思い出川

傘もささずに みぞれの中を
うしろ向かずに 駆けてゆく
身も世も捨てて 盡してくれた
そんなお前の 涙雨
むせび泣くよな 舟唄さえも
思い出川よ

根無し草だよ 流れの淵(ふち)で
生きる男に なぜ惚れた
あなたのために 地の果てまでも
ついて行くわと 縋る眼が
離れないのさ 瞼の裏で
思い出川よ

俺の背中を 濡らした雨が
いつか冷たい 雪になる
ふたりのこころ 温めあって
呑んで明(あか)した 舟宿の
遠い灯りが 川面に揺れる
思い出川よ
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