富士

樹齢百年 そびえる幹も
ちいさな芽から はじまった
裸一貫 何にもなけりゃ
何でもできるよ ねえあんた
遥かに見える 富士山を
てのひらに乗せて 春を待つ

月の満ち欠け 流れる星も
大きな天の 懐(ふところ)で
夢に一筋 こうだと決めりゃ
何とかなるさと 腹くくれ
遥かに見える 富士山を
てのひらで掴み 夏をゆく

ひとみ凝らして 見えないものは
ひとみを閉じて 胸に訊く
男一匹 勝負の時は
私の命も さあ賭けろ
遥かに見える 富士山に
てのひらを伸ばし 冬を越す
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