“いつの間にこんなすごいグループになっていたの!?”と目から鱗が落ちる想いだった。今年デビュー23年を迎えたw-inds.。活動歴の長いグループだけに楽曲は聴いていたけれど、ライヴをちゃんとチェックしていなかったことに、どれだけ損していたんだろうと大いに反省した。
2023年3月にリリースしたアルバム『Beyond』を引っ提げ、7月から開催されていた全国5カ所のツアー『w-inds. LIVE TOUR 2023 "Beyond"』。その追加公演となる神奈川県民ホール 大ホールの模様をレポートする。
ステージ左右にはミニステージが階段状に設置され、中央に映像用のLEDモニター。スマホやタブレットを思わせる縦長比率の画面が今という時代を象徴しているように感じる。1曲目は「FIND ME」。イメージカラーでもある青いスポットライトの中、涼平のファルセットが滑らかに響き、それを引き継いで赤いライトを浴びた慶太がやや低めのトーンで歌い始める。それぞれの声質のコントラストも、サビでぴったり解け合うハーモニーも素晴らしい完成度だ。ラメがキラリと光る黒いシャツに白のボトムス。シンプルながら都会のクラブを連想させる大人っぽい雰囲気を纏うふたり。4人のダンサーを従え、キレのいいシャープなパフォーマンスを惜しげもなく次々と展開していく。3曲目「K.O.」の間奏では前半で慶太がスピード感ある足さばきのステップを、後半で涼平が全身を駆使したブレイクダンスを披露。ウィンドミルなどの大技も繰り出され、観客からは大きな歓声が飛んだ。
“今日はバッチバチのダンスナンバーを持ってきたので、踊るw-inds.を楽しんでください”(慶太)という言葉どおり、グルービーなダンスチューンが続く。「Drop Drop」での素早い動きや、「Beautiful Now」での繊細かつ丁寧な振り付けも華やかで目が離せない。ダンス以外の要素とのシナジーも秀逸で、「Temporary」ではLED画面に映し出された水面のCGと透明感あるユニゾンヴォーカルが調和して実に美しい。果てしなく広がる青空の映像をバックに歌う「Beautiful Now」も、会場全体を光で包み込むような高揚感を放っていた。
前半戦が終わったところで長めのMC。自称“ゆるい”トークに定評のあるW-INDS.だが、この日も切れ味鋭い絶妙なかけ合いトークで観客を爆笑の渦に叩き込む。このコーナーではお着替えタイムを設け、ステージに残ったひとりが交代でトークを続けたのだが、ひとりになっても会場のテンションをキープする力量はさすが。衣装チェンジの間もライヴの流れを途切れさせることなく後半戦に突入した。
全身白コーディネートの爽やかな装いに似合うナンバーで後半はスタート。ミディアムなテンポにメリハリの効いたビートがw-inds.らしい「Over The Years」、カッティングギターのリフが印象的なシティポップ「Blessings」、ナチュラルな温かみと開放感のある「Fighting For You」と、『Beyond』から3曲が演奏された。
一気に空気を変えてみせたのが「Strip」。暗めの照明の中、上手の階段部分に座っていた慶太が立ち上がって歌い始め、下手には真っ赤なビロード張りのソファに座った涼平。MVから抜け出てきたような光景が目の前で展開されていく。上着の胸元をチラッとはだけるような振り付けといい、挑発的なポーズといい、イケメン6人がビシッと細かい動きを合わせる様といったらそれはそれはカッコ良いわけで。中盤の見せ場ではこれまたMVと同じく、ステージ中央に並べられた6脚の椅子に6人が腰かけて一糸乱れぬユニゾンダンスを。セクシーと言うべきか、ゴージャスと言うべきか、もはや悲鳴に近い“キャー”という大歓声で会場が埋め尽くされたのは言うまでもないだろう。
大きな声援を受け取って“これがライヴですよね!”とふたりも満足げ。感染症対策で発声が制限されていた期間を振り返り、“みんなの反応がないから、鍛えられてトークがうまくなった説も(笑)”と笑わせてから“もっとトークのスキルも上げていきたいし、ダンスもしゃべりもキレが増すことを目指さなきゃいけない”とさらなる向上を誓った。
ラストスパートではアッパー感あふれる4曲を畳みかけた。『Beyond』からの「Delete Enter」と「Lost & Found」、そして「We Don't Need To Talk Anymore」、重低音のビートが聴覚より身体を直撃する「New World (Remix)」。LED画面にはデジタル仕掛けの曼荼羅といった趣の幾何学模様が次々と描き出され、おびただしいレーザービームがサーチライトのように会場を照らし出す。光と音が一体となって織りなす圧倒的な多幸感の中、ライヴ本編は幕を閉じた。
アンコールでは白Tシャツにスニーカー、デニムというラフな服装で登場。ラップもフィーチャーしたストリート感と、きらびやかでクラス感のあるショーのクオリティー、両方で楽しませてくれるのがw-inds..ライヴの魅力だ。“最近はバンバン新曲作っていて。LINEで涼平に“こんな曲できた”って送るといつも褒めてくれる”と慶太。そして、“自分たちの今の気持ちを曲に込めました”と、9月に配信がスタートした新曲「Run」を披露した。
オーラスは「STEREO」。曲のエンディング場面では、LEDに映し出された“Beyond”のロゴの前に立つふたりのシルエットが浮かび上がった。アルバム『Beyond』のジャケットアートワークをリアルで見ているような感覚。「STEREO」は10年ほど前の楽曲だが、この瞬間これまでのw-inds.の作品や歩んできた道が全て『Beyond』へと結びついた気がした。
人気の定番曲から最新曲まで、新旧織り交ぜた全20曲。選び抜かれた楽曲とそのポテンシャルを余すことなく伝えるサウンド、スタイリッシュな照明デザインなどハード面でのレベルの高さ。そして、ダンスやヴォーカル、トーク力といったアーティスト自身の実力。あらゆる要素で楽しませてくれる妥協のないステージだった。ちなみにセトリ20曲をスタジオ音源で合計すると1時間20分程になるのだが、この日の実際のライヴ時間は2時間15分(ダンスシーンや転換などを差っ引いたとしても、MCが計40〜50分あったってこと?(笑))。そんな時間の長さも全く感じさせない、どの瞬間もワクワクキラキラに満ちた一流のエンタテインメント。本当に見応えのあるライヴだった。
取材:舟見佳子