムナンバーとなっております。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“門脇更紗”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲 「 君がいるから 」 にまつわるお話です。この曲を作るときに頭に浮かんでいたのは、大好きな親友のこと…。さらに今回は音声版もございます。門脇更紗の“朗読”でもエッセイをお楽しみください。 今回のコラムは4月5日リリースの「君がいるから」についてです。   この楽曲はTV アニメ『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』Season 2 エンディング主題歌として書き下ろしをさせていただいたことをきっかけに生まれました。   お話をいただいたとき、学生の時にスポーツをやっていたら、もっと作品のストーリーに寄り添えたんじゃないかなと考えた瞬間もありましたが、私には何にも変えられない大好きな親友が隣にいたので、その子と過ごした日々と、作品を重ねて制作しました。   2コーラス目のAメロ、   君のオチのないトークを 笑って聞くだけで 心が少し救われた夜もあったんだ   の歌詞が、歌っていていちばん親友の顔が浮かぶなと思います!   高校生の時からボイスメモで録音した素材を聴かせて、感想をもらっていたのですが、この楽曲ができた時もすぐに親友にデモを渡して聴いてもらいました。   「最高!あんた天才なんちゃう!」   しか言わないけど、 親友にもらうその言葉が、何よりもパワーになっていました。   親友が助けを求めている時に私もそんな存在になっていたいな、と思います。   ひとりより、ふたりのほうがもっと特別になる… まるでハーモニーみたいに…   「君がいるから」   負けず嫌いの私を 奮い立たせるのは、 いつも君。   悔しくて話さなかった日、 頑張ろうねと言い合った日、 嫌いになった日、 手を差し伸べてくれた日、 しょうもない話をして笑った日、   1人じゃないと教えてくれた。 がむしゃらに一緒に進んだ。 2人、出会って強くなれた。   これからも愛に溢れた睨み合いを続けながら 君に勝ちたいと思うんだろう。   まだ夢の途中.... 君がいるから!わたし、がんばれるよ。 < 門脇更紗> ◆紹介曲 「 君がいるから 」 作詞:門脇更紗 作曲:門脇更紗 配信サービス一覧: https://jvcmusic.lnk.to/kimigairukara 

    2023/04/04

  • idom
    混じり気のない純粋な《愛》という世界
    混じり気のない純粋な《愛》という世界

    idom

    混じり気のない純粋な《愛》という世界

     2023年4月12日に“idom”が2nd EP『EDEN』をリリース!よりidomらしさにこだわって制作したという今作。リード曲「EDEN」は、楽曲制作風景がidomのTikTokで公開されており、ChillでエモいけどノれるChill Houseな楽曲に仕上がっております。他にも様々な魅力を詰め込んだ2nd EP。idomの新たな魅力を感じさせてくれること間違いなし!    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“idom”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作のタイトル曲「EDEN」にまつわるお話です。私たちにとっての永遠のテーマである《愛》。idomが感じる《愛》の神秘性とは…。ぜひ今作と併せて、エッセイをお楽しみください。 古くて新しい、永遠のテーマ《愛》 我々人類のこれまでの歴史においても、その存在は非常に重要なものだと考える。 僕は真の《愛》というものに対して、神秘性を感じてやまない。   恋愛における時間というものは一定の速さで進まないようだ。 無論、時計の針は規則性を持って進むし、1秒が60集まって1分だという事実に変わりはない。 ただ1時間を1分のように感じたり、その逆に1分を1時間のように感じたりする感覚は、さまざまな場面で体験でき、恋愛はその感覚を享受するのに最も身近な存在だといってもよい。 一刹那のキスを永遠のように感じた人もいるだろう。 そこに《愛》というものの神秘性をますます感じる。   ラ・ロシュフコーの箴言集69条に 「純粋でほかの情熱を混えない愛がこの世にあるとしたら、それは心の奥底に隠されていて、われわれ自身ではしることのできないものである」と記されている。   ラ・ロシュフコー自身は『純粋でほかの情熱を混えない愛』というものの存在を認めていないが、この一節が、混じり気のない真の《愛》というモノの形を描いていると僕はずっと考えてきた。 《愛》は触れる事ができず、目に見えず、互いの中に知らぬ間に育まれ、その不可解さ故に私たちを苦しめ、惹きつける。   「EDEN」では、そんな心の奥底にある「混じり気のない純粋な《愛》という世界」に陶酔していく二人の様子を描いた。現実から隔離されたその世界は、理想郷であり楽園ともいえる。恥じらいもなければ、一般常識なんてものは通用しない。 それ故に誰にも侵されたくない領域がそこには存在し、二人だけの秘密が生まれる。   《恋》と《愛》は似て非なる部分があり、盲目的で自己中心的な《恋》に対して、《愛》からは自己犠牲と理性的な精神を感じる。今作「EDEN」の二人は《恋》と《愛》の間で揺れ動き、純粋さ故にその精神世界に溺れていく。 その先に究極の愛があるとして、僕がその当事者であるなら、きっとこう願うだろう。   「あなたの腕の中で、永遠に眠りたい」と。   idom ◆2nd EP『EDEN』 2023年4月12日発売 初回生産限定盤 SECL-2855~2856 ¥1,800(税込) 通常盤 SECL-2857 ¥1,400(税込)   <収録曲> 1.EDEN 2.Memories 3.Control 4.Loop 5.GLOW -English ver.- 

