15秒の風景

今 消えようとしている
今 消えてしまう
4年の月日があざやかに見える
新幹線の窓に映った
15秒の風景

曲りくねった川が見える
低い屋根がひしめきあってる
夢を持ち寄って仲間が集まった
場末の喫茶店
渋いレモンティすすりながら
好きな役者やピカソの話
誰もが熱いほほと冷たいつま先

淋しい時はよく行った
丘の上の中学校へ
鉄棒につかまり自分の重さ
たしかめてみたり
足の裏にくずれてゆく
しめった砂が悲しかった
夕闇の街灯り ひとり見ていた

今 消えようとしている
今 消えてしまう
4年の月日があざやかに見える
新幹線の窓に映った
15秒の風景

ふたりきりのけいこ場で
遠い停車場の音きいてた
壁によりかかり窓の外の
ひまわりを見ていた
同じ夢への淋しい想い
二十歳(はたち)の横顔きれいだった
抱きあうこともなく あの日別れた

今 帰ろうとしている
今 帰ってゆく
さよならは誰に言えばいいの
予告もなしに帰る私に
驚く母の顔が浮かぶ
新幹線の窓に映った
15秒の風景
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