彼女はこの日、集まった乗客とともに“ミュージックシーン”という大海原へと船を漕ぎ出した——。
ほのかりんが青山RizMにて初ワンマンを開催! このライヴは1stアルバム『LOVE ME TENDER』の発売記念で行なったもので、4ピースバンドスタイルにて贈り出された各曲は、作品ではうかがえなかった機微も擁し、より感情に響くものばかりであった。
ステージにバンドメンバーと共に現われたほのかりん。まずはアコギとアンニュイな歌い出しの「愛別れ」で場内に生命力を寄与し、躍動を促す。続く「メロンソーダ」では諦念混じりのヤサぐれた歌い方とともにライヴはさらに疾走。また、「ピローケース」の際にはハンドマイクで歌い、同期のメロトロンの音色がノスタルジックさを付与していく。
この日はアルバム全曲を曲順通り披露するという趣旨。しかし、当然ライヴならではの臨場感もそこには添加された。清涼感と歌の真意との裏腹感も特徴的な「Envy」では場内から手拍子が起こり、歌物語の四畳半から一気にいずこへと誘った「夢裡」、スイートな歌声に合わせ夏へと想いを馳せさせた「夏好きの君」、ヴォーカルリレーの再現成功を見た「メトロ」や、アルバムのインタビューの際に“ライヴで歌うのが楽しみだ”と語っていたジャジーな「愛」では、アダルティーな雰囲気を場内に広げていった。
“いろいろあっても付いてきてくれる人たちが居て、以前よりも愛されてる感じがすごくしています。音楽、頑張るから!”と涙を滲ませ決意を語り、入った終曲「東京」では、《最後に戻るのは私の所にして》《傷だらけになっても愛しててあげるから》のフレーズがフロアーをグッと惹き寄せ、同時にそれは“また逢おう!”との約束のようにも響いた。
これまでもこのバンドとともに幾つかのステージを踏んできた彼女。しかし、この日はより自分を理解してくれている人たちの手前、安心して歌えたし、さらに次への新たな決意も芽生えたことだろう。ステージを降りる彼女のキラキラした目がそれを物語っていた。
撮影:海保竜平/取材:池田スカオ和宏
ほのかりん
ほのかりん:1996年10月4日生まれ。モデル、女優として活動をする中、13年にガールズバンド”コムシコムサ”にギタリストとして参加し、16年には次世代を担う新人の登竜門とも言えるイベント『Coming Next 2016』に出演。その後、望む音楽の方向性からソロへの志向が強まり脱退、ソロデビューに向けて準備を開始。同年9月に「メロンソーダ」で念願のソロデビューを果たした。