“Poet-type.M”こと門田匡陽と“楢やん”こと楢原英介によるトークとアコースティックライヴの楽しい夕べもすっかり板についてきた。
現在進行中のプロジェクト――“夜しかない街=Dark & Dark”の四季を物語る4部作シリーズ『A Place, Dark & Dark』の第二弾『A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-』(通称『夏盤』)のリリースを記念する独演会のアコースティックバージョン。
今回も前作『春盤』の時と同じ会場で、この日のために作ったオリジナルカクテル“満月の冷や汗”を飲みつつ、あっちこちに話が飛ぶトークとともに「その自慰が終わったなら(Modern Ghost)」をはじめとする夏盤の曲だけにこだわらず、春盤の収録曲や秋盤に収録予定の新曲も含め、さまざまな曲を2時間にわたって演奏した。
アコースティックギターを弾きながら歌う門田と、曲ごとにエレキギターとピアノを使いわけサポートする楢原の息もぴったりだった。ダブルドラムが炸裂する夏盤収録の「神の犬」はしっとりとピアノバージョンで披露。リリース記念のイベントにもかかわらず、盤とは全然違うかたちで曲を楽しめるのが、このイベントの面白さ。『秋盤』に収録予定の「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」と「プリンスとプリンセス(Nursery Rhymes ep4)」はその明るい調子が盤になった時、どうなっているかが楽しみだ。その2曲に続けて、“CDになることはないでしょう(笑)”という「fructose」も歌った。確かに、その歌詞じゃ...。そういう曲も聴けるんだから、ファンならこのイベントに一度足を運んだほうがいい。カクテルを飲みすぎたせいか、演奏に時折、危なっかしい瞬間があったことは目をつぶろう。いや、それも見どころのひとつかもしれない。
“前回、毒が足りなかったから今日は毒を吐きます”と楢原が言っていたトークは毒だけに終始せず、夏盤の制作の裏話や『D&D』のテーマのひとつでもある現在のミュージックシーンにはびこる気持ちの悪い全体主義をはじめ、『夏盤』に込めた想いもたっぷりと語った。“喋りはポンコツ”と言いながら、門田のトークもずいぶん滑らかになってきた。
アンコールでは9月と10月に名古屋、大阪、東京の3カ所で、Poet-type.Mに加えて門田のかつてのバンド、BURGER NUDS、Good Dog Happy Menも出演する『festival M.O.N. ? 美学の勝利 ?』を開催することを発表。全体主義に与せず、15年間音楽活動を続けてこられたことと、続けさせてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたいとフェスを開催する理由を語ると、ファンのリクエストに応えたGood Dog Happy Menの「陽だまりを越えて」他、BURGER NUDSおよびGood Dog Happy Men時代の曲を歌った。昔の曲をひとりで歌っても、“頭の中はひとりじゃない。(それぞれのバンドのメンバーと)一緒に演奏している絵が浮かぶ”といった門田の言葉が印象に残っている。
そして、『D&D』のキャラクターのひとりであるXIIIの旅立ちを歌った春盤の「唱えよ、春 静か(XIII)」を歌い、決まり事に縛られないゆるいイベントと思わせ、さまざまな想いを感じることができたトークとアコースティックライヴの夕べを締め括った。Poet-type.Mの感性はさらに研ぎ澄まされ、意思はより強いものになっている。