小さな歴史

過ぎ去った日々は紙芝居に似ています
いくつかのなつかしい場面が
とりとめもなくよみがえって来て
幸福にもう少しで手が届きそうになるといつも
「続きはまた明日!」
想い出は夕陽色
路面電車が走る街
私が生まれた晩 靴をはくのも忘れて
あわてて電報を打ちにゆく父が後ろ姿が
ほら 見えるようです

女の名前は考えもせず
男を産めと母に言ってた
けれども私の産声聞くと
父は涙をためたと言うわ
そして今 私の隣りに
すやすやと小さな命が…
そして私の愛する人が
あの日の父のような目をして
のぞきこんでる

お前は大きなこうのとりが
運んで来たと母は話した
大きなひざへとあまえた頃が
まるで昨日の事のようだわ
そして今 私の隣りに
すやすやと小さな命が…
そして二人のこうのとりは
顔を見合わせ微笑みあって
のぞきこんでいる
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