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LIVE REPORT

PLANET A CARNIVAL

PLANET A CARNIVAL 淡路夢舞台 野外劇場

2008年09月06日
@淡路夢舞台 野外劇場

視界いっぱいに地平線まで広がる青い海。風に揺れる緑鮮やかな木々。何にも遮られることなく光を降り注ぐ赤い太陽。ここは淡路島。そんな最高のロケーションの中、初開催された野外ライヴイベント『PLANET A CARNIVAL』。会場に到着すると、本州、四国から結ばれた橋を渡り、集まった観客で、既にアリーナは埋め尽くされていた。その熱気と大自然...開放的な雰囲気にこれから始まるライヴに期待感でどんどんテンションが上がってくる。 そんな中、大歓声が起こり、最初に登場したのはなんとThe Birthday。現時刻は13時を回ったばかり。真昼、炎天下のThe Birthday! 加えて黒のジャケットを纏い現れた4人。何度も言うがここは大自然が広がる淡路島だ。スーツ姿の男とは無縁の地と言ってもいいだろう。だが、それがいつもにも増してオーラを放っているように感じ、“こんなレアな体験はそうそうない!”と夢中で彼らを見入ってしまった。MCを挟むことなく次々と繰り出される、ヘビーで重厚なロックナンバー。チバユウスケ(Vo&Gu)の唯一無二なるヴォーカル。振り上げられるオーディエンスの腕と何のフィルターも介さず注がれる太陽熱線に、さらに会場はヒートアップしていた。それにたまらずか、クハラカズユキ(Dr)は早々に上半身裸となり、リズムを刻み、打ち鳴らす。どちらかと言うとクールな印象のあるThe Birthdayのそんな汗だくの姿もまた、唯一無二のものとなって観客を興奮させていたのだった。 The Birthdayが去った後、ステージは転換に入り、ちょっと腹ごしらえでもするかと思っていると、どこからか音が聞こえてくる。観客と一緒にその音の方向に駆け寄るとメインステージ横にもステージが設けられ、そこでもライヴが繰り広げられていた。そこはステージと言っても、アーティストとオーディエンスには何の隔たりもなく、間近で行なわれている、さながら駅前などで見られるようなストリートライヴのような光景だ。そこでもビールを片手に踊る観客、至近距離でのオーディエンスにフルスロットルのパフォーマンスを見せるバンドマンと熱いライヴを繰り広げていた。 そうするとメインステージからまたもや、大歓声! 屋台へ行くのを断念し、再び会場に戻るとガガガSPのライヴが始まろうとしていた。深々と一礼するコザック前田(Vo)。そして一気に口に含んだ水を大噴射! 1曲目「晩秋」が始まった。前のめりのサウンドと歌にオーディエンスも前のめり。前に前に押し寄せ、ぐちゃぐちゃのフロアが生んだ凄まじい熱気の中、サビでは“晩秋の夕暮れは?”の大合唱。1000人を超す言葉が淡路の空に木霊した瞬間の空はとてつもなく澄んだきれいな青色に見えた。その後も飛び跳ねる、ステージセットによじ上る、手を指揮棒に見立て観客の盛り上がりを指揮する、その横では山本 聡(Gu)、桑原康伸(Ba)がなぜか組体操のサボテンを披露などと予想不可能なステージングを繰り出し、客席後方の芝生では観客が踊り出す。自由を画に描いたようなライヴの光景が広がっていた。 続いての登場はうつみようこ&YOKOLOCO BAND。サイケな彼女のドレスがとても大自然に映えていて、衣装に気を取られていると、油断していた体が彼女の歌声に衝撃を受ける。ソウルフルで圧倒的な存在感を放つヴォーカルに観客の誰もが食い入るように見つめていた。加えてこのYOKOLOCO BANDは後に控えるフラワーカンパニーズのグレート前川(Ba)、竹安堅一(Gu)、The Birthdayのクハラカズユキ(Dr)、ソウルフラワーユニオンの奥野真哉(Key)という豪華なメンバーで構成されていて、絶妙のリズムでもってグルービーにサウンドを奏でている。歌とサウンドの全てが重なった瞬間はこれ以上ない心地良さに包まれ、先程のガガガSPとは打って変わって、ゆらりゆらりと観客は体を揺らし、音を感じていた。 