2016年6月、突如シーンに現れるやいなや、ブラックミュージックをベースに唯一無二のサウンドを追求する活動が歓迎され、めきめきと頭角を現してきたNulbarichが仙台、大阪、福岡と回ってきた『1st ONE MAN TOUR「Change The Track」』。その最終公演が12月13日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。
Nulbarichにとって新たな挑戦となる今回のワンマンツアーは、東京を含む全4公演が全てソールドアウトに。彼らに対する期待の高さがうかがえたが、同時にそれはワンマンツアーを視野に入れ、今年の夏、数々のフェスティバルでパフォーマンスしてきた成果でもあったのだろう。そんな期待に応えようと、満員の客席に向かって、“泣いても笑ってもファイナルです。みんな、ついてきてくれてありがとう。全力で返す!”とJQ(Vo)は宣言。ふたりのギタリストとリズム隊、そしてキーボード奏者によるセッションからライヴに雪崩れ込むと、そこから1時間半にわたって全16曲を披露していく。
ヘヴィなファンクナンバーの「TOKYO」から一転、ギターだけをバックに歌い上げたバラードの「Everybody Knows」からJQの歌声がぐんぐんと伸び始めると、それに応えるようにバンドの演奏もヒートアップ。
“止まらずに行くスタイル。ビートが止まないスタイル。だから、みなさんもついてくるスタイル。よろしくお願いします。ついてこないと置いていくスタイル”。フロウが絶妙なMCを交え、JQが客席を煽りながら、ノンストップで「Fallin’」「Spread Butter On My Bread」、そしてバンドが熱いインプロを繰り広げた「Hip Hop Session」とつなげる。また、「On and On」では観客にシンガロングを求めながら、“こっちから先に見せるスタイル”とJQ。まず熱唱を聴かせてから“返して!”と呼びかけると、観客が一斉に大きな声を上げ、歌い出した。そして、メロウな曲調の「Ordinary」で掲げた手を振った観客は、バンドが続けて演奏した代表曲「NEW ERA」で眩い照明の中、大きな歓声を上げる。
最初のライヴはサーキットイベントで観客が10人いなかったと振り返りながら、“この1年半、Nulbarichの曲を多くの人に愛してもらって、みなさんと僕たち、こうやって音楽を通して会話する場所がある。本当にありがたいですよね”と感謝を述べたJQは、来年の3月から4月にかけて、仙台から福岡まで計7公演を行なう全国ワンマンツアー『Nulbarich ONE MAN TOUR 2018 "ain't on the map yet" Supported by Corona Extra』を開催することを発表。“ここで終わりにしたくないんで、(今夜は)そのツアーの初日ということにしました”と語り、ツアーファイナルを新たなスタートに変えたのだった。それは今回のツアーに大きな手応えを感じていたからだろう。
新曲の「In Your Pocket」とレゲエのリズムが心地良い「LIFE」の2曲を演奏したアンコールでは、“この景色を目に焼き付けて持っていきます。どこに? どっかに!”とJQらしい言い方でさらなる前進を誓い、“気が向いたら、こっち向いてよ。好きなところに連れて行くよ。できる限りね。約束はしない。努力はする。嘘はなし。また、会おうね”と再会を約束した。
この夜、JQは“喋ると事故るからできるだけ喋りたくない”と苦笑していたが、喋り出した途端に人柄を滲ませながら独特の雰囲気を醸し出すMCもまた、この夜のライヴの観どころのひとつだったことを最後に付け加えておきたい。
撮影:木村篤史/取材:山口智男
Nulbarich
ナルバリッチ:メンバーであるシンガーソングライターJQがプロデュースするバンド。メンバーは固定されておらず、親交の深い仲間とともにスタイルやシチュエーションなどに応じたベストなサウンドを作り出す。ファンクやアシッドジャズなどのブラックミュージックをベースに、ポップス、ロックなどにもインスパイアされたサウンドは、国内外のフィールドで唯一無二のグルーブを奏でる。