    2023/04/03

  • ヤングスキニー
    バンドマンの僕から、あの子へ。
    バンドマンの僕から、あの子へ。

    ヤングスキニー

    バンドマンの僕から、あの子へ。

     2023年3月15日に“ヤングスキニー”が1stフルアルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』をリリースしました。配信シングル「東京」「コインランドリー」「本当はね、」「好きじゃないよ」、これまで会場限定シングルに弾き語りデモが収録された「ごめんね、歌にして」「ヒモと愛」を含む全10曲を収録。インディーズ時代の楽曲から最新曲まで、ここまでの勢いを凝縮した代名詞となる1枚です。    さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ヤングスキニー”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回はかやゆーが担当。綴っていただいたのは、アルバムの最後を飾る収録曲「 ごめんね、歌にして 」にまつわるお話です。あの頃には戻れない今、“あなた”に伝えたい想いは…。さらに今回も音声版がございます。かやゆー本人による朗読でもエッセイをお楽しみください。 僕は恥ずかしがり屋だから、自分の気持ちを目を見て伝えるなんていうことはできなかった。もっと言葉で気持ちを伝えてたら、もっと言葉で想いを伝えてたら、今はもっと変わっていたのかな、なんてね。でも歌にすれば、自分の気持ちも届くと思っていたし、届いていると思っていた。言葉では、目を見て気持ちは言えなかったけど、せめて歌う時だけは目を見て歌っていた。でも気持ちが伝わってる気がしただけで、その瞳には、「歌にしないで」なんて映っていたことは、これっぽっちも気づけなかった。   全部僕の勘違いだった。   あの時は、新曲ができるたびに聴かせていたし、あなたのことだけを考えて、あなたのことだけを歌っていた。でも唯一あの子に歌えなかった歌が一つだけあった。だって君は“今でもあなたは私のことを元カノとか言って歌にしてくれてたらいいな”なんて思ってないだろうし、それも全部僕の願望だってわかっていたから。   “歌えなかったあの歌と”   僕は今も忘れずに鮮明に覚えてる。寝る前に弾いてあげたギターとか、二人でイヤフォンを分け合った夜とか、早起きして出かけた日も、あなたが作ってくれた美味しかった炒飯も、換気扇のうるさい七畳の狭いワンルームで、単身者専用って書いてあったけど、バレないようにこっそり二人で同棲、夜中には家に洗濯機があるのに、わざわざコインランドリーまで行っちゃったりして、2人の汚れた心まで綺麗になったらいいねって。あの日常も、あの幸せも全部あなたがくれたものだった。   結局僕は愛想を尽かされた。何回も引き止めたけど、あなたはどこか遠くへ行ってしまった。正直言えば、戻りたいって思うし、あの日々を忘れられない。でも僕は“忘れられないのは、あなたではなくて二人の時間”なんだと自分に、言い聞かせている。戻れたとしても結局僕は、どうせまた同じことをしてしまうだろうし、愛想を尽かされてしまう。だっていまだに思いは伝えられず、歌にしているのだから。   “今でもあなたを元カノとか言って歌にしてごめんね”   ごめんね。 <かやゆー> ◆紹介曲「 ごめんね、歌にして 」 作詞:かやゆー 作曲:かやゆー ◆1stフルアルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』 2023年3月15日発売 配信サービス一覧: https://jvcmusic.lnk.to/ys_1stAL <収録曲> 1. ヒモと愛 2. ゴミ人間、俺 3. 本当はね、 4. 美談 5. コインランドリー 6. 好きじゃないよ 7. 夜のままで 8. 東京 9. らしく 10. ごめんね、歌にして  

