指定券

もうこれまでねと 君はうつ向いて
左の頬だけで ひっそり笑った
北口改札を 仔鹿の様に
鮮かにすりぬけて 出て行った
せめてもの お別れに
一度だけ 振り向いてくれたのに
丁度今着いた 修学旅行の
制服達が 君をかき消して
最後の声さえ 喰べてしまう

長いエスカレーター 昇って降りて
やっとの思いで 出した答
はじめる前から 終る旅もある
やはり野におけ れんげ草
せめてもの はなむけに
一度だけ 手を振ってみせた
うしろ姿を つつむ紙吹雪
それは僕の ふるさとゆきの
季節はずれの 指定券
×