アーティスト・作家としてメジャーアーティストにも楽曲提供をしているTakassy(souljuice)、アーティストやタレントとして活動しているHIDEKiSM、ダンサーとして活躍するKamusーーYouTubeチャンネルも話題の3人組“オネェ”エンターテイメントユニット・ENVii GABRIELLA(エンヴィ・カブリエラ)。メジャーデビューミニアルバム『Metaphysica(メタビシュカ)』を引っ提げて東名阪ツアーの開催し、そのファイナル公演を3月19日に東京LIQUIDROOMにて迎えた。
暗転する会場に荘厳なハーモニーが響き、ステージには黒の衣装に身を包んだ3人が登場。それはまさに“ENVii GABRIELLA、ここにあり”と知らしめるかのような堂々とした佇まいで、一気にステージに引きつけられた。『Metaphysica』の1曲目でもある「Finally Found You」で幕を開け、Takassyが静かに歌い出し、HIDEKiSMのヴォーカルへと続く。その横ではKamusがしなやかにダンス。立ち位置をほぼ変えずに、しっかりと3人の存在を印象づける。
“いらっしゃ~い! ようこそ、ザ・キャバレーへ”というアナウンスに合わせ、Kamusがマイムで観客を誘う。“始めたら、やめられないかも”ーーENVii GABRIELLAのショーの始まりだ。楽曲「CABALET」のショートバージョンに導かれ、続いて妖しげな雰囲気漂う「女優(仮)」が始まった。椅子を用いて、それぞれの役どころを演じるかのように歌い踊る3人。時にやしく、時にエモーショナルに、演劇のような多彩な展開を持つこの曲をTakassy、HIDEKiSMが表情豊かに歌い上げ、Kamusがドラマチックに表現。ダンスロックチューン「B&G」では、3人が見事にシンクロしたダンスを見せ、フロアーをアツくさせた。
“東京、ファイナル、盛り上がっていくぞー!”というHIDEKiSMのかけ声で、ダーク&スタイリッシュな雰囲気を併せ持つ「Sorry Not Sorry」を、吐息交じりでセクシーなヴォーカルとキレのあるダンスパフォーマンスで魅せる。お尻フリフリの振り付けもインパクト大だ。TakassyとHIDEKiSMがハーモニーも絶品な「SLAY」でも3人が息の合ったダンスを。序盤から運動量の多いナンバーを、トレードマークのピンヒールで踊る姿に圧倒させられた。
“アツいのよ、みなさんの熱気がこっちまで伝わってくるわけ。やっぱり“生”はいいね。いろんな意味で”とHIDEKiSM。YouTubeでも人気のトークで観客を巻き込み、会場を盛り上げると、Kamusが再び観客を次のステージへ招待。オリエンタルな衣装に着替えたTakassyとHIDEKiSMが、メジャーデビューの配信第一弾シングル「Moratorium」をしっとりと歌い上げる。Kamusも東京公演で迎えたバックダンサーを引き連れ、フラメンコギターの音色に合わせて情熱的に踊ってみせ、ステージは一気に華やかな雰囲気に包まれた。緩急がありながらも小気味良い「Lover Boy」、炎を感じさせるような振り付けが印象的な「Meramera」と続き、Kamusのソロパフォーマンスへ。羽織を脱いで、白の衣装にチェンジしたKamusが女性ダンサーとともに、細やかに音に呼応しながら演舞。指先、足先から、目力まで、まさに全身全霊のパフォーマンスで観客を釘づけにした。
中盤ではTakassyとHIDEKiSMが“どうも、どうもー”とおそろいの赤のパンツで登場。“完全に漫才が始まるのかのようでしたよ(笑)”(HIDEKiSM)と、思わずふたりも顔を見合わせて笑い合う場面も。同じ赤いパンツ姿のKamusも加え、満を持してミニアルバムに入れられたという思い入れの強い「Ride/Reboot」へ。コミカルなMCから一変、3人のダンスで一瞬にして曲の世界へと引き込んだ。英語詞を多用したこの曲を力強く歌い上げるTakassy。“満を持して”という言葉どおり、彼らの自信が漲るようなナンバーで観客を鼓舞する。レトロポップなエッセンスも盛り込んだ配信第二弾シングル「DYSTOPIA」では、手の動きを多用した振り付けで観客を魅了していた。
