“『AGE STOCK』は大学生活の全てであり、夢そのものです!”。全プログラムが終了したステージの上で、本イベントの実行委員長である光井勇人氏が涙ながらに語った。2006年に学生団体AGEがスタートした時から“夢の舞台を日本武道館で飾りたい”という目標を掲げ、そのための試練をいくつも乗り越え、ついに実現した学生フェスティバル史上初の武道館。確かに、彼の大学生活の全てであり、夢そのものだろう。しかし、それは彼だけではなく、スタッフ、出演者、オーディエンス...大学生が企画・運営を行なう、この『AGE STOCK』に関る全ての者の夢でもあったのだ。実際にステージを観ていて、そのことをまざまざと実感した。
開幕は16時。まずは“こんな時代に対して学生として、パフォーマーとして、何ができるのか?”と唱えるイシン PROJECTの以心チームがオープニングを飾る。華麗で力強く、シャープでフレッシュな男女混合のチアリーディングが客席を魅了。その後のプログラムでも、威信チームがストリートダンスなどを大胆に取り入れた創作ダンスを、維新チームがオリジナル楽曲「維新」でよさこいを演舞。それは武道館という大舞台を目指して、日々練習を重ねてきた彼らの夢がカタチとなったことを意味し、この日のために組まれたとは思わせない抜群のチームワークからも、本イベントに懸ける志の高さがうかがえた。
他にも、劇団ひとりが巧みなトークでMCを務める中、モーニング娘。が環境問題について話し合う『環境フォーラム』や次世代を担う若手企業家5名の表彰式及びグランプリを発表する『NEXT ENTREPRENEUR AWARD』をはじめ、人気絶頂のお笑いコンビのオードリーとテレビ番組『キャンパスナイトフジ』でお馴染みのキャンパスナイターズが応援ゲストとして登場するなど、さまざまなメニューが用意されていた。その中でも印象的だったのが『Next Age Music Award』。WEB上にて公募された動画から選出する1次審査、ライブハウスでの実演による2次審査を勝ち抜いた3組の現役学生によるバンドがライヴを行ない、それを観た観客がケータイで投票し、学生No.1アーティストを決定するというもの。つまり、観客参加型のコンテストをリアルタイムで行なうというのである。トップバッターは笑音(ワライオン)。ベースレスというスタイルでピアノとアコースティックギターをフィーチャーした、やさしいサウンドで客席にさわやかな風を送り込むと、続くPLEASE PLEASEが無骨ながらも胸を震わせるバラードを熱唱! ラストのザ・ラジオカセッツは、古き良き時代のロックを自分たちなりに昇華したサウンドとヴォーカルのキャラの立ったステージングが観る者に絶大なインパクトを与えた。最終的にグランプリはザ・ラヂオカセッツが獲得したのだが、他のふた組もロックの整地である武道館のステージに立ったということで、ひとつの夢が果たせたのではないだろうか。
そんな企画が盛りだくさんの『AGE STOCK '09』だが、やはり目玉は豪華アーティストたちによる『LIVE ACT』だ。一番手は自分たちも初武道館だというLil'B。3曲という短いステージだったが、この日が初お披露目となるニューシングル「続・キミに歌ったラブソング」ではMIEが切ないメロディーをしっとりと歌い、AILAが心の奥にある想いをラップに込めて届け、客席8000人の心をひとつにした。清水翔太は『環境フォーラム』の少々堅いお話の後に登場。ラッパーのSHUNをフィーチャリングした未発表曲「AGAIN」や発売前のニューシングル「君が好き」を披露するなど、心に染みる美声と屈託のない笑顔でピースフルな空間を創り上げると、続くCHEMISTRYがヒット曲で盛り上げ、夢を持って前に進む気持ちを綴った「Once Again」や童子-Tをゲストに迎えての「あの日... feat. 童子-T」で観客を酔わせるのだった。
イシン PROJECTのクライマックスである維新チームのよさこい、前述の『Next Age Music Award』のグランプリ発表が終わると、いよいよ『LIVE ACT』の大トリであるAIの出番。のっけからダンサー4人を従えてエネルギッシュなステージを展開すると、ハートフルなバラードナンバー「Story」で感動を誘う。さらに、ヒューマンビートボクサーのAFRAをゲストに「WATCH OUT! 」でアグレッシブに攻め立て、そのスタイルのままマイケル・ジャクソンの名曲「Beat it」をカバーするなど、観応え&聴き応えのあるパフォーマンスで客席を沸かせた。そして、最後は自分も周りから無理だと言われ続けたが歌うことを諦めなかったというメッセージを伝え、“自分のために書かれた曲だと思って聴いてください”と「YOU ARE MY STAR」をひとりひとりに届くように力強く歌い上げるのだった。
全てのプログラムが終了した時、すでに時刻は21時を回っていた。5時間にも及んだ本イベントを締め括るべく光井氏がステージに呼び込まれると、彼は“夢は絶対に叶う!”と声高らかに叫び、冒頭の言葉を述べたのである。そして、観客たちの盛大な拍手が鳴り響く中、日本最大級の学生フェスティバル『AGE STOCK '09』は終焉を迎えた。それは同時に、多くの者の夢が現実のものとなり、日本武道館が学生たちの聖地となった瞬間でもあったことは言うまでもない。