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LIVE REPORT

Halo at 四畳半 ライヴレポート

【Halo at 四畳半 ライヴレポート】『Good night, Good youth.』 2021年6月8日 at TSUTAYA OーEAST

2021年06月08日
@TSUTAYA OーEAST

このコロナ禍の中、改めて自分たちの人生を見つめ直した結果、少なくない数のバンドが活動休止という選択をしてきた。2012年に千葉県佐倉市で現在のメンバーが揃ったHalo at 四畳半(以下、ハロ)もまた、6月8日の TSUTAYA Oー EASTにおけるワンマンライヴを最後に、これまで9年間続けてきた活動にひと区切りをつけ、活動休止するという決断をしたのだった。

アンコールを求める観客による鳴り止まない拍手に応え、再びステージに戻ってきた時のメンバー4人の号泣が活動休止という決断がいかに難しいものだったかということを物語っていた。活動休止の理由についてはバンドのオフィシャルサイトでメンバーそれぞれに語っているからここでは繰り返さないが、このレポートでは筆者がこの日、しっかりと見届けた有終の美を飾る4人の熱演をしっかりと記したいと思う。

神妙な面持ちのメンバー4人の一礼から、“イースト!”という渡井翔汰(Vo&Gu)のかけ声を合図に始まったライヴの1曲目を飾ったのは、活動休止前ラストソングとして、4月16日に配信リリースした「星巡りのうた」。その歌詞からは彼らがどんな思いでこのステージに臨んでいるのかがうかがえた。早速、観客がその想いに応えて拳をあげると、“何よりも楽しんで帰ってくれ!”と渡井が声をあげ、バンドは「カイライ旅団と海辺の街」「スプートニク」とアンセミックなロックナンバーをたたみかけていく。気づけば、メンバー全員が笑顔になっているではないか。“声を出せなくても楽しみ方はいくらでもあるだろ!”ーー渡井の煽りもいつも以上にアツい。

この日、彼らが演奏したのは前述した通り最新曲と言える「星巡りのうた」から、最初期からずっと大事に歌い続けてきた「シャロン」まで、アンコールを含む全18曲。「スプートニク」を終え、“ハロがこれまで残してきた音楽、伝えてきた気持ち全部大切に伝えていきたいと思います。この空間を楽しんだり、悲しんだり、何かしら心に残して帰ってください!”と改めてこの日の心構えを渡井が語ってからのブロックでは、片山 僚(Dr&Cho)と白井將人(Ba)が刻む8ビートが疾走する「春が終わる前に」から一転、齋木孝平(Gu&Cho)が奏でるトリッキーなリフが印象的な「百鬼夜行」「発明家として」、さらにはピアノとストリングスをシーケンスで鳴らしたバラードの「蘇生」とつなげ、単にアンセミックなギターロックのひと言には収まりきらないハロのポテンシャルを改めて見せつける。

そして、何事にも終わりがあることを認めた上で、今を精いっぱい生きようというメッセージ込めた「アルストロメリア」でアンセミックな空間を作ると、《悲しみもいつかは誰かを守る理由に》と歌う「悲しみもいつかは」を再びテンポアップした演奏で観客の胸に突き刺すように届ける。メジャー第一弾リリースとなった2018年発表のハロ初のフルアルバム『swanflight』のリードトラックがこのタイミングで、発表した時に想像もしていなかった意味を持ってくるなんて...。

この日のハイライトのひとつだったと思うのだが、“みんなの前でライヴできるのがめちゃめちゃ楽しい。それが少しでも伝わったら嬉しいです”と渡井が語ってからの後半戦は、渡井がアコースティックギターに持ち替え、「怪獣とまぼろしの国」「孵化」というバラードを披露。そして、眩い照明の中、テンポをグッと落としながら、ダイナミックな演奏で観客を圧倒した「マグとメル」でこの日ふたつめのハイライトを作り上げる。

“ひとつの節目を迎えるバンドが何を歌えるんだろうか? 今まで歌ってきたことは嘘だと思われないのか? ライヴができるのは嬉しかったけど、どう思われるんだろうかと同時に怖かった”と正直な気持ちを語った渡井はこの時点で、大きな手応えを感じたのだろう。

