赤裸々な歌が多くの若いリスナーに支持され、この数年、ぐんぐんとロックシーンで頭角を現してきた新潟県上越市の3人組、My Hair is Badが結成10周年を迎える今年、ついにロックの聖地、日本武道館を制覇した。武道館と取っ組み合うような2時間の熱演はマイルストーンのひとつとして、後々にまで記憶されるに違いない。ともにソールドアウトとなった2デイズ公演の2日目の模様をレポートする。
“最終日! 留め刺しに来ました!”という椎木知仁(Vo&Gu)の宣言でライヴは始まった。イントロでいきなり歓声が上がった「アフターアワー」から爆音のアップテンポのナンバーを繰り出すバンドに、満員の観客が手を振りながら応える光景は壮観のひと言。そして、そんな観客が「真赤」以降の何曲かは、恋愛の切なさや痛さを歌う椎木の言葉を、微動だにせずにじっと聴き入った。それも彼らならでは。ひょっとしたら人気の急上昇を物語るように、いきなり挑んだ日本武道館2デイズ公演が2日ともソールドアウトしたことばかりが後々まで語られるのかもしれない。
しかし、僕らが記憶しておかなきゃいけないのは、日本武道館という大舞台に立った彼らがMy Hair is Badというバンドの本質を剥き出しにして、1万人の観客に示したことだ。他のどのロックバンドよりもステージがシンプルだったことにも、左右のビジョンに歌詞のテロップを流す以外、アリーナならではの演出を一切使わなかったことにも、ちゃんと意味はあった。“思いっ切りロックバンドやって帰ります! ロックバンドだってこと忘れんなよ!”と椎木が言い、中盤以降は再びアップテンポのナンバーを畳み掛け、ぐいぐいと盛り上げていく。ポエトリーリーディング風の「フロムナウオン」では愛の本質に迫ろうとする椎木の必死の想いと白熱する演奏に圧倒された。また、山本大樹(Ba&Cho)と山田 淳(Dr)の重心の低い演奏も聴きどころのひとつ。古い曲ほど観客の歓声が大きかったことに人気の急上昇を支えているのが熱心なリスナーであることを改めて実感した
撮影:藤川正典/取材:山口智男
My Hair is Bad