よりオープンになったことを印象付けた2ndフルアルバム『フェイクワールドワンダーランド』の評判を思えば、今回1,000人規模の会場で行なったリリースツアーが大阪、東京ともにソールドアウトになったのも頷ける。ステージをぼわーっと浮かび上がらせる照明の中、バンドはあーちゃん(Gu)による轟音のギタープレイをはじめ、オルタナロックの申し子であることをアピールしながら、同時に佐藤(Gu&Vo)がアンニュイな歌声とともに紡ぎ出すメロディーや “何があったの!?”とハッとせずにいられない言葉が、フォーキーとも言える日本情緒を醸し出しながら唯一無二の世界を作り上げていった。ラップ調の歌が新境地を印象付けた「クロノスタシス」をはじめ、2ndフルアルバムの収録曲とそれ以前の曲を半々ずつ演奏しながら、新旧の曲の出来にそれほど差が感じられないのはもともと持っていた魅力を以前よりも上手に表現できるようになったからなのか、それともこちらの感性が研ぎ澄まされたからなのか。多彩な楽曲が映えるのは谷口滋昭(Ba)と西村“コン”(Dr)による大胆さと緻密さを併せ持つプレイによるところも大きい。ストイックな佇まいとは裏腹に芯に熱いものが感じられる演奏、閃きに満ちたアレンジなど、観どころはいろいろあったが、この日、最も胸を打たれたのはシンガーソングライターとしての佐藤の力量だ。“心を込めて歌います”と紹介したアンセミックな「東京」を聴きながら、こんなにも胸に迫る歌を作れる彼女たちはもっともっと多くの人に訴えかけることができるはずだと期待が確信に変わった。