ニューアルバムのタイトルに掲げた“DIXANADU”とはManaの造語であり、これは“理想郷”を意味する。そのアルバムを立体的に表現すること、すなわち彼が描く理想郷の創造が、この日のライヴのテーマであり、美と激しさが織りなす幻想世界がLIQUIDRO OM内に構築されるのだった。 理想郷への扉を開いたのは、重厚なサウンドが特徴的な「Met aphysical」。ハードコアやヘヴィメタルのような激しさと、華麗なメロディーを併せ持った楽曲がライヴの幕開けを飾ると、“ようこそ闇の世界へ”とヴォーカルのSethがひと言入れ、スリリングなサウンドと甘味なメロディーが交錯する「exclud」、ヘッドバンキングナンバー「Night breed」へと続き、序盤にして理想郷の中枢へ引き込まれたように、ダークネスで、ミステリアスな世界が客席を飲み込んだ。そして、中盤に入ると悲壮美に満ちたナンバーが、漆黒な世界に優麗で凛然とした空気を落としていく。容赦なく繰り出される暴力的かつ妖美な楽曲に、観客たちは体を預けている。人間誰しもが持つ闇の部分。それは狂気性であったり、悲哀であったり、人それぞれだ。そんな日常生活の中で押し殺している感覚が、この理想郷では解放されるのだろう。ダイナミックなバンドサウンドとチェンバロの切ない調べが溶け合う本編ラスト「forbidden」や、フラストレーションを一気に爆発させたようなパンキッシュなオーラス「deus ex machina」などの甘味性も毒性も強いサウンドに、客席は溺れるほどに陶酔しきっていた。精神世界の闇の解放。それも“DIXANADU”の存在理由のひとつなのかもしれない。