次第に日差しも和らぎ、まったりとしてきだした頃に絶妙のタイミングでステージに登場したのはYO-KING。ラフな出で立ちで颯爽と現れた彼に大きな歓声が起こる。独自の目線でシンプルに綴られた歌詞とキラキラした耳馴染みの良いポップミュージックに自然と体が揺れ、観客は笑顔を見せる。作詞作曲を手掛けた「Hey!みんな元気かい?」では、会場にどよめきが起こり、笑顔がさらに広がり、クラップが鳴り響く。“みんな、ありがとう! YO-KINGでした!”と、去っていく姿がすごくさわやかに見え、彼に大きな拍手が贈られていた。 と、余談なのだが、先程のYOKOLOCO BANDはthe Birthdayやフラカンのメンバーが参加していて、彼らのオリジナルバンドもこのイベントに出演していることにそのアーティストを初めて見る観客も気付いていただろう。そしてこのYO-KINGの真心ブラザースの作品にはうつみようこが参加していたことがあったりと、アーティスト同士のつながりも感じることができたのだ。実際はお客さんはひとつひとつのライヴ、アーティストを純粋に楽しんでいるだろうが、そんなことを考えていると、なんだか温かいイベントだなと思えて、よりひとつひとつのライヴに思いを巡らせながら観ることができたのだった。 そして、そろそろ終盤戦。“永遠の田舎者”フラワーカンパニーズが登場し、鈴木圭介(Vo)が“パッといきますか!”とひと声掛けると声を挙げる観客。再び会場に熱い熱気が蘇った。結成19年を迎え、39歳になるメンバーだが、彼らのライヴはいつまでも変わらない。やっぱり「深夜高速」のアルペジオが始まった瞬間は心が締め付けられるし、全身全霊で歌う鈴木の姿、声には感情が高ぶってくる。卓越したスキルで放たれるバンドサウンドも圧倒的で、特に驚いたのはグレート前川。彼のステージはうつみようこ&YOKOLOCOBAND、YO-KINGと経て、本日3本目。にも関わらずキレキレのベースには思わず見入ってしまった。ラストは「真冬の盆踊り」を演奏し、“よさほい、よさほい、よさほいほい”の大合唱で夏の終わりを盛大に締め括っていた。 残るは2組。会場は暗がりに包まれ、照明が灯り、虫の鳴き声が聞こえてくる。ほんのり、ムーディーな雰囲気が漂ったのも束の間、GO!GO!7188が入場すると、再びグワッと大歓声が起こり、熱いライヴへ。3ピースによる、シンプルで強靭なサウンドとユウ(Gu&Vo)、アッコ(Ba&Vo)が紡ぐ美しいコーラス。それに即座に反応し、声を挙げるオーディエンス。可憐でじゃじゃ馬GO!GO!7188の独壇場と会場は化していた。代表曲「こいのうた」ももちろん披露され、メロディアスでタイトル通りの物悲しい“こいのうた”に観客は聴き入り、メンバー3人の鳴らす音と歌だけが辺りに響き、ゆったりと心地良く時間が流れていった。ラストは定番の「ジェットにんぢん」。オーディエンスは飛び踊り、再びフロアに熱気の渦を作り出し、ステージを後にした。 そして大トリはSHERBETS。正直、体がウズウズして転換など待っていられない。その思いは他の観客も同じだったようで、ステージにライトが当てられた瞬間から、大拍手が鳴り始めていた。浅井健一がどこからともなく現れ、“Hello We are SHERBETS”と放つと、“待っていました”とばかりにドッと歓声が沸き起こったのだった。ライヴは歌と彼のギターのみで静かに始まっていく。そして徐々にドラム、ベースと調和していき芸術的な世界感を創り出していった。その世界に引き込まれた観客は終始、目を閉じ、無心で頭や腰を揺らす。正直なところ、僕自身も何も考えずに浅井の歌声と美しい音色に浸っていたかった。この淡路島の自然も相まってか、それほど、SHERBETSのライヴは凄艶で至高なものだった。 最高のライヴアーティストのライヴを楽しみ、自然に触れ合うことができたこの一日は本当に最高の一日だった。アーティスト自身も恐らく、非日常のステージに立つことで、いつも以上のライヴを繰り広げることができただろう。それぐらいのパワーを感じた。そして思い付くのは浅井健一がライヴ終盤で語った、この言葉に尽きるだろう...“淡路、最高”。