マラソン

子供の頃僕は
夢を見たことがあった
隣の大きな家に住む
あの人達に混じって話がしたい
ただそこにあるレンガの壁を
飛びこえさえすれば いいんだけれど
小さな僕の背伸びでは
まだ大人の世界をのぞけなかった

誰から聞いた訳じゃなくて
可愛いい女の子がいるらしい
まだ見ぬ憧れを追って
僕は ここにいるよと叫びたかった
夢を見続けているうちに
あの人達は どこかの町へ
とり残された僕の心に
悲しさが初めて姿を見せた

今はもう忘れかけた 出来事だけど
そんな ひとつひとつが重なりあって
人は いつか走れなくなるまで
はるかな夢を抱いて 旅を続ける

なつかしい人に出逢った時に
恥ずかしさが僕を包みこむ
例えば昔の恋人を
まぶしく思うのは 何故だろう
その時は その時の心をこめて
愛を言葉にしたんだけれど
あまりに何かを求め急いで
季節の変わるのも気づかずに

きっと本当は誰だって
人の人生を見つめはしない
心が病んだり ゆれる時
話し相手には なってくれるけど
自分の旅が続く限り
自分の明日を追いかける限り
苦しさにたえて そこにただ
立ちつくすだけの時もある

僕はあの時 風になり
大空をくるくる回りながら
このまま死んでしまいたいと
またひとつ 小さな夢を見た
ふり返れば そこに僕がいて
お調子者だと笑ってる
子供の頃も 今もまた
壁にしがみつくだけだった

今はもう忘れかけた 出来事だけど
そんな ひとつひとつが重なりあって
人は いつか走れなくなるまで
はるかな夢を抱いて 旅を続ける
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