“嘘をついた気はしないし、楽しいし、想いがあふれているし。活休が決まっても受け止めてくれた人たちがこんなにたくさんいることが幸せです。俺たちが止まったとしても伝えてきたこと、渡してきたものは変わらない。辛いこと、悲しいこと全部ひっくるめて、その先の明日に向かっていこうとみんなに伝えたい”(渡井)

渡井をはじめ、4人の中で胸のつかえが降りたことは、ハロの真骨頂と言えるアンセミックなロックナンバー「イノセント・プレイ」から、巧みにシーケンスも鳴らした「花飾りのうた」「点描者たち」とラストスパートをかけるように曲間を空けずに繋げていった熱演からも明らかだった。

そして、渡井は本編最後のMCに思いを込める。

“4人の間だけの曲がこれだけたくさんの人の人生の中に入り込んで、その人の心を動かせているという事実が未だに信じられない。何より感謝の気持ちを伝えたい。出会ってくれて本当にありがとう。(涙を堪え)最後までしっかりと歌っていきたい。寂しいな。たくさんの人に出会ったからこそ、これだけ寂しいんだと思います。復活の目処が立っているわけじゃないけど、みんなと同じようにその日を待とうと思います。その時はまたライヴハウスで会いましょう。何度でも思い出してください。悲しみをひっくるめて思い出してもらえたら、俺たち嬉しいから”

“悲しまないでください”と言わないところがハロらしい。彼らは悲しさと、そこからつながる思いを歌い続けてきたバンドだった。

“心を込めて始まりの曲を! 答え合わせをできるその日まで!”(渡井)

本編ラストは15年発表のハロ初の全国流通盤となった1stミニアルバム『APOGEE』のオープニング・ナンバー「リバース・デイ」。バンドの想いを受け止めようと、観客全員が掲げた拳を振り始める。そして、“O-EAST、力を貸してくれ!”と渡井が呼びかけると、それが手拍子に変わり、この日3つ目のハイライトに!

その時点ですでに時間は押していたと思うのだが、観客が求めるアンコールに応え、ステージに戻ってきた渡井は、“こんなご時世で、終わりの時間が決まっているんだけど、こんな日にパッパパッパとやりたくない”と腹を括って、齋木、片山、白井に発言を求めたことをきっかけに感極まったメンバー全員の胸のうちからさまざまな想いがあふれ出したのだった。

“活動休止したり、解散したりするバンドがいるとカッコ悪いと思ってたけど、ハロを無理やり続けることは自分と、みんなに嘘をつくことになる。それが一番カッコ悪い。活動休止はカッコ悪いと思うけど、誠実でいたいからこの決断は誇りに思っています”(齋木)

“コロナ禍になってから会う機会が減って、お互いに苦しい時があったと思います。その時、みんながくれたメッセージやSNS上の他愛ない交流に救われました。辛い時期だったけど、みんなと一番距離が縮まったと思えました。最後、楽しいと思えたならこの決断は間違ってなかったと思います”(片山)

“いろいろな人に感謝の気持ちが止まらない。何よりもメンバーに感謝したい。4人で乗り越えてきたし、3人の才能に惚れてたし、努力している姿にも感化されてきたし。活休後はバンドやりたいと思ったけど、ハロでベースを弾きたい、この3人とバンドをやりたいんだと気づきました。3人のおかげでこうしてステージに立っている。楽しい9年間を過ごせた。いったん節目になるけど、幸せな人生を歩ませてありがとうございます”(白井)

アンコールで披露したのは、懐かしい「瓦礫の海に祈りを捧ぐ」と前述した「シャロン」。ダメ押しで轟音を鳴らした、あまりにもエモーショナルな演奏からは、4人それぞれに背負っていたものから解き放たれたことが確かに感じられた。どこか軽やかにも思えた最後の熱演がこの日一番のクライマックスだったことは言うまでもないだろう。

撮影:落合由夏、安藤未優
取材:山口智男

Halo at 四畳半

ハロアットヨジョウハン:2012年結成。千葉県佐倉市出身の4人組バンド。バンド名は銀河を取り巻く“Halo”と現実を象徴する“四畳半”の間に位置する存在という意味。ヴォーカルの渡井翔汰による力強さと温かさが共存する楽曲と圧倒的な歌、精力的なライヴ活動でオーディエンスを魅了し、着実に実力と実績を伸ばす。18年10月17日、初のフルアルバム『swanflight』でメジャーデビュー。