    2023/03/31

  • 新山詩織
    猫のせなか。
    猫のせなか。

    新山詩織

    猫のせなか。

     聞くひとの心を捉えて離さない、染み入る歌声と歌詞が多くのリスナーを惹きつけるシンガーソングライター・新山詩織。そんな彼女が、2022年12月にアーティストデビュー10周年を迎え、2023年4月17日にはメジャーデビュー10周年を迎えます…!    さて、今日のうたコラムでは、メモリアルイヤーを記念して“新山詩織”による歌詞エッセイを1年を通じ、12ヶ月連続でお届け!その第4弾です。綴っていただいたのは、彼女の愛する猫のお話。猫を飼っている方はきっと共感できるはず。さらに今回も音声版がございます。本人の朗読でもエッセイをお楽しみください。 猫の背中は なんでこんなにも落ち着くのだろう。   こうして何か書き物をしている時 本や雑誌を読んでいる時 映画やYouTubeを見ている時 パソコン作業の時にはもう キーボードの上にどっしりと   まるで「どうぞお使い下さい」 「どうぞどうぞお休み下さい」とでも言うように その柔らかいものがそこにある。   なので「ありがとうございます」と一言伝え 枕にして、ひと休憩させてもらう   たまに、一眠りしてしまうほど それはエアコン、こたつ、ホッカイロと 比べ物にならないくらい あたたかくて、安心する   大げさかな…でも、本当に。   猫にしてみたらいい迷惑だ 邪魔だな、重いな、なんだこいつって 思われてるかもしれないけど。   ごめんなさい、でもさ そこにあるから、いいよね?   なんて、勝手に自分で自分を許して いつもそこに手を乗せてしまう 頭を委ねてしまう   もはや、私が猫を飼っているのではなく 私が猫に飼われている   そんなことを、心の底から実感する とある昼間であった。   <新山詩織> ◆イベント情報 『B All Light』 -新山詩織 with friends- ■日程:2023年4月28日(金) ■会場:unravel Tokyo( https://unravel-tokyo.com ) (〒106-0032 東京都港区六本木4丁目11-11 六本木Gmビル B1F) ■時間:開場 18:30 / 開演 19:00   ■出演: ・新山詩織( http://niiyama-shiori.com ) ・山崎あおい( https://yamazakiaoi.jp ) ・Maica_n( http://maica-official.jp ) ・Ran( https://ran-official.com )    ■サポートメンバー: ・友田ジュン(Key/DEZOLVE)( https://www.juntomoda.com ) ・坂本はるか(Gt/エドガーサリヴァン/MEMEMION) ・山下あすか(per)   チケット料金:4,000円 (全自由・税込・ドリンク代別) ※全自由席/入場整理番号順のご入場 ※前方座席あり、後方スタンディング ※おひとり様4枚まで ※未就学児入場不可 お問合せ:balllightcontact@gmail.com   チケット発売中: https://eplus.jp/niiyama-shiori/

