透きとおった時間

“肩の力をぬいて
愛されてなさいね”
ママによく似た声で
月がささやくの

熱い紅茶を入れる 指先ふるえる
カップが立てる音に あなたが笑う
ごめんね不器用で 私ふつうの娘に
じょうずになれない 好きになるほど
まぶしい沈黙を
ゆるやかに 流れるサティー
透きとおった時間

夜の終りは いつも
さよならの夜明け
そんな寂しさと もう
会わずに済むのね

これが最初の 恋じゃなくてよかったわ
流れた涙のぶん 深く愛せる
このまま眠らずに 愛を確かめたいけど
まどろみが うねる 髪の先から
生まれる前にも
私たち こうしていたわ
透きとおった時間

海を信じて河が
流れてゆくように
私の心も ただ
あなたに 注ぐの

“肩の力をぬいて
愛されてなさいね”
ママによく似た声で
月がささやくの
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