それは予想のはるか上を行く、実にロックでエモーショナルな空間だった。2ndアルバム『SECOND』を引っ提げた3カ月にわたるライヴツアーの終盤であり、24カ所25公演中で最大の会場となるZepp Tokyo。エレキギター轟くオープニングSEがアルバム曲「Circle」につながり、客席の中央まで突き出した花道に突如Geroが現れてパワフルな歌声を畳み掛ければ、フロアーには一気に歓声と熱気が充満。続く人気曲「名古屋のデブ」では“デブ! デブ! 私は卑しいブタ野郎です!”と過激な文言をコールさせて、オーディエンスの緊張と羞恥心を荒療治で取り除いていく。
“GeroBANDだ! 東京イケるか!?”というMC第一声が象徴するように、ソロシンガーではなく、あくまでもバックの5人を交えた“バンド”としてアピールしていたのも印象的だった。レギュラー出演中のフジテレビ『めざましテレビ』内で誕生した「金曜日のおはよう」では、弦楽器の3人も花道へ。ツインギターが見事なソロを聴かせたゴリゴリロック「アンチェインゲイザー」に続き、ヘヴィなドラムが唸る「NO WAY OUT」では海賊王もお立ち台にあがって堂々たる速弾きで魅せる。それらエモーショナルなバンドサウンドの中核となっているのは、もちろんエネルギッシュなヴォーカル。3時間全24曲をガス欠することなく、声から汗が飛び散りそうなほどの勢いで歌い切ったGeroのタフネスには、まったく脱帽するほかない。
衣装替えの間、蛇足・湯毛・thatといった親交の深い歌い手たちが美声を聴かせたり、「CHAN-BA-LAジャスティス伝説」では同曲がエンディングテーマになっているTVアニメ『秘密結社鷹の爪EX』の吉田くんが登場したりとゲストも豪華。さらに、11月26日にリリースされる新曲「MY SWEET HEAVEN♂♀」も初披露して場内を沸かせる。ディープな歌詞に悲痛な歌声が胸を締め付ける「リンネ」、激烈ハイトーンシャウトとヘドバンが吹き荒れるANCHANG(SEX MACHINEGUNS)作の純血メタル「うどん2」とクライマックスを駆け上がった果て、アンコールはさらにスパーク。「吾輩はオス猫である」ではミラーボールが星空を描くファンタジックな空間の中、猫の被り物をかぶって歌い方にもアレンジを利かせまくって、場内の笑いを誘う。ラストの「The Bandits (The Six Little Bandits)」にいたっては、フロア中が拳を突き上げて大合唱。ニコニコ動画の歌い手出身である自分のファンは、ライヴハウスとは縁遠い。そんな人たちにも生音の楽しさを伝えたい――。常々Geroが語っている願いは、そこで見事に現実のものとなっていた。