    2023/03/30

  • クリープハイプ
    僕も彼女もお互いを愛してはいないのだろう。
    僕も彼女もお互いを愛してはいないのだろう。

    クリープハイプ

    僕も彼女もお互いを愛してはいないのだろう。

     2023年3月29日に“クリープハイプ”が新作EP『だからそれは真実』をリリースしました。TOHO animationの10周年企画『TOHO animation ミュージックフィルムズ』への書き下ろし曲「凛と」、展覧会『クリープハイプの声をシャワーのように浴びる展』テーマソングでもある「本当なんてぶっ飛ばしてよ」、Ba.長谷川カオナシが作詞作曲した「朝にキス」など、バラエティ豊かな全5曲を収録。    さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“クリープハイプ”の長谷川カオナシによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、今作の収録曲「 朝にキス 」にまつわるお話です。曲の背景にある<僕>と彼女の物語を、感情を、歌詞と併せて受け取ってください。さらに今回は“音声版”がございます。長谷川カオナシ本人による朗読でもエッセイをお楽しみください。 安心したのか疲れ切ったのか、彼女は眠りについたようだ。 僕はというと安心したし疲れ切った。   実につまらない言い合いだった。 ごめんと折れるフリもした。 反省の皮を被ったそれは、実際のところはただの放棄の意思表示である。 彼女が彼女自身の命を人質にとった以上、 僕から言えることはもう何もない。   恥ずかしながら無学ゆえ、各宗教に於ける愛の定義については暗い。 でも恐らく。僕も彼女もお互いを愛してはいないのだろう。 議論の目的はそれぞれのエゴを通すことであり、 双方の幸福の追求ではなかった。   正論は刃だ。 切れ味の良い刃ならあるいはメスになれるのかもしれない。 だとしてもメス一本だけで手術は遂行出来ないし、 そもそも医者でもなんでもない僕がいたずらに振り回すべきものではない。   麻酔だ。少なくとも僕の方は今、麻酔が欲しい。 平たく言うとスマートフォンを相手に酒を呷るのだ。 外に出て空を見上げると、黙って見下ろしている月と目が合った。 安全圏から容赦なく降り注ぐその呑気な光が目に障る。 唾を吐いた。 当然顔に戻ってきた。 空なんて見上げるものじゃない。 視線をスマートフォンに下ろした。   SNSの上では日夜、様々な論争が繰り広げられている。 「口下手」と「わからずや」では決着がつかない。 両者の弁は平行線となって伸びていく。 寄り添わず、かといって離れることもない二本の線。 なんと仲睦まじいことだろうか。 多くの恋人たちはやがて夫婦の契約を結ぶにあたって、 永遠の愛を誓う。 「永遠」も「愛」も「誓い」もとても難しいことなのに、 赤の他人同士が一歩も退かず憎み合う力は 夜空の向こうに果てしなく伸びていく。   それでもやはり永遠はなく、空は明るみ始めた。 部屋に戻ると、東から射す陽に彼女の寝顔が照らされている。 寝ている人間は美しい。いつかは起きるというところも良い。 朝にキス。張っていた意地が水泡に帰す。 平行線で論じていた口同士が触れ合った。 片側を担っていた僕の線が角度を変え、 もう片方の線に向かい、一方的に触れた。 平行ゆえの均衡は崩れ、 線がこの先どこへ行くのかはわからない。   <クリープハイプ・長谷川カオナシ> ◆紹介曲「 朝にキス 」 作詞:長谷川カオナシ 作曲:長谷川カオナシ ◆EP『だからそれは真実』 2023年3月29日発売   <収録曲> 01. 凛と 02. 本当なんてぶっ飛ばしてよ 03. 朝にキス 04. 愛のネタバレ 05. 真実  

    2023/03/29

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