ライヴも終盤を迎え、赤いスーツ姿の3人が、彼らのパフォーマンスの代名詞でもある「High Heels」を聴かせる。ド派手なパーティーチューンに観客もタオルを振って応え、会場の一体感もマックスに。3人も笑顔で、思う存分にこのステージを楽しんでいる様子が伝わってくる。本編ラストはライヴ冒頭でも歌われた配信第三弾シングル「CABARET」のフルバージョン。曲が進むにつれて雰囲気ががらりと変わる、スケール感たっぷりのこの大曲を、ダンサーを交えながら豪華にパフォーマンス。最後の歌詞の“アリガトウゴザイマシタ”でキレ良く締め括った。
アンコールはライヴ本編とは打って変わってキュートなダンスを交えた、オネェ全開の “おだまり豪華メドレー”で会場をさらに盛り上げる。 思わず笑顔がはじけ、“最高でーす!”と曲の途中で叫ぶTakassy。曲が終わるとHIDEKiSMも楽しさのあまり吹き出して笑い、“たまんないね”と口にしていた。
MCではTakassyが今回のツアーが“キャバレー”というコンセプトに則ったステージング構成だったことをタネ明かし。そして、“私たちが求めて、求めて、求めていたメジャーデビューCDなので、一緒に喜ぶことができて本当に嬉しい。みなさんに楽しんでいただきたい一心で作ったので、自信があるんですよ”と語る。そんな彼らは5月29日(日)に東京・サンリオピューロランドでのワンマンライヴを行なうことを発表、ファンも大興奮の様子だった。
そして、改めてメンバーが現在に至るまでの想いを感謝の言葉とともに吐露。Kamusは“東京出てきて、悩んだりとか、それこそ死んじゃおっかなと思った時もあったりして。そこで支えてくれた人を大切にして、“エンガブ”をやっていきたい。これから先も突っ走っていきます。みんなで一緒に走っていきたい”と言葉を寄せる。
HIDEKiSMは応援してくれる仲間が増えたことに触れ、“ずいぶん“エンガブ”という船は大きくなったなと思います。この船を守っていけるように、もっともっとGAVii(ファンの呼称)のみなさんが乗り込めるような、大きな大きな豪華客船にしていきたいと思っておりますので、引き続き今後ともよろしくお願いします”と頭を下げた。
最後にTakassyが“私たちはENVii GABRIELLAをやっていることによって、LGBTQという、そういう言葉がなくなればいいなと思って、全力で、自然体でやっているつもりです”と語り、“ここがスタートになります。いつでもみなさんの明日の糧になるように、“エンガブ”の曲で一緒に楽しんでもらえたら嬉しい”と続け、ファンから“一番好きな曲”“頑張ろうと思える”と言ってもらえたという「イキル」を披露。ディスコ調のサウンドに自分たちの赤裸々な想いを乗せ、慈愛に満ちた顔で届けると、HIDEKiSMも“いい曲ねぇ”と言い、3人も充実した表情を見せていた。
そして、オーラスはHIDEKiSMの“どんどんちー”という口癖をフィーチャーした『Metaphysica』のリード曲「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」で会場をブチ上げ! “楽しくハッピーに終わりたいんだよ”というHIDEKiSMの言葉どおり、ミュージカルのような振り付けも楽しいハイテンションなダンスチューンを満面の笑みで届け、観客も大きな拍手で応えていた。
ENVii GABRIELLAのエネルギーが充満した、あっと言う間の2時間。彼らの世界観で魅了するだけではなく、観客に元気と笑顔も届けてくれたライヴだった。
取材:小松加奈