SEの「OVER THE RAIBOW」が流れ、歓声が沸き返る中、メンバーが登場。“あけましておめでとう”と浅井健一(Vo&Gu)がひと言入れると、「トライベッカホテル」でライヴは幕を開けた。アルバム『MIRACLE』を引っ提げたツアーの東京公演。当然のようにチケットは売り切れ、フロアはSHERBETSの音に飢えていた者たちであふれ返っている。しかし、次々と繰り出される楽曲に、オーディエンスは圧倒されっ放しだ。想像力をかき立てられるドラマチックなサウンドを見入るように聴き入っている。浅井の気怠げなのだが、凍るほどの緊張感を持つヴォーカルと艶っぽい饒舌なギター、仲田憲市の重量感のある音でうねるベース、外村公敏の躍動的でタイトなドラム、 福士久美子の楽曲に彩りを与えるキーボードと潤いをもたらすコーラスワーク。浅井健一が創造するロックンロールはソロであったり、JUDAであったり、このSHERBETSであったり、いろいろな表情を持つ。ある意味、彼にとっての音楽は絵のようなものかもしれない。書きたい絵をどんな画材で表現するかで、その音像が変わる。と考えるなら、SHERBETSは淡い水彩画といったところだろうか。互いの感情をぶつけ合うパンキッシュなものではなく、それぞれパートの個性的なフレーズでもって塗上げていくようなサウンドは繊細で美しく、かつ強靭なまでに硬質だ。さらに、それはライヴで表現されることで、どこまでも深く、そして濃い空間を作り出し、観る者を包み込むのである。 しかし、中盤に入ってミステリアスでスリリングな「GHOST HIGHWAY」が放たれると、アッパーチューン「シェイクシェイクモンキービーチ」やグルービーな「TAXI DRIVER」などエンディングに向かってハイテンションなナンバーが続く。オーディエンスは抑えていた感情を爆発させ、加速度的にボルテージを上げるのだが、それを今度は熱で威圧するように、各パートが絶対的な存在感を持って絡み合い、時に混沌と、時には直情的に、あるいは痛快にバンドグルーブを作り上げるのだった。このヒリヒリとした感覚を伴う、息をすることさえ忘れそうなソリッドなサウンドもSHERBETSの魅力のひとつなのである。 アンコールで再び深奥な世界を描き、最後は「Merry Lou」で幕を下ろしたライヴ。本ツアーは東名阪のみという短いものだったが、2008年は結成10周年のメモリアルイヤーである。昨年はソロ中心で動いていただけに、今年はアクティブに動いてくれることを期待する。とにかく、またあの音世界に身を預けたい...。SHERBETSのライヴには、そう思わせる常習性があるのだ。