米津玄師が挑んだ初の全国7大都市ツアー。北は札幌、南は福岡まで回ったツアーは東名阪の3カ所が2日ずつの開催となったが、ツアーファイナルとなる東京公演の2日目もスタンディングの客席は彼の歌を生で聴きたいと願っているファンでぎっしりと埋まり、改めてその人気ぶりを印象付けた。ハチ名義でボーカロイドによる楽曲を発表していた時代からのファンも少なくなかったのだろう。その頃からのファンに応えるようにオープニングの「ドーナツホール」からハチ時代のアップテンポナンバーを畳み掛け、観客の気持ちを一気に高揚させると、中盤はギターもプレイする米津を含む4人編成のバンドによる熱演と打ち込みのサウンドを織り交ぜ、アルバム『diorama』『YANKEE』からの曲を中心に披露。「vivi」や「アイネクライネ」といった胸を打つ曲が類稀なるメロディーメーカーであることをアピールする一方で、「ゴーゴー幽霊船」や「メランコリーキッチン」では大胆な打ち込みを使いながらバンドサウンドに縛られないエキセントリックなアレンジも楽しませ、ただ単に、いい曲を作るだけのアーティストではないということも印象付けた。ライヴ活動を始めてまだ1年ということで、ライヴアクトとしてはまだまだ伸びしろを感じさせながら、これまでの集大成と言えるセットリストで臨んだステージからはソングライター、メロディーメーカー、そしてトラックメーカーとしてさまざまな可能性がうかがえ、この後待っている新たな展開も含め、米津玄師というアーティストにさらに興味が湧いてきた。