昨年はサーキット形式で開催して全国を駆け巡った『NANO-MUGEN FES』が、約2年振りに横浜アリーナに帰って来た。お馴染みのバンドや、初参戦のバンド、そしてあの大物など多彩な顔ぶれによるロックの饗宴が2日間にわたって繰り広げられた。
NANO-MUGEN初登場は7組。まず初日のトップを飾った、ねごとは昨年メジャーデビューの女性4人組。2年前まで観客として来ていて“いつか出られたらな~”と思っていたそう。高校時代にアジカンの「電波塔」などをコピーしていたと、熱心なファンであったことも告白。「カロン」など、疾走感と浮遊感のあるサウンドに歓声が沸いた。オオルタイチは、DJのように機材をいじくりまわしながら、時に絶叫したりとひとりながら実に激しい。映像を使ってのステージは、目でも楽しませてくれた。磯部正文BANDは、キャリアを感じさせる余裕のステージ。磯部が組んでいたHUSKING BEEのナンバーも披露され、そのアグレッシブで温かくて心にキュンと来るナンバーの数々に、観客もうれしそうだった。
2日目のトップはBOOM BOOM SATELLITES。重厚なビートにノイジーなギターや、深くディレイのかかったヴォーカルがこだまするステージは、テクノやハウスのレイヴ会場の雰囲気。モーモールルギャバンは、昨年のサーキットにも出演していたが、横浜アリーナでは初。ヴォーカルのゲイリー・ビッチェはパンツ一丁にネクタイ。パンツを脱いだと思ったら、下にもう一枚(笑)。絶妙なポップセンスと高い技術、そして変態的ユーモアセンスが爆発。全身全霊のパフォーマンスと笑いで、会場を沸かせた。両日通して唯一弾き語りを披露し“ある意味ロックだろう”と笑っていたのは、星野 源。「老夫婦」という曲では、死について語る場面も。客席の端のほうの人に向かって“見えないかもしれないけど、ここにいるからね”と気遣う様子もあり、温かくてどこかノスタルジックな雰囲気が、やさしく会場を包み込んだ。そして、09年のスピッツやユニコーン以上に衝撃だったのが、佐野元春の出演。赤いストラトを掻き鳴らしながら登場し、いぶし銀のサウンドを聴かせる。ジャンプしたりと若い! 途中“素晴らしい友人を紹介します”とアジカンの後藤を呼び込み「約束の橋」を熱唱。ふたりががっちり握手を交わしたのが、印象的だった。
NANO-MUGEN常連からは、初日にthe HIATUS、2日目にストレイテナーが登場した。the HIATUSの美しくも激しい音楽世界が、一気に横浜アリーナを包み、細美武士(Vo&Gu)は“あー! 楽しい!!”と、本当に心の底から楽しんでいる様子。「Insomnia」をはじめ次々と変化していく彼らのサウンドは、まるでハイスピードで展開するドラマでも観ているかのようだった。美しく広がるメロディーと轟音サウンドで、いつものように観客を揺らしたストレイテナー。“ゴッチが好きな曲をやります”と「CLARITY」も披露。波を打って押し寄せてくるような音で、横浜アリーナを飲み込んだ。
海外からも豪華な6アーティストが参戦。ダンス番長THE YOUNG PUNX!、WEEZERの元メンバー、マット・シャープ率いるバンドTHE RENTALS、カリフォルニアの3人組We Are Scientistsが両日に渡ってイベントを盛り上げた。2回目の出演となるASHは、アジカンのギタリストである喜多を交え、ASH with KENSUKE KITA名義で登場。“ケンちゃんと、一緒にできてサイコー!”とティム(Vo&Gu)。さらに、ティムはTHE RENTALSともコラボ。そこに後藤を加えたTHE RENTALS with ASH/GOTCHという、日英米の海を越えた豪華コラボに観客も大興奮だった。2日目には、一昨年キャンセルになったMANIC STREET PREACHERSの出演が実現。これには、アジカンメンバーも感無量といった様子。バンドもリベンジの気持ちが強かったのか、ファンに人気のナンバーを次々と披露。貫禄のステージに、観客は手拍子にモッシュにと、大盛り上がりになった。WEEZERは初日のトリに登場。MCでは“日本の映画が大好き”と話し、『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』の主題歌を歌い始めるなど大サービス(?)。挙げ句にステージを降りて、客席を駆け回りながら歌う場面も。全てのアルバムからまんべんなく選曲されたセットリストはベストといったところ。アンコールでは、RADIOHEADのカバーまで披露。最初から最後まで、さすがWEEZERという感じだ。
2日目のトリとして、イベントを締め括ったのは、もちろんASIAN KUNG-FU GENERATIONだ。MCでは、被災者や節電のことも考えると、今年はできないかもしれないと思ったと、開催に向けての心の内を明かした。“音楽することが不謹慎じゃないかとか、音楽は届くのか?とか、じゃあお前はどうするんだ?って。考えて考えて、ドロドロしてグラングランだった。でも、俺はミュージシャンだから音楽を作る。そういうことじゃないかって思ったら、気持ちが軽くなった。だから、みんなも軽くなって、軽くなったぶん誰かに分け与える気持ちで帰ってください”といった後藤の言葉に観客は、うなずきながら耳を傾けていた。初日は「新世紀のラブソング」をはじめ「アンダースタンド」「ループ&ループ」など12曲を披露。「All right part2」では、後藤がダンスするような感じで歌う姿が印象的だった。2日目はトリということで、全16曲を披露。「リライト」で始まり、ギターとビートが複雑に絡む「ブルートレイン」や、シンプルに鳴り響く「転がる岩、君に朝が降る」など、いつも以上に熱気を帯びた演奏にファンは大興奮。興奮あまってTHE RENTALSのふたりが乱入する場面も。そんなイベントの最後を締め括ったのは「新世紀のラブソング」。NANO-MUGEN FESが、新たなステージに上がった、そんな瞬間だった。
出演:ASIAN KUNG-FU GENERATION、THE RENTALS、THE YOUNG PUNX! & PHONAT、WE ARE SCIENTISTS、WEEZER、the HIATUS、ASH、磯部正文BAND、ねごと、オオルタイチ、MANIC STREET PREACHERS、佐野元春 and The Hobo King Band、ストレイテナー、BOOM BOOM SATELLITES、モーモールルギャバン、星野 源