タワーレコードのバイヤーがプッシュする“タワレコメン”の8月度に選出され、海外からの反響も多くなってきている京都発の若き3ピース“プログレッシブポップ”バンド、宇宙コンビニ。2ndミニアルバム『月の反射でみてた』のリリースツアー最終日、O-Crestにはパンパンになるほど大勢の観客が詰めかけ、予想以上の入りだったらしいメンバーは何度も感激の言葉をこぼしていた。
インスト曲「origin」がSEっぽく始まると、場内の空気はキリリと引き締まって、ギター、ベース、ドラムによる繊細なアンサンブルの中、ブレイクの瞬間には心地良い静寂も味わえる。「EverythingChanges」では変拍子のリズムから、えみちょこ(Vo&Ba)の浮遊感と透明感にあふれたJ-POP的な歌、なずお(Dr)の手数の多いトリッキーなプレイ、だいじろー(Gu)のトレードマークと言えるタッピング奏法まで、宇宙コンビニの個性が一気に噛み合って開放されていく。
“すごく面白いことが起きたんですよ。外国人の方から(今日のライヴの)予約メールをいただいたんですけど、彼女に曲を捧げてくれませんか?と書いてありまして。なので、ぜひやりたいと思います”というだいじろーのMCを受け、「裁判にかけられた男」が始まる。なんていう微笑ましい場面もあったこの日。ステージが鮮やかに照らされた「光の加減で話した」、タメを効かせながらソフトな音像で展開していく「体温」などにおいては、より気持ちが乗ったえみちょこの歌に頼もしさを覚えるとともに、彼らがインスト主体から歌モノのバンドへと舵を切っているのが強く感じられた(セットリストの7割がヴォーカルあり)。インストだと、だいじろーが客席に笑顔を見せて高速タッピングソロを決めた「8films」が海外ウケするのも頷けるすばらしさで、特にマスロック~ポストロック界隈のファンはたまらなかったのではないかと思う。
ワンマンならではのアコースティック編成にトライしつつ、1st EP『廻る景色のなかに』に収録の「forest」といったレアな選曲でも満員の観客を魅了した中盤。オーディエンスはそのシネマティックなサウンドやテクニカルな演奏を、時に身体を小さく揺らしながら、息を呑むようにジッと聴き入っていて(クラップ、合いの手などは一切なし)、曲が終わるごとに温かい歓声を3人に贈る。ここには宇宙コンビニの音楽に惚れ込んだ人たちが、それを純粋に体感したいがために集まっているのだ。
“アルバムをリリースして、今日でツアーが終わっちゃうのは寂しいんですけど、東京で初めてのワンマンでこんなにたくさんの人が集まってくれたのは本当に嬉しいです。ありがとうございます”とえみちょこがまとめ、本編ラストは“最初の頃から大事にしてきた曲”だという「Pyramid」。なずおのブレイクビーツ的な連打を中心に再び3人の持ち味を力強く発揮すれば、会場はもちろん大盛り上がりでそのままアンコールへ。最後には、『月の反射でみてた』のエンドトラック「足跡」を演奏し、ミニアルバム2枚の音源をすべて披露した宇宙コンビニ。ライヴバンドとしての実力を証明しながらも、まだまだ成長の余白を感じさせるだけに、今後がとても楽しみな存在である。